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勇者の妹  作者: 虚言挫折
第二章・森長
18/99

18.崖

スノッリ出発から2日目。

特にこれまで何も起こってこなかった。

魔物は山賊でボコボコにしてしまうし、旅人は見ただけで逃げ出す。

安全な旅だった。

もっととんでもない出来事が待ち受けているのだろうかと思っていた。

むしろこれからそういうことがおこるのでは、という若干の不安もあったが、とにかく今のところはとても楽しい旅だ。

「この先は…クラメリスの丘か。まだ森は先だな」

バーヴルは地図を確認して先頭の騎手となって進んでいる。私たちは隣で馬に乗ってゆらゆら進んでいる。

谷に差し掛かろうとしていた。左右は高く切り立っており、太陽はその間からその輝きを見せている。

「全員、止まれ」

アルトナが合図を出す。私はがくっと止まったが、後ろの皆はすっと止まり、なんだか恥ずかしい思いをした。

「どうしたんですか?」

「嬢ちゃん、この判断は正解だぜ。…殺気立ってやがる。」

…私はキョトンとして谷を眺めた。別にどこかおかしいわけではない。

「相当上手く殺気を隠してるが、人数が多くてごまかせてねえな。」

アルトナも呟く。私は置いてけぼりになっているのでだんだん妙な疎外感を感じるようになっていた。

「偵察に行ってきてもらおう。嬢ちゃんにはその間に殺気について話すぜ。さてと、誰か行ってくれるか」

5人が手を上げた。

そのうち2人を指名して走らせる。


バーヴルは私に聞いた。

「嬢ちゃんは殺気を向けられたことはあるか?」

「はい、あります」

宿屋を襲われた時のことを思い出しながら答える。

「その時、体はどんな風に反応した?相手はどんな風に見てた?…いいか、一度感じた感覚を思い出し、何倍にも増幅したと仮定してイメージトレーニングをするんだ。皮膚ってのは敏感な器官だからな、想像にも反応したりする。現実に起こったこととなればなおさらな。さあ、どうなってる?本当に何も変わってないか?」

私は一度目を瞑った。

…足が少し震えている…?

手汗も出ているみたいだ。

呼吸も少し荒い。ごく僅かではあるが、いつもとは違う…。

「どうだ?違っただろ?」

「…はい…!」

驚きが混じった声で返事をした。

先生の教えにも通じるものがある。

『殴られることは、決して痛くない。殴ってきた奴が自分に敵対していると頭が感知して、恐怖心を煽るから、皮膚もそれに反応して余計に痛さを訴える。冷静さを保つんだ。自分を見失うな。』

丁度そのタイミングで、偵察が帰ってきた。


「偵察終わりました親分!敵は300人ほどの小隊で、こちらを待ち伏せしていると思われます!」

「どうやら悪名高い宗教団体、『エキリマース』の信者どもであると思われます!」

「ご苦労」

300人。戦うのは賢明ではない。別の道を通るべきだろう。

エキリマースというのは、兄がスノッリを立ってからしばらくしてできた宗教団体であり、神託を受けたという使者の言葉をもとに教典が作られている。モットーは『愛と自由と容認』とされ、その全てを得たものは救いが待っているという噂だ。まあよくある話だが、この宗教は隣国のエギリ国が国教としており、そのために癒着や収賄など、奇妙な話も絶えない、いささかグレーと言われている。にも関わらず、信者は次第に増え続けており、最近5万人が入信したとの報告がされた、話題の宗教である。

「…どうするつもりだ?」

「叩く」

バーヴルの答えに、アルトナは唖然とする。

無理もない。兵力差は6倍もあるのだ。

「勝てんのかよ」

「作戦さ。それ次第では兵力差なんてものは簡単に覆る。別に300を殺す必要はない。邪魔にさえならなきゃいいんだからな」

山賊たちは円形に並んだ。私も間に入れてもらう。

「地形はどうだ」

「左手の崖は森に続いております。右手の崖は登るには険しい道がございまして、そちらには仮設の本部とおぼしき部隊が布陣していました。崖と崖とを繋ぐ道のようなものは見当たりませんでしたが、端に行けばいくほど高低差はなくなるようでしたので、端の兵が連絡を取るための係として扱われていると思われます。実際に何度か、そこから兵が行き来するのを確認できました」

なんでそんなに情報が山のように集められるんだ。

森で襲われた時と見違え過ぎなのでは…?

驚く私をよそに、アルトナは分析を始めた。

「…なるほど。じゃあ、森の方を警戒してるはずだな。左右の人数はどんな配置だったか分かるか」

「左200、右100かと」

「悪くない配置だ。左から襲えば50人は200人に気を取られる。だから右が100でも事足りるってわけだ」

「よく分かりますね…」

私が感心すると、アルトナは頭を人差し指でさして、「ここ、ここ」と表情で表してきた。

…怒るべきだろうか。


山賊たちはがやがや話しながら作戦を考えている。

そのうち何人かがバーヴルのところに歩み寄ってきて、バーヴルは頷いたり首を傾げたりして話していたが、やがてぱん、と手を打った。

「作戦は決まった。各自よく聞け」

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