したらば、見せん。Show You The Kay of THE TAle
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彼らの様子を木の下闇から覗く一ツ目があった。
その足元にはノートパソコンが広げられている。
彼らの誰1人として、覗く「隠しカメラ」に気付いてはいなかった。
(『下闇』より)
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これは確かに、隠しカメラが設置されていて、それが彼ら6人を覗いているように見える。
しかし、こうは考えられないだろうか?
片目しか無い人物が彼らを覗いていて、それを「隠しカメラ」と表現しているのだと。
では、この人物は誰なのか?
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男たちの先頭にいた隻眼の男
(『黄泉』より)
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まさか、この男では無いだろう。この人は覗かれている側なのだ。
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「なぁ、シーさん。」
茶髪のチャラそうな男が隻眼の大男に声をかけた。
(『下闇』より)
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この男は、周りから「シーさん」と呼ばれている。だが、よく思い出してほしい。
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「θ」は後田盛探偵事務所所長の後田盛 䨩のあだ名から取られたものである。
(『黄泉』より)
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後田盛 䨩のあだ名は「θ」つまり、「シーさん」とは、確かに似ているが、別人である。
つまり、彼らを覗き見ていた人物は後田盛だったのである。
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後田盛はジェットコースターのレールの下にいるその少女を見て、過去のある一時点に記憶が飛んだ。
忘れ去ったはずのあの記憶。消し去ったはずの思い出。
絶対に思い出したくなかった記憶。蘇ってしまった思い出。
(『虐げる』より)
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そう考えれば、この場面も後田盛が遠くから少女を見ているようには思えないだろうか?
そういえば、この「シーさん」とは、一体誰だったのだろうか?
随分とみんなに対して偉そうな態度を取っていたが…
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彼らは隻眼男より2つも歳下だ。
(『死体』より)
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20年も前のこと、後田盛は1学年上のレナに片想いをしていた。
校内水泳大会で彼女の泳ぎに見惚れてしまったように後田盛は記憶していた。
しかし、それは禁断の恋だった。
しばらくすると、学校内でも人気な彼女に彼氏が出来た。彼女の1つ上の学年の狭霧 椎名という人だ。
(『虐げる』より)
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彼氏の方は、そんな人々に恨まれ憎まれ、ある時にはとんでもない怪我を負わされることもあった。
(『虐げる』より)
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狭霧は後田盛よりも2つ歳上。後田盛の片思いの相手の彼氏で、レナの取り巻きに襲われ、とんでもない怪我を負わされている。もしそれが左目の傷ならば…
と、考えるのは、飛躍しすぎだろうか?
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隻眼男は3人の死体を見ていられなくて、少女の行方を追うことした。
謝りたい
その一心で。
(『滴る』より)
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もし、隻眼男が後田盛ならば、殺人を犯してしまったことに対して「謝りたい」と考えられるが、そうではないなら…
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狭霧に新しい彼女が出来ていたと知ったのはその直後だった。
(『虐げる』より)
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隻眼男はこの「新しい彼女」を作ってしまったことに対して「謝りた」かったのではなかろうか?
さて、この辺にとどめておきましょう。
これは推理小説ではありません。
恐怖小説です。
読者のみなさまが求めているのはミステリーの意外性ではなく、ホラーの恐怖心ですものね。
とんだ蛇足でしたね。
では、また。続きをお楽しみください。