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ヘタレの日常

「うにゅぉ……?ぬぁ、またここなのか……」

 慶志朗が眼を覚ますと、最初に飛びこんで来たのは医務室の味気ない天井だった。入学以降頻繁にこの医務室に運ばれる様になった彼には、もう見慣れた光景だった。

「どれくらい寝てたんだろう僕……また授業サボっちゃったのかな?」

ぼんやりと天井を眺めていると、

「まだ五分程度だよ。ここに運んでからね」

 誰も居ないと思っていたのに返事をされ、慶志朗は慌てて顔を上げてそちらを見る。

「翼君?何で……運んでくれたの?」

「僕と理瀞さんの試合が終わった所に、君が吹き飛ばされて転がって来たんだよ。眼の前で気絶されたら運ぶしかないだろう?」

 あの日以来話らしい話をしていなかった翼がジャージ姿のまま、慶志朗が寝ているベッドの隣に軽く腰掛けていた。

「だから早く転校した方が良いと言ったのに。これで何度目だい、気絶したのは?」

 入学式のあの時以来、向けられている冷めた眼差しで言われ、慶志朗は気まずくなりつい翼から視線をそらしてしまう。

「全く……《超人》と戦って気絶程度で済んでいるのが不思議な位だ。呆れた頑丈さだよ」

 淡々とした口調で言われ、慶志朗は暗い気分になり掛けられていた毛布を頭から被ってしまう。未だに翼は自分がこの学園に居続ける事が気に入らない様子だったからだ。

「でも……思っていたよりも頑張っているじゃないか。それだけは見直したよ」

 毛布の上からそう言われ、慶志朗は驚いて毛布から顔を出し、翼を見る。先程と同じ淡々とした表情だったが、冷めた眼差しは消え、引き込まれそうな優しそうな眼をしていた。

「実際、君は《超人》相手によくやっていると思うよ。普通ならとっくに逃げ出して居る筈だ。なのに君はまだここに居る。凄いと思う。だから……もう転校しろなんて言わないよ」

 その言葉は、今の慶志朗には何よりも嬉しかった。自分の事を認めてくれたと思ったから。

「翼君……僕の事を認めてくれるの?」

 だが、すぐには信じられなかった。あの日以来、話しかけても無視していた翼が、そう言う言葉を掛けてくれるとは思っていなかったから。毛布から顔だけを覗かせて、不安そうな顔でつい聞いてしまう。そんな、怯えた子犬みたいな様子の慶志朗に翼は澄ました顔で、

「どうかな。ただ、君が変な奴だって事だけは認めたかな」

 期待に輝く瞳を一気に暗く沈んだ色に変え、「ズーン」と音が聞こえそうな程に落胆して布団に顔を引っ込め、何やらブツブツ言いだした慶志朗に、翼はフッと笑みを浮かべる。

「初めて会った時に感じた通り、君は面白い奴だ。面白いを通り越して大馬鹿と言えるかも」

 何処か皮肉気な翼の言葉に、慶志朗は不思議そうな表情で再び毛布から顔を出す。すると、翼は意味ありげに笑い、毛布に包まったままの慶志朗の身体を見ながら、

「……気合と努力と根性とは恐れ入ったよ。今時そんな馬鹿な事、誰も考えもしない」

 暑苦しい熱血漢じみた事を突然口走る。だが、慶志朗はキョトンとしつつも当然の様に、

「馬鹿じゃないよ、格好いいんだよ?『気合と努力と根性はダンディの条件』って言われて母さんに子供の時からやらされてたし。男なら誰でもやる物なんだよ。君もやってるでしょ?」

 当然の様な顔で言う慶志朗に、翼は唖然とした顔をして、すぐに喉の奥で笑いだす。

「ハハハ、まさか!僕は『ダンディ』なんて目指してないからそんな物持ってないよ。僕だけじゃない、今時その三つを持っている奴はいないよ」

「えー嘘だー。東奥君とか古賀君なら絶対持ってるね!」

 慶志朗が疑わしそうな顔で言うと、翼は益々楽しそうに笑う。

「断言するけど、持って無いよ。そもそも《超人》には必要ないから。しかし……君のお母さんは実に面白そうな人だね。是非一度会ってみたくなったよ」

 そう言うと翼は腰を掛けていたベッドから立ち上がる。

「君も目を覚ましたし、僕は授業に戻るよ」

「あ、じゃあ僕も……」

「君はまだ休んでいた方が良い。幾ら丈夫な体でも、気絶してすぐに起きたら駄目だよ」

 頻繁に医務室にかつぎ込まれているので、単位が心配な慶志朗は起きあがろうとするが、翼にそう言われ、素直に休む事にし、ベッドに横になる。

「成程……君は結構素直だね。だから疑問に感じないのか」

 再び意味ありげに言われ、慶志朗は目線を向けるが、翼はそれについて触れずに、「ゆっくり休んでなよ」と声を掛けて医務室のドアから外に出る。と、

「あら?翼さん、戻られるのですか?」

 ドアを出てすぐに理瀞に声を掛けられる。手には慶志朗の制服を抱えていた。誰にも私服OKだと教えてもらえず意地になったのか、慶志朗はずっと制服で学園生活を送っていた。

気絶した慶志朗を二人で運んだのだが、医務室に運んだ後、理瀞には慶志朗の着替えを教室に取りに行ってもらっていのだ。

「うん、もう眼を覚ましたからね」

「本当ですか?何やら……日に日に回復が早くなりますわね、ヘタレさんは」

 呆れた顔で頭を振りながら言う理瀞に、翼は皮肉気に笑って、

「ああ見えて、彼は気合と努力と根性の塊だからね。この三つはダンディな男の条件らしい」

「はぁ……何ですかそれは?何処のスポコン住人の話ですの?あのヘタレさんに一番似合わない言葉ではありませんか?」

「フフフ……案外そうでもないかもよ?」

「翼さんの買被りです。あのチビ眼鏡のヘタレさんは体重が重いだけが取り柄ですわ」

 医務室に運びこんだ時、再びあの異常な重量を体験させられた事が不愉快なのか、顔をしかめながら理瀞は言うが、

「はははは。確かに重かったね、慶志朗君は。でも……物事には全て理由が有るものさ。彼が重いのも、彼が理瀞さんの言うスポコンの住人だからかもよ?」

「……変な翼さんですわ。私にはさっぱり意味が解りません」

 意味深な事を言う翼に呆れながら言い、そして気が付く。

「翼さん……?今『慶志朗』君……て?」

 あの日以来、翼は慶志朗の事を名前で呼んでいなかった筈だ。それが、今また彼の名前を口にした。それは、長い付き合いのある理瀞にはどういう事か良くわかる。

「まさか……あのヘタレさんの事を、やはり気に入られたのですか?」

「さぁ、どうだろうね。ただ……少し興味が湧いたって所かな」

翼はそう言うと演習場に向かう。翼の言葉に、唖然としていた理瀞は慌てて後を追う。

「彼はどうやら……ダンディな男の条件は、男なら誰でも持っている物だと思っていたらしい。僕が持っていないと言ったら驚いていたよ。フフフ、本当に面白いよ慶志朗君は」

「な……何ですって?ま、まさかあのヘタレさん……!《無能》どころか無知過ぎます……」

 驚愕の表情で医務室の方を振り返る理瀞に、翼は楽しそうに笑いながら、

「彼は、コレまでの自分が居た世界とは全く違う世界に飛び込んできたんだ。何も書かれていない、真っ白いノート見たいな物さ。きっと、今は白紙のページに色々な事を書き込んでいる所だよ。ページが埋まった時、彼がどういう行動を取るか――楽しみじゃない?」

 楽しい悪戯を思いついた悪童の様な顔で言う翼に、

「翼さん……はっきり言って、それは悪趣味ですわ……」

 理瀞は大きく溜息を吐く。だが翼はそれに答えずに笑い続け、理瀞は仕方なく溜息を何度も付きながら翼と共に演習場に戻る。出入り口をくぐった所で、

「二人で仲良くヘタレのお世話かよ。物好きなこった」

 二人が振り向くと、東奥が数名のB組生徒と共に侮蔑の眼差しを向けていた。

「そんなに《無能》が気になるのかテメエらは?《能力》も何も無い、俺達《超人》に守られるしか能の無いクズを相手にして楽しいのかよ」

「……確かにヘタレさんが三黒須に居る事は歓迎出来ません。ですが……だからと言って、眼の前で意識を失った『一般人』を放置するなど、《超人》としては恥ずべき事です」

 見下した目で見て来る東奥に、理瀞は明らかな作り笑いを浮かべてそう言い返す。

本来《超人》にとって一般人は守るべき対象。校則の冒頭に記載されている様に、《超人》は一般人との共存を目指している。決して《超人》が一般人に偏見を持っている訳ではない。

東奥の様な生粋の学園生が慶志朗を毛嫌いする理由は、《超人》として最高の教育を受けられる学園に『一般人』が入学して来たと言うただ一点に尽きる。

特に特別教育科の生徒は選りすぐりの《超人》であり、《超人》の中の《超人》と言うプライドもある。特別教育科に入る為に必死で《能力》を向上して来た者ばかりなのだ。その中に《能力》を持たない《無能》が居る事は彼等の矜持を傷付ける事に他ならない。口では東奥に反論したが、元より理瀞自身も慶志朗がこの場に居る事は気に入らないのだ。

「ハッ、ご立派なこった。つうか《無能》のくせに《超人》と試合すっから気絶すんだっての。一般人の相手をすんのは卒業してからで十分だ。今は《無能》に関わってる暇ねえだろ」

「……成程、面白いね。やっぱり皆にはただの一般人にしか見えないんだ」

 それまで黙っていた翼が、ポツリとそんな事を言う。

「あ?何だそりゃ?どういう意味だよ翼」

「言葉通りだよ。君達は変だと思わないのかな?僕は違和感を覚えるよ。確かに彼は《無能》者だよ。でも、ただ面白そうだからってだけで三黒須運営陣が入学を許す筈が無いと思わないかい?彼には何か秘密がある。それを知りたいと君は思わないのかい?」

「はぁ?思わねえよンなもん。お前はアイツの成績見てねえのか?試合は全敗、ダントツの最下位だぞ?秘密が在った所で《能力》が無けりゃこのガッコじゃゴミなんだよ。なぁ?」

 東奥が背後の取り巻き達に向けて言うと、皆嘲笑しながら頷く。だが翼は、

「僕は気になるけどね。秘密が有ればそれが何なのか知りたい、と君は思わないのかい?」

 そう嘯くように言うと、もう東奥に感心を無くした様に、横を抜けて演習場の奥の方へと向かって歩き出した。その背中に向けて東奥が、

「何訳解らねえ事言ってんだ!《無能》を相手にする程暇ならこの前の続きをしてやろうか?テメエがヘタレにかまけている間に俺は《能力》を磨いてんだ。テメエにも負けねえぞ!」

腹立ち紛れに怒鳴るが、翼は背中を向けたまま、気負いの無い自然な口調で、

「興味ないな。今更君の《能力》には何の目新しさも感じないよ」

振り向く事無く演習場の奥へ歩いて行く。その後ろ姿に東奥が何か怒鳴るよりも早く、

「そんなに翼さんと決着が付けたければ、試合を待てばよろしいですわ。もっとも、その前に私と当る方が早いでしょうね。不本意ながら貴方と私は順位に差がないのですから」

 柔らかな笑みと、どす黒いオーラを同時に出すと言う器用な技を披露しながら理瀞が言うと、東奥はフンと鼻を鳴らして蔑んだ様な笑みを浮かべる

「……テメエごとき端から眼中にねえよ。翼を蹴落とそうとせずにべったりしている腑抜けにゃ興味ねえっての。黒百合姫とか呼ばれて喜んでいる間抜けにはな」

「あら、面白い戯言を言いますわね。何でしたら私が腑抜けかどうかここで試しますか?」

「ハッ!偉そうにしてんじゃねえよ。テメエは俺の下だろうがボケ」

「まあ。二位『ごとき』がそんなに自慢ですか?貴方も私も、所詮翼さんの下なのですよ?貴方と私の差は一点だけですが、貴方と翼さんでは二〇点以上の差がありますのよ」

 見下した内容の言葉を丁寧な口調と柔らかな笑みのままで理瀞が言うと、東奥はそれまでの馬鹿にした笑みを消し、理瀞を険悪な眼差しで睨みつける。

「言ってくれるじゃねえかユリのお姫様よ。今ここでナメた口きけねえ様にしてやろうか?」

「弱い犬ほど良く吠えると言います。貴方こそご自分の事を良く知るべきですね」

 理瀞が吐き捨てる様に言うと、二人は同時に身構える。

「お、おい東奥、流石に授業中にやるのはマズイぞ!」

 東奥の取り巻きの一人が慌てて止めに入る。と――突然バラバラと何かが演習場の床に落ち、その場にいた全員の視線がそれに向く。

「…………………何だこりゃ?何でこんなもんが有るんだよ?」

 予想外の出来事で毒気が抜かれたのか東奥が呆れた声で言う。床に転がったのは、ダサい黒ブチ眼鏡だった。それも全く同じデザインの物が六個も。

 理瀞も、突然の事に茫然と自分の手元に目をやり――自分の迂闊さに気が付く。

「あら………………私とした事が。ヘタレさんの制服を持ったままでしたわ!」

 慶志朗の着替えを取りに行ったは良いが、渡す前に翼が戻った為、理瀞は制服を渡しそびれ今までずっと手に持ったままだった。動いた拍子に眼鏡がポケットからこぼれ落ちてしまったと言う訳だ。何となく、タイミングを失った二人は困った顔で眼鏡を見詰めていた。

「これは予備?道理で……だからあの時、眼鏡をして戻って来られたのですか」

「あのヘタレは何でこんなもん何個も持ってんだ?」

 毒気を抜かれた様に、その場の全員がガックリと肩を落とす。

「はぁ……くっだらねえ……何かアホらしくなった。ヤメだヤメ!」

 色々と面倒になった東奥はボリボリと頭を掻きながら、理瀞に背を向ける。

「行くぞテメエら!ったく……あのヘタレが絡むと調子が狂いやがる」

 周囲の生徒にそう言うと、東奥は演習場の奥へ皆を連れて立ち去る。

 理瀞はその後ろ姿を睨みつけていたが――ふと気が付き――

「……やっぱりコレは私が拾わなければならないのですね……」

 散乱したダサい眼鏡を眺め、ヤレヤレと頭を振った。


「ウフフフフ……あの翼君が、僕を認めてくれたなんて!」

 夜、慶志朗は趣味の日曜大工をしながら一人ニヤニヤしていた。

 《超人》との試合には一勝も出来ず、それどころか、試合開始からまだ一分も持ち堪えられないが、それでも自分が頑張っている事だけは翼も認めてくれた。

 何よりも、また翼と話が出来たのが嬉しく、プレハブの修理の時に有耶無耶の内に借りたままの《超人》用工具を鼻歌交じりに操作する。

 ハウスの外装は完成したが、まだまだ内装は満足が行くものでは無く、備え付けの棚や家具を作る為に、こうして時間を見つけては作業をするのが習慣となっている。

「それに……聞けば気絶した僕を何度も運んでくれたのは静野さんだっていうし。裏表の激しい人だと思っていたけれど、結構優しい人じゃないか」

 ほわん、と夢見る様な表情で木材にバコバコと釘を打ち込む。実際は、慶志朗は常に二人以上で運ばれていたので、理瀞だけが運んだ事は一度も無いのだが。

「オマケに美人でグラマーだもんねー。まぁ……男性には興味無いみたいなんだけれど……」

 生まれて一五年、親しく話した事のある女性は母親のみ、と言う寂しい人生を送って来た慶志朗には、女性に介抱されたり服を持ってきもらえたりしたのは初めてで、だからどうしたと言う訳ではないのだが、何となく理瀞の事が気になりだしている。

「あれ……?静野さんは翼君と良く話しているよね?と言う事は……やっぱり翼君が好きなんだよね……?でも静野さんは確かレ……」

 作業する腕を止め、「うーん?」と考え込む。普段の理瀞を見るに、男子生徒と話しているのを見た事が無い。代りに頻繁に女子生徒と話をしている。特に、小柄で可愛らしい女子生徒がお気に入りな様子だ。どう見ても男子を避けている。唯一の例外が翼だ。

 翼とは他の女子生徒と一緒に、良く話の輪に入っている。翼も理瀞と話しをするのは嫌いでは無いらしく、楽しそうに笑っているのを何度も見かけている。

「ユリのお姫様すら虜にするモテ野郎って事か、翼君……」

 実際、翼は女子には絶大な人気が在る様で、教室には翼目当ての女子が休み時間の度に訪れる。しかも同学年だけでなく、上級生や、中には中等科から抜け出してくる女子も居た。

 押しかけて来る女子を翼は何時も快く迎えて、彼女達と会話をしている。顔だけでなくそう言うマメさが女子から人気があるんだろうなぁ、と慶志朗は漠然と思う。と、

「こんな時間に何をしているのですか?」

 唐突に耳元で言われ、家志朗は飛び上らんばかりに驚く。

「にょわんっっっっ!びびびびびびびっくりしたぁ!驚かさないでよクレメンテさん!」

 何時の間にか、顔の真横に薄い被膜が浮かび上がっており、中からクレメンテが慶志朗の顔を覗き込んでいた。

「びっくりしたのはこっちです。こんな夜分に校舎内で、一体何をしているのですか?」

 クレメンテが不審な顔で言う。慶志朗が居たのは屋上ではなく教育棟の廊下だったからだ。

「いや、ほら。ここの壁のひび割れがどうも気になってさ。何か今日は気分も良いし、折角だからついでに修復しようと思ってね」

 誰も居ない時間じゃないと修復出来ないし、と屈託の無い顔で慶志朗が言うと、

「成程……それでこの様な時間に作業をしていたのですか」

 被膜の中のクレメンテは慶志朗の足元に置かれた用途不明の機材を見ながら頷く。

「私の身体のメンテナンスをしてくれていたと言うなら、止める理由は有りませんね。しかし貴方は私の管理する学生でも有ります。校舎内では夜一一時以降の作業は許可できません」

「うん、解ったよ。こんな作業は後三〇分も有れば終わるからね。一一時までなら余裕さ」

 意外と話せるクレメンテに、慶志朗は作業を再開し、予め組み上げていた木枠をセットし補修剤となるモルタルを練る。嬉しそうな様子の慶志朗を、クレメンテは暫く眺め、

「本当に楽しそうに作業しますね」

「こういう作業をしている時が一番落ち着くんだ。僕なりのストレス解消ってヤツだね」

「そうですか。変わった趣味ですね……所で慶志朗さん」

 慶志朗の手元を興味深そうに見つめていたクレメンテが視線を戻し、

「あちらの階段前のタイルにも欠損が認められるのですが」

「それは……直せって事?解ったよ。ここが終わったらソコも一緒に修復しちゃおう」

慶志朗は苦笑いしながらモルタルを盛り、表面が乾く間にクレメンテに言われた箇所を修復に向かう。結局この日は一一時ギリギリまで修復作業をさせられる事になった。


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