従う(したがう)THETA Obeyed by Her
そして、ある日。
聞き覚えがある女性の声で依頼が来た。
それが、裏野ドリームランドの依頼だった。
始めはいつも通り、6人に任せようと思っていた。
しかし、6人を見送った後、だんだんと裏野ドリームランドに何故か興味が出て来た。
そして、好奇心が募りに募って、後田盛は6人には知らせず、1人で裏野ドリームランドへと向かった。
6人が周辺に聞き込みをしている最中に、後田盛は一足先にドリームランドに到着し、入園した。
そこは、初めて来たはずなのに、どこか懐かしい、そんな感じがする場所だった。
まるで、一度ここに来たことがあるような… そんな感じが。
入り口近くのジェットコースターも、大きくて幻想的なドリームキャッスルも、寂れた観覧車も、メリーゴーランドも。
全て、一度見たことがある、そんな感覚が。
彼は近くの木の下闇に移動し、パソコンを開いて検索にかけてみた。
何かがわかるかもしれない。
そう思って。
しかし、何の情報も得られないまま、時間が過ぎていった。
使えるのが左腕だけなので、キーボードを打つのに時間がかかってしまうのだ。
そうこうするうちに、送り出した6人がやって来た。今更出ていくのが、どこか申し訳なくなり、そのまま隠れて木の下闇から覗き込む。
彼らがジェットコースターのところで何かをしているのが見えるが、何をしているのかが、後田盛のいるところからは見ることができない。
なんだろうかと、後田盛が近づこうとしたとき、「あ!」と、純次が声をあげた。
何があったのだろうと、ジェットコースターの方へ目をやると、赤いワンピースの着た少女が立っていた。
そして、
全てを思い出してしまった。
そう 、
全て を思 い出 して し ま ったの で す 。
彼は、思い出したくなかった。
それと同時に、思い出させた少女に、憎しみを抱いた。
ここまで、仲良くやって来たのに、これからどう接すればいいのだろうか?
姉を裏切った狭霧と、そして自分をこんな目に合わせたあの5人と!
そのとき、電話で聞こえたのと同じ声が、姉の霊那の声が、聞こえてきた。
「殺っちゃえば?私を殺した時のように…」
まるで、操り人形になったように、後田盛の身体は勝手に動いた。いや、実際に操り人形にされていたのかもしれない。
後田盛は夜桜 清真を襲った。そして、力一杯に首を絞めた。
清真は激しい抵抗ができないまま、息の根が止まってしまった。
清真を探して呼びまわっている5人をかわした後、元の木の下闇に戻った。
すると、雨が降り出した。
あ、と言う間に激しくなっていく雨の中、さっきの女の子が目の前に現れた。
「ありがと、霊。こいつは、臆病者のフリして、家まで私を尾行するストーカーだったの。
後は任せて。こいつを生贄にして、後のやつらもやって来るから。」
そして、こう命じた。
「ミラーハウスの方に行ってなさい。」
すると、彼の身体はまた、意図しないのにミラーハウスの方へと向かう。
隠し部屋のところまで勝手に導かれ、後田盛は隠し部屋の中のパソコンのモニターを見ていた。
すると、霊岩寺 禅龍と不死川 純次の2人が文字通り潰される様子が見えた。
その様子のあまりのグロテスクさに、後田盛は俯き嘔吐した。
胃の中が空になる音がした。
なんとか気持ちを落ち着け、再び画面を覗いた時、狭霧 椎名がミラーハウスに入って来るのがわかった。
「まずい!」
そして、隠し部屋から出た。
そして、そして、そして…………
結果的に、後田盛は狭霧を殺した。首を絞めて。
また、女の子が現れた。
「ゴメン。あと2人、残して来ちゃった。代わりに、殺して来てくれる?」
そう言われると、例のごとく、身体がその言葉に従い、動いた。
覚えている。
幼少期からずっとやっていた剣道の動きで、鉄骨を使って、残りの2人の頭を叩き割ったのを。
その後、女の子は言った。
「ところで、どうして私を殺したの?」