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ハロウィン単発企画「魔女と吸血鬼とブラウニー」

作者: う巻 a.k.a 毒男

パーチー開けの深夜テンションが入ってる状態で推敲したので、推敲と言うよりは改悪した可能性が有ります。

あと俺の性癖が色濃く出てますね。まぁ、良いです。こんな奴が書く物なんてこんなもんです笑



飽くまで手遊び程度


チェキ!

――――――




「trick or treat!」




「あ?」


 気怠げな声が返ってくる。不機嫌に眇められた紅い双眸にも臆する事無く、少女はあざとい程可愛らしく頬を膨らせた。


「ちょっとー、何その反応。返事として最悪なんですけど」


 綺麗に纏められた栗毛が揺れる。対照的に短くもボサッとした黒髪を片手で掻きつつ、赤瞳の男はその長身痩躯を壁に立てかけられた古めかしい

棺桶

に窮屈そうに詰めたまま、この日だけの定型句と共に無遠慮に開け放たれた棺の蓋裏に空いている方の手をやる。すかさず見咎める少女の頭には深めの三角帽が乗っていて―――


「あ、閉めちゃダメー…もう、お菓子かイタズラかって言ってるでしょ? ハロウィンハロウィン」

「知るか。何がハロウィンだよ……俺ら毎日ハロウィンみたいなもんだろうが」

「このご時世まで律儀に棺桶で寝てる吸血鬼なんてロキくらいだよ。カッコだって皆こう、今風にしてるし」

「コレが一番楽で理に適ってんだよ。他の連中がどうかは……つか何だお前、今日はヤケに魔女らしくしてんじゃねぇか」


 要は頭が堅い訳だが、ロキと呼ばれた青年はあからさまに顔をしかめて見せる。

 此方は期間限定の冗談でも何でもなく「魔女」と「吸血鬼」の日常的会話、その1シーンである。如何にも先述の帽子含め、普段は専ら「今風」のコーデに御執心な少女の服飾は所謂「魔女」のそれで。


「だーかーら、皆がそういう古き良き姿に堂々となれるのが今日なの」

「俺にしたら現在進行形だつってんだろ」

「私だって久々にちゃんと正式な魔女スタイルなんだから。どう?」


 程良く出た胸を張る。通常より短く仕立てられたスカートから伸びる健康的な脚が視界に映るにつけ「正式な」、と評するのは少し語弊が産まれそうだったが、其処は女性の特権だろうか。


「…室内だぞ。帽子取れよ」


 飽くまで素っ気なく応じて見せるも内心悪くない、というかイイね!を連打している。当の少女に面と向かって伝えられるだけの甲斐性が、彼には無かった。


「いやそこは可愛いって言う所でしょ。ノリ悪いなー」

「ノリでそんなの言えるクチかよ。俺が」

「あは。確かに」


 ぶっちゃけ目に入った瞬間からイイね!のついでに心臓も連打してるんだが。何とか低血圧で機嫌を損ねたっぽく振る舞おうと取り繕った雰囲気が出たのだろうか、魔女は別段謗るでもなくクスクス笑い、くるりと体を回す。

 布が空気で持ち上がり、しなやかな下肢が大胆に覗いた。言うてちょっと捲れた程度なんだけど、ほら、まぁ見ると意識しちゃうじゃん。そういうの


「でも、悪くはないでしょ?」


 擽るような声音に若干慌てて顔を逸らす。完全に目線を奪われていた。女の何チャラと言うヤツなのか、彼女はこういう事に鋭い節が有る。


「ロキ? ねぇってば…」


 出方に迷い黙する男に暫し観察するような視線を送ってから、スカートの裾を摘まんでお辞儀するようなポーズを取る。必然的に生地が摺り上がり、分かってやってるのか再びの太もも攻撃


「こうかは ばつぐんだ!」

「え?」

「いや、その……だぁあもう、わぁった。分かったから。似合ってるよ…うん、似合ってる似合ってる」

「何この言わせた感」


 今度は形の良い眉を寄せジト目を作る。コロコロ変わる表情は「ま、良かった」と繋いでから


「こうやってオメカシして来たの、ロキの為なんだから」

「………どういう事だ、そりゃ」


 気になる言い草に思わず食いつく。立てた人差し指を顎に沿わせながら、魔女は奔放な笑みを浮かべた。


「だって、ロキいっつも『ドラキュラ』の格好でしょ?」

「吸血鬼の正装と何度言ったら」

「で、正直その所為で周りから浮いてるじゃん。だから今日は私もコスプレしてさ、恥ずかしいの軽減出来るかなーって」

「別に恥ずかしい訳じゃねぇからな? つかコスプレて……お前…」


 二、三回メンタル面を抉っては来たが好意と受け取る事にした。実際眼福なので文句を垂れる言われも無い。


「いや、まぁ良いわ……何か悪かったな、気ィ遣わせて」

「感謝してよね」

「あぁ。じゃ俺はコレで」


 良い物も見れた事だし、そろそろ二度寝に入ろうかと床である棺桶の蓋に改めて手を掛け

かけた所で冷ややかな空気に思わず動きを止める。先とは明らかに異なる次元の不快感を少女が示していた。鳶色の瞳を細め、口元には一切感情を伴わない笑みが浮かぶ。脚先を包むブーツの踵が小刻みに音を立てる。恐い。


「…え、何言ってるの? 何で私がこんな辺鄙な場所まで来て、服見せただけでサヨナラしなきゃいけないのよ」

「ヘンピとか言うな。由緒有る城なんだぞ」

「遠いのよ…バスも通ってないじゃない」

「何の為の箒だよ」

「床を掃く為に決まってるじゃん。アレで飛ぶのスッゴい疲れるんだからね、色々擦れて痛いし」


 魔女の内実。何処が擦れるかは聞かないでおこう。取り敢えず相手が大分お怒りらしい事に気付いた男は若干わたわたしながら言葉を紡ぐ。


「俺にどうしろってんだよ」

「どう……ハァ…私はさっきから散々言ってるんだけどな」

「え?」


 片手を腰に当てがい、もう一方をズイと差し出す。わざわざ威張るような態度で幾度目かの宣告を落とした。


「trick or treat」

「……あぁ」


 吸血鬼、と一概に言っても夜な夜な血を求め徘徊している訳ではない。最近はそれこそ来客でも無ければ寝て過ごすヒッキー、もとい棺生活の為日付感覚すら曖昧な身で


「『お菓子』つってもなぁ…アレか? チョコとかケーキとか」

「そそ」

「その為に来たってか。んなもん俺に期待すんなよ」

「うん、してないよ」


「はい?」

「だからお菓子なんて期待してないんだって」

「え、いやお前……え?」


 少女が企み有り気に笑い、不意に男との距離を詰める。一体彼女は何種類笑顔を持っているのだろう。或いは、可憐な魔女の破顔を逐一色を変えて映すは


「私が楽しみにしてたのは…」


 血のように赤い、眼の方。

 寝床から脱する間も無く、認識が追い付いた頃にはその娘の顔は至近と言える距離まで寄せられていて。近くでまじまじ見ると可愛い系ってより割と綺麗な感じですね。言うてる場合か


「イタズラの方だから。なんてね」


 同時に耳元で、やたら甘やかな音色が囁かれる。「猫撫で」という表現がぴったりな、嫌に鼓膜に引っかかる湿り気を纏っていた声が、無防備な彼の反応を更に遅らせる。


「な…にを」

「お菓子、持ってないんでしょ? だったらナニされても文句言わないの。常識だよ」

「いや、だからって」

「はーい、口応えしない……じゃ」


イタズラ、開始――――


 反射的に目を閉じた数秒後、思いっ切り手を引っ張られ寝床から降ろし出される。

 予期しない衝撃。前のめりに体勢を崩す形でほつれた足を、先程は魅惑の対象であった彼女の華奢な脚が容赦なく蹴たぐって


「………ッ」


 支えを求め、本能から相手に伸ばした腕も華麗に身を翻され空を切る。結果かなり無様な…具体的に言うと顔面を床にスタンプする如く、俺はズッこけた。


「っで…ぉま、マジか…」

「うーん、リアクションがイマイチ」

「理不尽だ…」


 呻きのような抗議の呟きにも悪びれない様子で肩を竦める。伏せに甘んじるこの姿勢で見上げるとある意味ご褒美な光景になってしまうので、其方に目が行くまいと注意しつつ体を起こす。


「イタズラだもーん。いい加減棺桶から出て来なよ? 偶には外の空気吸った方が良いって」

「それやる前に言えよ……顔いってぇ」


 気遣いなのか何なのか分からない口振りにはブツクサが止まらないが、絹のような栗色が目の端にチラついた次の瞬間には掌を包む柔らかな熱に問答無用で黙らされている。誰かと手を繋ぐというのも成る程、彼の快適な寝台の中では満足にこなせない行為だ。戸惑いの視線を打って変わって優しげな、少しだけ寂しそうな微笑が迎えた。


「ねぇ、折角だしさ。ちょっとお出掛けしない? 遊ぼうよ」

「遊ぶ…人間の街でか? んなリスキーな……止めとけって。バレたらロクな事になんねぇぞ」

「何時もはね。今日は大丈夫」


 そのまま窓辺まで誘導される。男のベッドはさる古城の塔最上部、所々に丸い覗き窓が配された石積みの壁に側立てられていた。普段は滅多に気に留める事も無い下界、細めた眼下にはポツポツと灯りが点って、遠目ながら視た限り行き交う人々は皆


比較的ヒトに近い己の容貌よりも、むしろ異形な姿を成していて。


「ね?」

「…仮装か」

「凄いよねー。仮装したらお菓子貰えるイベントなんだって」

「? ハロウィンってそんなんだっけか。いい大人だろ、あれ」

「さぁ…前とは変わったんじゃない? 人がそう言ったらそうなんだよ」

「楽しけり良いってか」

「そんなもんでしょ。お祭りだし」


 魔女もとい小悪魔がまた、笑う。否、やはり魔女だ。こうして外堀埋めと強引なゴリ押しの波状戦略で獲物を絡め捕るやり方は、魔法の徒の狡猾さであり、美徳でもある。


「……分ァったよ。俺も一緒に行く」


 どの道人の沢山居る場に単独で行かせる訳にはいかない。存外静かな諾に拍子抜けしたような少女と硝子越しの空の間に視線を迷わせながら、二人は何気に手を繋いだ状態を維持していて。


「やった…結局無理矢理みたいになっちゃったね。あはは」

「いや」


 畳み掛けるなら今だろう。無造作に突っ込んだズボンのポケットから小さく切り整えられ、包装されたブラウニーを取り出す。角切りのドライフルーツをあしらった其は酷評を受けたリアクションの際も潰さぬよう、頭の何処かで注意していたくらいには大切なコンテンツで。


「お前だけだからさ。わざわざ会いに来てくれんの……ほらよ」

「…お菓子……用意してたんだ」

「市販のヤツだけどな。渡す前にイタズラされたし……遊び、行くんだろ?」

「…うん」


 事も無げに首を傾げれば、ほんのり色が増した頬を隠す俯き気味の首肯が返ってくる。やっべ超可愛い。



 夜の帳が降りる。


 久々の城外は寒いだろうか、とか考えながら闇の中に逍遥していた意識を彼女に預け、男はハロウィンに興じる腹を括った。




「でもふぁ(でもさ)」

「食いながら喋るな……んだよ」

「む、ぅく……ん、お菓子持ってたんなら、早くくれたら良かったじゃん。私、何回もトリートトリート言ってたのに」

「…何でだろうな」


 実際、眠れない時に口を紛らわす用途で偶然持ってただけだったり。




 イタズラ待ちの部分も有ったり無かったり。



 はい、Happy Halloween。



―――――


くぅ疲

小説って難しいし面倒ですよね。楽しいから良いようなものの…

何か勢いだけで書いた割にはらしくない甘い(?)ノリになりました。一作目にしてらしさもクソもない訳ですが、普段はもっとこう……まぁ直ぐには浮かびませんけど。

むしろ詩の方が素っぽいのかな(ステマ)。


何か自分で言うと激臭ですが、今読み返したら続編有る風ですよね。多分熱が湧かないけど。有るとしたら色々スッ飛ばしてR18版かな(爆)

来年のハロウィン……いや、止めときましょう笑



この瞬間、この場で、この文章を共有出来た貴方と、渋谷のホコ天でパーリーピーポーしてる人と、ハロウィンを楽しめる世界中の人々へ


リア充爆発しろ!

HAPPY Halloween!(情緒不安定)


では

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