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シータθ A Tragety of THETA  作者: 緋色の糸
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黄泉(したへ) THETA into The Hell

 所々ひびが入っているコンクリートの上を、数人の男たちが重々しい足取りで突き進んで来た。時々、男たちが小枝を踏む音も聞こえた。

 左右に連なる木々には緑などほとんど見られず、ただただ醜い黄枯茶の幹が痛々しく晒されていた。

 男たちの先頭にいた隻眼の男は、ふと空を見上げた。暗い鈍色の雲がどんよりと止まっていた。朝見た天気予報では今日はまだ雨が降らないらしいが、どうにもそれが信じられないほど、雲は重たそうに空に沈んでいたのだ。

「はぁ…」

 隻眼で屈強な男は、今日は何度目かわからないため息をついた。

 どうして俺が、あんなところに行かなくてはならないのか…

 と、思いながら。

 左眼が見えていないその男が、視線を上方から前方に戻すと、赤い古錆びた門が視界の中央に飛び込んで来た。

 鳥居のようなその門の中央に、赤黒く気味が悪い字でこの場所の名前が記されていた。



 URANO(裏野) DREAM(ドリーム) LAND(ランド)



 と。


 隻眼の大男を始めとする、黒服の男達は、その廃れた遊園地の中へと入っていった。

 彼らは、本来こんな寂れたところにいるような人種ではない。

 都会のど真ん中のビルの中で暮らし、田舎や自然とは一切無縁の生活の中で育ってきた人々だ。


 彼らがこのような場所に来ることになったのは、ある一本の電話がきっかけだった。

 彼らが経営する事務所の名は、「後田盛(しいたもり)探偵事務所」、別名「θ事務所(シータ・オフィス)」。「θ(シータ)」は後田盛探偵事務所所長の後田盛(しいたもり) (れい)のあだ名から取られたものである。

 θ事務所(シータ・オフィス)は、探偵事務所と名乗っておきながら、普段は浮気調査や人探しはせず、また殺人事件の調査なども行わない。

 彼らが普段受け付ける仕事は、幽霊や超能力といった非現実的(後田盛曰く「超現実的」)なものだ。


 数日前、左目に傷を負い、右腕も失っている後田盛のところに一本の電話が入った。

 N県にあるもうすでに廃園となった遊園地に、幽霊が出ることがあるので調べて欲しいというものだった。

 調べると、その遊園地は、10年以上も前に廃園になっていた。

 しかし、どこにもその理由が書かれてはいなかった。

 ジェットコースターやミラーハウス、観覧車、メリーゴーランドなど、人気のアトラクションもあり、それなりに繁盛していたのに、急に閉鎖したそうだ。

 赤字だったという形跡もなく、閉園になる原因など全く見当たらなかった。

 そこで、彼らが現地に赴くこととなったのだった。

 山の麓の村や町の住民に取り敢えず話を聞いてみた。

 すると、返ってきた答えは大きく分けて3通りあった。

「ジェットコースターで事故があったから。」

「ミラーハウスの中で行方不明になったカップルがいたから。」

 そして

「行ったきり、帰ってこなくなった子供達がいたから。」

 しかし、廃園になった後の話では、全員が全員同じことを言った。

「『閉園後の裏野ドリームランドの中には、赤いワンピースを着た女の子の幽霊がおり、あそこに興味本位で遊びに来る子供達がいれば、一緒に遊ぶふりをしてどこかへ連れ去ってしまう』という噂がある」

 だから絶対に近づいてはならない、と。

 噂にしては、やけに長い。ただ単に尾ヒレがついていっただけかもしれないが…

 ミラーハウスについて言及していた老人は、このようにも言っていた。

「ミラーハウスでは、まるで鏡の中のモノと入れ替わったかのように、入る前と後では性格が一変する。」と。

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