2話【Buono!のオーナー】
ゴォウ!!と爆音を響かせ僕らの目の前を猛る火の玉が通過し近くの客席を全焼させる。
「な!!?」
光一さんは思わず唖然とした表情を見せる。
勿論、僕も含め全員である。
「て、手から炎!?」
そう、明らかに手から炎を放ったのだ。
まるでファンタジー世界のように。
「やっとおとなしくなりやがったな。
おい!」
リーダー格の男がその隙を見て子分に首で合図をすると、いつの間にか背後に回った子分が美鈴さんを後ろから捕まえた。
美鈴さんは必死に抵抗しようとするが男に抑えつけられ首にナイフを突き付け、美鈴さんの首元を下卑た顔で嗅ぐ。
「んん~いい匂いだぜ。」
「てめ!「【#炎弾__ファイヤーパレット__#】!」
ゴォウ!!
光一さんが直ぐに子分に一歩踏み出すと同時に光一さんの足元に火の玉がまた放たれ、光一さんは後ろに飛ばされた。
「けけけ、無駄無駄。
兄貴はこの世界で数少ない魔法を使えるのさ。
驚いて声もでまい。」
魔法だって!?
何言ってんだこいつら!?
子分の挑発に光一さんは憤怒し、また起き上がろうとすると
「【#炎弾__ファイヤーパレット__#】!」
ゴォウ!!
またもや客席に猛る火の玉が放たれ客席が全焼する。
「じっとしてろ!!女がどうなってもいいのか!!?」
リーダー格の男は目を血走らせ威嚇する。
「ひ、卑怯だぞ。」
「ああ?
盗賊に卑怯もくそもねぇんだよ。
さぁ一匹ずつぶち殺してやる。
この女が心配なら其処へ並べ!」
くっ。
人質を取られてはこっちにはどうする事もできない。
何か手は?
僕が思考を巡らせていると、店の奥からフライパン片手にタバコを蒸しながらオーナーが出てきた。
「おぉーい、このフライパン焦げが取れてないよ。
洗ったの‥‥」
一気にオーナーの動きが止まる。
そらそうだよね。
正直店はもうグチャグチャで仕事どころじゃなくなってるもんね。
ってあれ?
僕は周りを見ると何故かウチのスタッフの顔色が青い。
そんな事は他所にリーダー格の男はこれまた綺麗な女が出てきたとばかりにまた下卑た笑いを上げる。
「ひよぉーー!!なんだぁここ!
上玉の集まりじゃねぇか!
おい!そこの女!お前も其処に並べ!
タップリ可愛いがってやんよぉ!」
歓喜を上げる男共とは真逆で更にウチのスタッフの表情が青くなる。
「誰の‥」
「あ?なんだ?」
子分は太々しい態度でオーナーに顔を寄せていく。
「誰の‥店で暴れてんだで」
「あ?聞こえねぇよ!!」
「誰の店で暴れてんだっつってんだよ!!」
バコォン!!!
子分の顔面がフライパンで弾ける(弾ける様に見えた)。
ギャー!!
「テメ!ふざけんじゃねぇぞ!」
他の子分達がオーナーに襲い掛かかるとバコォン!バコ!!バコォン!!次々にいい音を響かせ子分の頭が弾け飛ぶ。
全くもって容赦はない。
「なんだテメェは!?
【#炎弾__ファイヤーパレット__#】!」
猛る火の玉がまた繰り出されオーナーに向かっていく。
「じゃかましい!」
オーナーは「そんなもの」みたいな感じにフライパンで弾き飛ばす。
バゴォーン!!
「何!!?」
リーダー格の男は目が飛び出んばかりに見開き口を大きく開く。
そしてそれは僕らスタッフ一同全員もだ。
そしてその弾き飛ばした炎は美鈴さんを取り押さえる男の顔面に見事直撃。
男は崩れ落ちる。
えっあれ死んだよね?絶対死んだ。
っつか狙ったのか?凄すぎるオーナー!
「おぉ!偶然にも当たったみたいだな。
美鈴よかったな。」
オーナーは二っと笑う。
狙ったんじゃなかったのかぁぁ!!?
あれが美鈴さんに当たってたら大事ですよぉ!
っつか既に大事なんですけどね!
美鈴さんも顔を青くし引き気味だ。
「おぉーし、お前ら覚悟はいいか?
この落とし前しっかりつけてもらうからなぁ!!
おい!お前ら!!」
「はいはい、お任せくだせぇ」
肩を鳴らすように「くくく」と不気味な笑い声をあげながら山田さんが手をワキワキする。
「さっきの一撃の仕返しは大きいで。」
光一さんは指をポキポキと鳴らしながら威圧を放つ。
うん。結論からしてこの店の人達は人種が違うようだ。
盗賊共の表情がドンドンと青くなる。
オーナーがタバコをジッと鳴らし深く煙を吐き出すと、皆に指示を下す。
「反撃!!!!」
ギャーーーーー!!!!
盗賊共の断末魔がフロアに響き渡った。
初めに4話まで投稿します!