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シータθ A Tragety of THETA  作者: 緋色の糸
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後田盛(しいたもり)THETA Is Named Theta-mori

 後田盛(しいたもり) (れい)は、小学生の頃、今とは違う名前だった。


 畦田(あぜた) (れい)


 これが彼の本当の名前だった。

 そう、畦田 霊那(れな)とは、1つ違いの姉弟だったのだ。

 小学校1年生に上がった時、校内の大イヴェントの1つ、校内水泳大会で姉の泳ぎを初めて見た。

 姉は幼い頃から水泳をやっていたのだが、自分は全く同じ曜日に剣道を習っていて、彼女の泳ぎを一度も見たことがなかった。

 それはそれは、とても綺麗なものだった。

 まるで人魚のような。

 小2なのに、フォームもスピードも誰にも負けることなく、小6の先輩にも圧勝だった。

 霊はこの時、幼いながらも、姉に恋をした。

 血の繋がった姉弟どうしで恋愛することはできない。

 禁断の恋だった。

 周りにも気づかれることなく、ずっと心の内に秘めた恋。

 どうやら、学校中の男子が彼女に片想いを抱いたようで、「レナ先輩〜」とか、「レナちゃん」とか、馴れ馴れしく姉には接する輩まで現れた。その代表は昔からチャラかった鵺野(ぬえの) 榮二(えいじ)だった。

 しかし、彼女は見事に無視し続けていた。

 霊の絶対に成就することなく、過ぎていき、姉には狭霧(さぎり) 椎名(しいな)という名前の彼氏ができた。

 姉が小学4年生の時だった。

 正直、始めは狭霧のことを疎ましくは思ったが、次第に親しく感じるようになった。

 いつの間にか霊は、狭霧のことを「シーさん(・・・・)」と呼ぶようになった。

 ある日、狭霧は姉の取り巻きに突然襲われ、左眼を負傷した。

 それ以降、狭霧は隻眼となったが、姉との仲は離れるどころかさらに深まった。

 そして、狭霧の卒業式の時、狭霧は霊那の弟の霊に頼んだ。彼女を守ることを。

 霊は胸を張って引き受けた。

 いつしか、姉は泣き暮れるようになった。学校を不登校になるほど。

 それが、狭霧が彼女を裏切って別の人に心移りしたと知ったのは霊は知るよしもなかったが、霊には、泣き叫び弱っていく霊那の心情が全くわからなかった。

 次第に姉を疎ましく思い、煩わしいと思い、邪魔だとまで思った頃、彼はついに犯してしまった。


 殺人を。


 捕まったのは霊の父、(ゆう)だった。

 そして、霊は殺人鬼の子供として虐められるようになった。しかし、彼は、自分が犯した殺人を記憶していなかった。

 そして、母の性の後田盛を名乗るようになり、学校を転校し、下の名前も「幽」を連想させる「霊」から旧字体で「神」の字が入っている「䨩」に変えられ、いじめから逃れた。

 それで、中学生以降のニックネイムは「θ(シータ)」となった。

 しかし、高校の時、交通事故に遭ってしまう。

 それで、右腕と左眼を失ってしまった。

 もともと左利きだったので、生活にはさほど大きな支障もなかったが、容姿が随分と変貌したことによって、再び虐めを受けるようになった。

 彼は人間不信に陥った。その分、幽霊や妖怪、魔法、超能力といった、非現実的、いや、超現実的なものを追い求めるようになった。

 そして、後田盛探偵事務所、通称θ事務所(シータ・オフィス)を開いた。

 最初は後田盛1人で活動していた。

 しかし、知識面、体力面、外観面において、大きな欠如があった。

 仕方なく、彼は求人届けを出した。

 そして集まった6人。

 彼らの名前を見たとき、後田盛はなぜか、懐かしい気持ちに襲われた。

 なんと、姉の元カレの狭霧と、姉の取り巻きの鵺野たちが集まったのだ。しかも、取り巻きの中でも過激派で、後田盛を虐めた5人が。

 しかし、このころになると、後田盛は姉との記憶、そして小学校の頃の記憶を忘れ去ってしまっていたのだ。

 彼らの方も、名前と容姿が変わった後田盛が畦田 霊だとは気付かなかったようだが…

 後田盛は懐かしさの答えを知りたくなり、すぐに採用した。

 お互い、「θ(シータ)」、「シーさん」、「鵺」、「ショー」、「ゼン」、「ジュン」と呼び合うようになるまで、それほど時間はかからなかった。

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