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俺は確かに子供だがフランドゲイルも、なんならついでにウシジゴクも打ち取って来てやるぜ。
ゴッツとマリウスの話に、俺は心の中で意気込んでいたのだが、それに気付かないゴッツはマリウスへの反論を返す。
「それがな、実は昨日、レスカさんが俺だけに教えてくれた事があったんだ」
そう前置きしてゴッツが続けた。
「ここに居るセグは、北の国で小さい頃からモンスター討伐とかしてるらしくて、実力は申し分ないらしい。そして、今日あたり、このタラックに来ることをレスカさんが知っていた。一昨日、コルト・コーレリアからタラック行きの船に乗ったらしくてな……」
なに!?
なんでそこまで知ってるんだ!?
……本当に千里眼が?
しかも、俺の過去まで知ってるとなると、千里眼だけじゃない様にも思えるが。
「……それは、本当なのか?」
マリウスが俺に聞いてきた。
「……あ、ああ。確かに俺はコルトから二日間かけて船で来た」
ようやく振られた話だったが俺はそれだけ答えた。
「そして、セグには悪かったんだが、そのセグに牛ジゴクの話を知らせてやれば、フランドゲイルも牛ジゴクも討伐してくれるだろうってレスカさんが言ってたから……。俺は、セグを利用しようとしてたんだ……」
なるほど。
それで後ろめたさを感じて、出会った時にうつ向き気味だったのか。
いいさ。
「そんな事なら、別に悪びれなくても良い。どのみち俺は、何も情報が無くてもフランドゲイルを駆逐するためにここに来たんだ。その為の情報は貰えるだけ貰いたい。予期せぬ事で命を落としたくはないからな」
「ヒューッ!言ってくれるね!じゃあ、あたしがついていっても良いかい?」
リリーがそんな事を言ってきた。
「……なっ!?お、お前、正気か!?」
マリウスは驚いてリリーの方を刮目した。
「いや、俺もやっぱりついていくわ。タラックに住む俺達が何もしないで、他所から来た旅人に任せっきりなんて、ブレアノールの民として恥ずべきだった。セグ。利用しようとして悪かった。俺もついていって良いか?」
ゴッツがそう言って、俺に右手を差し出す。
「お前ら、マジかよ!?」
マリウスは、ゴッツとリリーを順に見た。
これまで、何人もの討伐隊がヤツらの餌食になったのか。
それだけ、タラックの人にとっては脅威的な存在である事が、マリウスの反応でよくわかる。
多分、この三人のうちで参考にすべきはマリウスなのだろう。
リリーは楽観視し過ぎで、ゴッツは後ろめたさへの謝罪の念と、誇りによる勇気で討伐に参加する決意をしたにすぎない。
マリウスの反応が、フランドゲイルの脅威を一番正確に映し出した反応なのだ。
しかし、俺も二人を見たが、二人とも強い意思を感じる目をしていた。
リリーは楽観視していても、ちゃんと決意すべきをわきまえている様だ。
「……本気なんだな……」
俺があえて黙っていると、マリウスが呟いた。
二人との付き合いが俺よりは間違いなく長いであろうマリウスの目にも、この二人が本気であると感じさせたのだ。
「……仕方ねぇ。俺も付き合ってやるか」
観念した様に吐き出したマリウスだが、未だ決意が乗ってこない。
「よし!じゃあ、俺達でここ一年間溜まったタラックの膿を全部取り除いてやろうぜ!」
ゴッツが、これまでで一番の笑顔を見せた。
「「ああ――――!」」
「―――やるか!」「―――やってやるわ!」
マリウスとリリーの掛け声が重なる。
「……わかった。じゃあ、出発は明日の未明だ。明るいうちに現地へ行って、視界条件が良い時間帯のうちに牛ジゴクの位置を確認する。その時にフランドゲイルが出てきたら、見付け次第倒す。その後、逃げるのも難しいらしいから、明るいうちに何とか逃げて夜営。二日目に本番でフランドゲイル殲滅と牛ジゴクを叩く!」
俺が作戦を打ち明けると、三人は緊張の面持ちで頷く。
「……あんた、こんなに可愛いのに、本当に討伐に慣れてるのね。こんな子が大人になったら、一体どんな男になるのかしら」
リリーは、俺を見て畏れを露にした。
「ホントだ。だが、俺も何とかなる気がしてきた!」
「ええっ!?今の、逃げるところとか全くの無計画だぜ!?そんなんで良いのかよ!?」
ゴッツが拳を突き上げるのに対し、マリウスは心配を口にした。
「……まあ、何とかして逃げるんだから、何とかなるだろ!」
ゴッツの回答があまりにもアバウト過ぎて、言った俺自身が不安になる。
「……でもまぁ、言った手前、誰がやられても恨みっこなし!タラックの為に、セグに賭けるよ!」
リリーが男二人に勝る決意を言い放った。
どうやら、この三人組では、女性であるリリーが一番リーダーシップを執っているのだろう。
ムードメーカーでもあり、サバサバとした決断力もあり、男二人の影が彼女の光に照らされて、より鮮明に浮き出ている気がした。
「……そうだな!」「やるしかねえよ!」
ゴッツとマリウスは、自ら声を出して奮起した。
この勢いが、明日までもってくれれば良いが。
俺はそんな不安を抱きながら、三人の話に耳を傾けていた。




