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勇者の妹  作者: 虚言挫折
第一章・スノッリ
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17.出立

2日後、私たちは再び城門の前にいた。

医者からは信じられないことだが、もう完治していると昨日言われた。安静にするよう言われたことは、忘れることにした。

メリド王子と、グランツ兵士長が迎えに来ている。

王や大臣は忙しさのために来ることができなかったが、それでも十分だった。

「気をつけてくれよ。ここからは何が起こるか、本当に分からないから」

「大丈夫です!」

「何を根拠に…まあともかく、頑張るさ」

兵士長の「王子、そろそろお時間です」という声で話を切り上げる。

「じゃあまた…」

メリド王子が言いかけて、表情が硬くなる。


水平線の向こうから騎馬がやってくる。

10騎…20騎…止まらない。

「兵士長、他国から騎馬が派遣されるとの報告は受けているか」

「いいえ」


「全隊、構え!」

ガチャガチャと武器を構える音がする。私たちも武器に手をかけた。

ところが、迫る騎馬から一騎が飛び出し、同時に進軍は止まる。

怪訝な顔で見ていると、その騎馬がなにか言いながら駆けてきているらしいことが分かった。


「バーブル親分より、アルトナ、ミトナに告ぐ!城門を離れた後の護衛を勝手に引き受けさせていただく!」

部隊の緊張が一気に解ける。

その使者の後ろに、バーブルがやってこようとしていたのだ。

「皆、しばらくぶりだ!久しゅうございます王子!」

装備が頑強になっている山賊の親玉は、下馬して元気にこちらに走ってくる。

「本当に…バーブルか…?」

メリド王子は、驚きと喜びを交えた声で、震えながら呟く。

周りの兵もざわざわして、落ち着きを失っている。

グランツ兵士長は呆れたような表情で一つため息をついた。

「昨日の今日で我々に接触を図るとは、いい度胸じゃないか」

「ちったあいいだろ。もう後は殆ど会えやしないんだからよ」

メリド王子が前に出ていく。意思を持っているのか危ういほどふらついた動きだ。バーブルは跪く。

「王子、二人のことは私にお任せください」

「バーブル…僕は…」

俯くことで作り出された影の下で、バーブルはにやりと笑う。

「…私は家も地位も捨て去った賊軍にございます。ですからお声掛けはもう少しお待ち下さいませ。しかし…また王子のもとに舞い戻ることがあれば、その時はなんなりとお話しください」

告げたあと、バーブルはメリド王子の顔をしっかり見て、もう一度にやりと笑った。王子はそれを見て、きっとバーブルを見た。

「分かった。必ずや、二人を連れてゆけ」

「王命は我なり!承りました!」

バーブルはそう言って、呆然としている私たちを見た。

「では、行きましょう。じゃあなグランツ、たまに俺たち見ててもほっといてくれよ!」

「…街には入るな」


手を振るメリド王子の姿が遠ざかってゆく。

名残惜しく思いながら、私たちは歩き始めた。

「立派になって…」

バーヴルがため息混じりにそう吐き出した。

「あいつも喜んでるだろうな」

アルトナはそれに応じた。

「さて二人とも、ここからは俺たちとともに行動してもらう。国境までの安全は保証するぜ」

話によると、最初は50人だった山賊は今や180人を超え、他国の山賊とも連携して『世界山賊連合』なるものを結成したらしい。

職がない、上司からの嫌がらせ、その他一身上の都合のために山賊になったものの集団のトップを集め、悪役人の追い剥ぎや魔物退治、観光案内から城壁の美化活動など幅広く活動する連合だそうだ。ルールは最小限に留め、山賊の不満をなるべく少ない状態で抑えつつ国家の発展に努める。

なんで知らない間にどんどんコミュニティが形成されていくのか分からないし、そもそも山賊ですら無くなっているのだが、まあ楽しそうだしいいかと思うことにした。勿論、釈然としないことばかりだが。

「トレアクの森でひとまずお別れってことになりそうだ。それまで、またよろしくな」

にこにことバーヴルが笑う。

思えば数奇にも程がある出会いだ。

その前からも、ずっと、ただごとではない出来事ばかり襲いかかってきた。

それでも……。

きっと私たちはうまくいく。

そう思えた。


「ああ、よろしく」

アルトナは素っ気ない返事をした。

私はそれにつられて笑いながら答えた。

「はい!よろしくお願いします!」

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