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勇者の妹  作者: 虚言挫折
第六章:脅威
81/99

81.白い柱

私はロナ王国への道から外れて、強大な何かの気配がする方向に向かった。

しばらく密林の中を歩いた。馬に乗っておらず徒歩で進んできたことが幸いして、思いのほかすぐに気配の元凶に辿り着いた。

やがて崖の下で、どうも物々しいたたずまいの兵士たちが幕舎を囲んで慌てふためいているのが見えた。

「あれは…六国か?にしても穏やかではないな…」

いずれミトナたちの障害になるような事態は避けなくてはならない。山頂での森長との会話を思い出す。

「…流石に見過ごせるものではない」


幕舎が吹き飛ぶ。白い光が熱と轟音を纏って天空を刺し貫く。

「魔法が、いや、魔法を封じた道具が壊れた!何が…」

狼狽が崖下を包む。突然出現した白い柱に、誰も近づけていないようだ。

何か魔法を封じた道具が容量を超えた。放置しておけば消えるとは思うが、なぜあんなにも膨大な魔力が一気に変動したのだろうか?

六国があそこに集まっているとなると、相当重要な内容の会議だったはずだが…。

「…ん?」

「ひっ」

背後で声がする。振り返ると炎が見え、そして木の裏側に隠れた。

「あ、あの!どうしてそこに…?」

「強大な魔力を感じたからだ。そちらこそなぜここにいる」

「エシトラ様を追ってきたんです」

ゆっくりと木の裏から、燃える少女が姿を現した。炎の精霊と近縁の魔族のようだ。

「エシトラ…?エギル王国の現女王だな?あそこにいるのか?」

「そ、そのはず…です」

「ますます会合がきな臭いな…」

私が考えを巡らせる顔を、少女はきょとんと見ている。やがて私に質問する声からは、怯えは消えていた。

「あそこで何かあったんですか?」

「分からない。見えたのは、いきなり幕舎から膨大な魔力が溢れてあの白い柱になったことくらいだ」

「人がいるんですか!?」

「多分そうだが…って、おい」

私の返事を聞いた刹那、彼女は崖下に飛び込んだ。軽々と着地して、白い柱に歩み寄っている。

「無茶なことを!」

私も崖を滑り降りて着地する。兵士たちは状況を飲み込めずに呆然としていた。

「この幕舎に誰かいたか?」

「は、はい…六国の王たちと、サンチマルの王、エギルの王が…」

「何だと…」

事態は思いのほか危険だったことが判明してしまった。とっととこの柱を消し飛ばすしかないが、どこから発生しているのか見えづらい。

少女はひざまずいて地面に線を引いた。導線によって外に魔力を逃がすつもりらしいが、追いつくか怪しい。そもそも、普通のことでどうにかなるような事態ではない。

しかしその能力も使いようだ。

「おい!柱を中心にして、導線を放射状に描けるか?柱を削って、魔力の元を探りたいんだ」

私が少女に呼びかけると、少女はすぐに動き出した。機敏な動きでたちまち線を描く。

濃すぎる魔力のために一瞬で消えていなければいいが、どうやらそうでもないようだ。

柱が削れたことで、内側の魔力を感じることができるようになった。根源らしき魔力源の他に、強力な防御魔法の痕跡がある。

「…信じるぞ、防御を続けるお前が耐えてくれることを」

私は小石を拾い上げ、元凶の物体に投げた。物体の下から上に力が働くように当てると、魔力は上方向に流れを変えた。

防御魔法の術師たちがその下から勢いよく転がり出てきた。

物体は一度まばゆく輝き、爆発音を響かせた。そのあとは一気に力尽きたようで、しゅるしゅると回転しながら地面に落ちてゆく。

「はあ…何なんだ全く」

柱の中にいたのは全部で八人だ。人数は合致している。

「大丈夫そうだな…」

私が額に滲んでいた汗を手の甲で拭うと、少女が歩み寄ってきた。

「ありがとう、お姉さん」

安心したように微笑んでいる。私がどういたしまして、と言うと倒れている人の場所に駆け寄っていく。

「エシトラ様!大丈夫?」

「ん…?エミイか…?なぜここに…」

「心配になって…護衛の人も『ついてくるな』って言われたみたいだから」

六国の長たちも気絶しているようだったが、周りの兵士に保護されている。命に別状はないようだ。

会話を聞いて無事を確かめて立ち去ろうとした私の背に、男性が声をかける。

「…君は、ユマか?」

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