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シータθ A Tragety of THETA  作者: 緋色の糸
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下闇(したやみ)THETA under The Dark

 男たち6人は中に入るとまず、ジェットコースターへと向かった。

 1番入り口に近いところにあるからだ。

 もう十何年も前から、人の手入れが入っていないので、金属は酸化して赤黒い色を表面に見せ、レールには蔓が巻きつき絡み合い、本来走るべき車体は落ち葉や若葉に身を隠していた。

 正直、ここまで時間が進んでしまっては、本当に事故が有ったのか無かったのか、どのような事故が発生したのか、調べることは実に困難を強いられる。

 一部の人々は閉園理由をこう述べた。

「ジェットコースターで事故があったから。」

 しかし、それらの人々に「どのような事故があったのか」を尋ねれば、返ってくる返答は1つとして同じものは無い。

 似たようなものはあれど、全員見事に異なる答えを挙げるのだ。

「なぁ、シーさん。」

 茶髪のチャラそうな男が隻眼の大男に声をかけた。

「どうした、鵺?」

 チャラい男の名は鵺野(ぬえの) 榮二(えいじ)。元は水商売をやっていたらしい。

 耳にはピアスがついており、服装も彼1人だけがダラ〜としているのだ。

「さすがに今回は諦めた方がいいんじゃないですかね?」

「どうしてだ?」

「だって、さっきショーさんがこんな紙を拾ってきたんですよ。」

 そう言って、チャラ男は隻眼男に一枚の日に焼けた紙を渡した。

「ショーさん」と呼ばれるのは、夜桜(よざくら) 清真(しょうま)という、チビでビリでビビりのしんがり男のことだ。いつも誰かの背中にくっついている。

 そんなビビりが拾ってきた紙に書かれていたのは、

「ここで起こったことを掘り起こす者よ

 今すぐ立ち去るが良かろう

 さもなくば、その身に災いが降りかかろう…」

 という赤黒い色の奇妙な字体だった。隻眼男はどこかでそれを見たような既視感に襲われた。しかし、それを思い出すことができない。

「あからさまにふざけた文章じゃないか。こんなもの、どこかの子供が書いたに違いないだろう。こんなものに怯えているのか、鵺?」

「いえ、違いますよ。文章じゃないです、紙自身ですよ。」

「紙?あ、なるほど。紙自身は日に焼けて、時間が経ったように見えるが、風や雨に曝されボロボロになった形跡がない。つまり、ショーが見つけたところに誰かが最近この紙を置いたってことになるな。」

「えぇ、そうです。しかも、昨日は雨でしたから、今日あそこのベンチの上に置かれたことになります。」

 そう言って、チャラ男は入り口の門近くのベンチを指差した。

「ん?ショーが1人であそこまで行ったのか?」

「いえ、カマにくっついて行って貰ったそうです。」

「あ、なるほど。」

 カマとは、今ビビりがくっついている優男のことだ。宵奈良(よいなら) 和眞(かずま)という名前だ。おそらく最もビビりの男にくっつかれている時間が長い男だろう。

 この中で最も機械に強い男だったりもする。

 隻眼男は持っていた紙の黒い文字を指でなぞった。そして、何かに気付いた。

「どうしたんですか?」

 チャラ男が尋ねたが、隻眼男はそれに答えず、優男を呼んだ。優男にくっついていたビビりは隻眼男に近づくのが恐くて近くにいた無口男に乗り移った。

「何でしょう?」

「カマ、ALSライト(例のライト)を頼む。」

 ALSライトとは、実際に科捜研などが使っている科学捜査用の懐中電灯のこと。

 隻眼男はゴーグルを掛け、日陰のところで青い光を放った。

 そして、例の紙を押さえながら青い光を照らしていく。

「やっぱりな。」

 隻眼男はそう呟いた。

「何がです?」

 優男が訊く。

「この赤黒い文字、まさかとは思ったが、血液だ。人間のものか動物のものかは判断は出来んが、間違いなく血のようだ。」

「何ですって。」

 チャラ男と優男が口を揃えて言った。


 彼らの様子を木の下闇から覗く一ツ目があった。

 その足元にはノートパソコンが広げられている。

 彼らの誰1人として、覗く「隠しカメラ」に気付いてはいなかった。

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