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勇者の妹  作者: 虚言挫折
第六章:脅威
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77.直視

カロの案内もあって、魔王城までの道は短く感じた。

真実の軍とも一度も遭遇することはなく、何か厄介が入ることもなかった。

シラナも状態が良くなって、今は馬車には魔法使いが縛られて寝転がっている。

紫の空の下で広がるだだっ広い平野を抜けて木がバラバラに生えた林に入り、林の中の斜面をゆっくりと降りる。馬を連れていたが、難なく林も抜ける。そうすれば、いよいよ魔物たちの住む領域にまで辿り着く。

魔物と魔獣は分けられている。人間と動物の関係と同じようなものだが、魔獣は動物の中でも明確に有害なもののみを指す。人間社会で動物にあたるようなものでも、飼われていたり労働したりと、社会に溶け込んでいれば魔物とみなされる。

私たちは魔獣の群れを退けて街道に出た。動く生き物の姿が見える。

「門兵だな。ここで少し待っていろ、話をつけてくる」

カロが前に進み、何か話してからやがて戻ってきた。

「すぐに迎えが来るそうだ。我々はここで待つ」

その通りだった。カロと似たような黒い鎧に身を包んだ騎士が数名現れ、カラギさんの前に跪いた。

「カロ、ご苦労だった。…皆様を城までご案内します」


禍々しい城門の前の橋から逆風が吐き出される。恐怖のような高揚感が心臓の裏で高鳴る。

「ミトナと言ったな」

「はい」

「魔王様がお前とお前の仲間に会いたいと仰せだ」

背の高い騎士のうちの一人が私を見下ろして言った。

「私たちとですか?…カラギさんでなく?」

「そうだ」

私が不満な声で尋ねると、淡々と返事をされた。

「大丈夫ですよ、ミトナさん。私のことはいいですから」

「でも…」

食い下がろうとすると、カラギさんがはっきりと尋ねた。

「成さなくてはならないことがあるのでしょう?」

見つめる目の奥でこれ以上触れてほしくないと閉ざしているようで、私はそれ以上声をかけることができなかった。

促されるままに連れられ、吸われるように城門をくぐる。

知らない黒騎士が私たちの前を歩く。

「カラギさん、大丈夫でしょうか」

「まあ…ん~…」

心配するシラナに、アルトナが難しそうに首をかしげる。

「俺の話が参考になればと思ったけど…俺は特殊だったからなあ…」

「そうですか…」

「まあ、親子がお互いのことを大事にしてたらいつか何とかなると思うけどな」

呑気なような深刻なような会話が背後で繰り広げられる。すぐ右ではガイレルが自分の翡翠色の首飾りに触れている。


「ここだ。好きなタイミングで入れ」


巨大な真っ黒い扉が、目の前に立ちふさがる。何の金属でできているのかは分からない。

皆には、まだ私のことを言っていない。それでみんなが私に失望するとも思えないが、いざ私が勇者の妹であると告げることになると緊張する。

「どうしたのミトナ。何か恐れてることでもあるの」

ガイレルがふとこっちを見て尋ねる。

「…私のことで、みんなをここまで付き合わせて、よかったのかなあって。ほら、私の素性とかまだ詳しいことも言ってないし…」

声がおのずと暗くなる。

「ミトナさん」

シラナが私に声をかけて、私は顔をあげる。俯いていたことに初めて気づいた。

「私はあなたたちについてこなかったとしても、きっと幸せだったと思います。でも、あなたたちについてこなければよかったと言うには、余りにも得たものが多すぎるんです」

まっすぐ私を見ていた。

「…だから、大丈夫。あなたが誰でも、きっと大丈夫ですから」

ガイレルは頷いて、アルトナは柔らかく笑う。

「大丈夫だ」


「うん」

私はゆっくりと扉を押した。

次回更新は一週間後です。

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