表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シータθ A Tragety of THETA  作者: 緋色の糸
3/9

虐げる(しいたげる)THETA Abused by Them

「あ!」

 無言男、霊岩寺(りょうがんじ) 禅龍(ぜんりゅう)の次に無口なオールバック男、不死川(しなずがわ) 純次(じゅんじ)が急に声をあげた。

「どうした、ジュン!お前が喋るなんて珍しいじゃないか!このあと、雨でも降ったらお前のせいだからな!」

 何とも酷いことをいうチャラ男を無視し、純次は続けた。

「あそこ、何か見える」

「え、どこどこ!?」

 チャラ男、榮二(えいじ)は純次が指差す方向を見た。

 リーダー格の隻眼男をはじめ、残りのメンバーもその方角を覗く。

 そこには、ーー


     赤 い      ワ ンピー     ス       を着 た 小さ    く        て可 愛ら    しい少      女      が立 って いた。



 後田盛(しいたもり)はジェットコースターのレールの下にいるその少女を見て、過去のある一時点に記憶が飛んだ。

 忘れ去ったはずのあの記憶。消し去ったはずの思い出。

 絶対に思い出したくなかった記憶。蘇ってしまった思い出。

 後田盛はレナという少女を愛していた。

 左目を、右腕を、失うより随分と前のこと…


 40年も前のこと、後田盛は1学年上のレナに片想いをしていた。

 校内水泳大会で彼女の泳ぎに見惚れてしまったように後田盛は記憶していた。

 しかし、それは禁断の恋だった。

 しばらくすると、学校内でも人気な彼女に彼氏が出来た。彼女の1つ上の学年の狭霧(さぎり) 椎名(しいな)という人だ。

 その時の彼女はこの上ない幸せを感じていたようだが、彼女を取り巻く周りの人たちは皆、彼女の彼氏のことを疎ましく思っていた。

 彼氏の方は、そんな人々に恨まれ憎まれ、ある時にはとんでもない怪我を負わされることもあった。

 それでも彼は彼女を愛し続けた。

 ついに訪れた狭霧の卒業式。彼女も彼も盛大に泣いていた。

 狭霧は「また、1年もすれば逢えるよ」と言って慰めていた。

 そして、後田盛に「それまで彼女の面倒を見てやってくれ」と言った。

 後田盛は狭霧の言う通りにした。

 しかし、彼女は新学期が始まっても泣き続けた。

 後田盛には彼女がなぜ泣くのかがわからなかった。

 1年後にまた狭霧に逢えるのに。そして、それまでは自分がいるのに。

 後田盛は我慢がならなかった。

 ついに彼は彼女の寝込みを襲った。

 そして、

     首    を       絞     め殺し    てしま        った……


 狭霧に新しい彼女が出来ていたと知ったのはその直後だった。

 そして、後田盛は狭霧と同様、レナの取り巻きに襲われ、顔面に、左目に傷を負ったのだった。

 後田盛はレナにそっくりな少女を見て、再び殺意が芽生えた。

 辛うじて目が見える右眼で煮えたぎる憎しみの刃を少女に向けた。

 少女はそれに気付いたのか、踵を返して逃げた。


 隻眼男たちは少女の跡を追った。

 しかし、少女が逃げた先が深い森の中だったので、ある程度中に入った後、これ以上は道に迷ってしまうと判断して引き返した。

「あれ?」

「どうしたんですか、シーさん?」

「ショーがいない…」

 ビビりの夜桜(よざくら) 清真(しょうま)の姿が消えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ