2章 名前
秀一はイチゴの元へ訪ねた。
「ここの生活は慣れたか?」
「ええ。おかげさまで。」
イチゴは胸を寄せ上げ、秀一を誘惑するように答えた。しかし、秀一は無視した。
「何か困った事とかないか?」
「そうねえ。ここには私の他に7人の女の子がいるのよね?」
「うん。」
「その娘たちについて知っておきたいわ。」
秀一は意外そうな顔をした。
「ここの娘たちはお互いに無関心で他の女の子の事なんか知ろうともしなかった。でも他の娘にも興味を持つ、お前には感心だ。」
「うふふ。じゃあさっそく他の娘の事を教えて頂戴。」
「うん。まずは空条ローザ。赤髪ロングヘアーの女の子だ。」
「ええ。空条ローザ、空条ローザ。空条ローザね!」
「次は夜神ローサ。赤髪ロングヘアーの女の子だ。」
「待って!」
「何だ?」
「今さっきと同じ名前を言われたような気がしたわ!」
「気のせいだ。さっきのはローザ、今のはローサだ。次行くぞ。」
「ええ…。」
「毛利ロサ。赤髪ロングヘアーの女の子だ。」
「ちょっと待って!」
「なんだ、一々止めるな!」
秀一はイチゴに10連続往復ビンタした。
「や~ん!だって…!またさっきの娘と同じ名前が…。」
「さっきのはローサ。今度のはロサだ!いいな!次行くぞ!」
「はい…。」
「利根川ロザ。赤髪ロングヘアーの女の子だ。」
「ちょ、ちょっとタイム!」
「なんだよ!いい加減にしろ!」
秀一はハリセンでイチゴの顔を30連続ビンタした。
「いやんっ!だってまた同じ名前…。」
「さっきのはロサ!今説明しているのはロザだ。」
「えぇ…。」
「次行くぞ。次は一条ジェシー。赤髪ロングヘアーの女の子だ。」
(ようやく変わった名前が来たわね…。)
しかし、イチゴは肝心な事を忘れていた。
「一条ジェシー、一条ジェシー、一条……。」
(はっ!)
イチゴは肝心な事に気が付く。
「ちょっと待って下さい!」
「今度はなんだ?」
「最初の人と名字そっくりじゃない!?」
「最初のは空条、今のは一条だ。」
「ちょっとなによそれ!ややこしすぎるでしょ!しかも揃いも揃って赤髪ロング赤髪ロングって!いい加減にしてよ!」
「お前も赤髪ロングヘア―じゃないか!」
パーンッ!
秀一はロザの頭を平手で叩きつけた。
「自分だって赤髪ロングヘアーなのに何を言っているんだ。」
「ぐっ…。」
「この地域では赤い髪は昔から不幸になると言われていて差別やいじめの対象なんだ。だからここに赤い髪の娘が集まってくるのは自然な事なんだ。」
「でも…。でも…。」
「遺伝子の関係上、鮮血のような紅蓮色の髪を持って生まれてくるのは女の子だけなんだ。だからここのいるのは全員女の子なんだ。髪が長いのも仕方がない。」
「だって…だって…。」
「『だって』じゃない!」
こうしてイチゴのメンバー覚えの苦闘は続くのであった。




