ありんこがのっぽ先生と二度目のデートをした話
十二月に入ったある日、来年二月に法事で岡山に行くよ、というメッセージが幸博先生から入った。私は一時間ほど悩んだ後に、会えませんか?とレスをした。即レスで、いつにしようか?とメッセージが来た。私は嬉しくなってスマートフォンを片手にベッドの上で脚をバタバタさせた。やったぁ!
相変わらず幸博先生は背が高く、私も少し身長が伸びたけどやっぱり30cm近い身重差だった。
「毎日やりとりしているから、久しぶりっていう感じがしないね」
幸博先生は私に笑いながら言った。
そうなんだけど、直接会えると全然違うな、と私は思う。笑顔とか仕草とか、そういうのに直接触れられるとドキドキする。やっぱり優しい声だな。
岡山駅前でレンタカーを借りて瀬戸大橋が見える観光地、鷲羽山に向かう。海からの風は流石に冷たかったが、鷲羽山からの瀬戸内海の眺めは美しく、黙って遊歩道を二人で並んで歩いているだけで私は嬉しくなる。でも幸博先生は退屈してないかしら。レンタカーを運転する幸博先生は、前よりずっと大人に見えた。隣りを歩く私は、ただでさえ子供っぽいから、周囲からは歳の離れた妹みたいに見えているかな。
僕の方から、有里ちゃんに付き合って欲しいと言おうか。でも遠距離になるし、歳も離れている。接点もスマートフォンの中だけの期間が長い。幸博はずっと迷っていた。でも、これから会える機会が、そうそうあるわけではない。遊歩道で隣りを笑いながら歩く有里を見ながら、幸博は決心する。今日別れる前に言おう。この子との関係を失いたくはないが、ダメになるなら一度踏み込んでからにしたい。
お昼ご飯を食べてから、しばらくドライブを楽しんだ後、岡山市内に戻る。疲れてない?全然OKです。そっか、じゃあ喫茶店に付き合ってもらえる?東京行きの新幹線の時間まで、少し時間があるんだ。
幸博先生はコーヒー、ブラックで、私はカフェオレで。しばらく学校のこと、友達のことなど話して、ふと会話が途切れる。
幸博は深呼吸をしてから有里に言った。
「有里ちゃん、僕と付き合ってもらえないかな」
メッセージをやり取りしているうちに、有里ちゃんの存在が僕の中で大きくなっていった。歳の差はあるし、ほとんど直接の接点はなかったわけだし、遠距離になってしまうのだけど。
私は不意を撃たれて動揺した。嬉しいのだけれど、どう答えていいのかわからない。私が迷惑かけるだけのような気もするし、どうしよう?どうしたらいい?
「私でいいんですか?」
やっとの思いで有里は答えた。自分の声じゃないみたいに感じる。
「有里ちゃんがいいんだよ」
幸博は微笑みながら答えた。