魔王勇者 1
「どうしたんですか?」
大きなドアを両手で勢いよく開けたその男の声はドアを開ける音とともに教会じゅうに響いた。
夢中にまんまるの水晶をのぞき込んでいた聖職者の女は声を震わせながら一言だけを口にした。
「人類の2日めの危機がきそうだ。すぐに王へ伝えなさい。勇者の転生を行う。」
数日後
そのころ停戦中の国境付近の魔王軍偵察部隊は、いつものように双眼鏡で王都を覗いていた。
いつも通りの日常で何もなくぼんやり覗いていたのだ。
人類と魔王軍の戦いは歴史書に乗っているだけでも、2000年続いている。
なかでも魔王軍2代目魔王モナーガの時の戦争は激化し、死者は国民の3割を超えたという。
「本当にこんなことをして意味があるんですか」
「ある これで俺たちは、食いつないでいるんだから」
「本当にあるんですかね だって戦争は200年間起こってないんですよ。」
魔王軍と人類との闘いは2000年の歴史の中ここ200年起こっていない。
小さな組織による内部でのテロなどは起きているが前線と前線がぶつかり合い、
戦争にはなっておらず、テロ組織は第三陣営として扱っているのだ。
と、そんなとき遠くから一羽の鳩が一直線に飛んできた。
「隊長!鳩が飛んできました。あの鳩は…国王からです。しかもあの鳩はハヤテです。
早く魔王様におくらねば」
というと部隊のうちの一人がその鳩の足についている筒をとると、
馬へまたがり魔王の城へと駆け出した。
「それにしても、王都からくるなんてびっくりだな。確かあと2週間もすれば定例の
人魔会議があったはずだが… どれだけ急ぎだったんだろうか。」
すぐに魔界へと電報は伝わった。内容はいたって簡単で、
今回の人魔会議を分け合って早めてほしい。というものだった。
魔界では特に予定も入っていらず問題もなかったため、了解の一言で手紙を伝書鳩で返すと、
執事に準備をさせた。
「三日後に控える人魔会議 そろそろ 少し踏み込んだ会議をしてもいいかもしれん。」
魔王代理の足元には荒々しく一つの風が吹いていた。
王に伝わるのはとても早かった。 王に伝わる前に伝令が魔界に行くのもおかしいことだが、
教会のシスターマリーは王の次に強い権限を持っていたため、このようなかなりの無理は今までもあった。
なんせ占いでたくさんの危機を救ってきたため、王よりも信じるものまで出てくるほどだった。
王はシスターマリーの伝令を聞くと、すぐに部下に儀式の準備をさせて、次に自ら教会へと足を運んだ。
「どういうことだ。シスターマリー。何が起こるというのだ。」
「また良からぬことが起こるとこの水晶が告げています。」
と言うと、シスターマリーは1冊の本を手に取って王の方へ1本2歩とちかづきながら、話を始めた。
「なんと、今日 朝いつも通り占いをしていました。
とてつもない魔力のにごりが水晶を曇らせこのように割れてしまいました。」
先祖代々受け継がられてきたこの本によると、魔王の復活の兆しだと思われます。
復活には転生を。それが2000年守ってきたこの人類の武器です。
そして転生した上で先に叩くべきです。 前回魔王が復活した時は部下は何故か全員帰ってきたものの全員記憶喪失。
勇者至はかえってきていませんが。先に何かある前に叩くべきです。」
「わかった。お前がいうならそういう事なのだろう。」
と言うとすぐに教会に背を向けいちども振り返らずに城まですぐに帰っていった。