1話 前兆
「ヒロさん、飯買ってきましたよー!」
そんな学校の屋上に響き渡るような大声でボンタン姿の男、愚意弘吉は目を覚ます。
「ん、ありがとな」
「メロンパンとミルクティーですよね。あとついでにポッキーも買っておきましたよ」
「気が利くな拓也は、今ちょうどポッキー切らしててさ」
弘吉はそう言い後輩の拓也からコンビニの袋を受け取る。
「だってヒロさん今日一緒に学校来るとき昨日の火事はポッキーが無かったから助けに行けなかったんだって悔しそうに言ってたじゃないですか。まめなヒロさんがポッキー切らすだなんて珍しいですね」
「ああ、最近こういうことが多いんだ。俺の行きつけのコンビニにポッキーを買いに行くとなぜかいつも売り切れているんだ」
「おかしいですね・・・最近ポッキーが売り切れてるところなんて見たこと無いですよ。まるで誰かがヒロさんにポッキーを買わせないようにしてるとしか・・・」
拓也が言葉を言い終える前に弘吉の電話が鳴り始める。
「あ、悪い拓也ちょっと電話出てもいいか?」
「あ、はい、どうぞそろそろ自分は戻りますね」
そう言い拓也は屋上を後にし自らの教室へと戻っていく。その姿を見送り弘吉は着信の相手、自らの父親からの着信に出る。
「父さんか、どうしたんだこんな時間に?」
「弘吉、お前はどんなことがあっても決してボンタンを離さないと誓えるか?」
弘吉は突然の父からの言葉に驚きつつもこう答えた
「当たり前だろ、俺はいつもボンタンとともにある」
「そうか、それが聞けたなら俺も安心だな。」
「いったい父さんは何の話をしてるんだよ・・・」
「いいか!弘吉!必ず勝ち残れ・・・」
最後にそう言い残し電話はぷつりと切れてしまう。
「なんなんだよ!結局なんの話なんだよ!」
そう言った瞬間屋上のドアが開き教室へと戻ったはずの拓也が息を切らして戻ってきた。
「ど、どうしたんだ拓也そんなにあわてて」
「た、 大変なんです!とりあえず一緒に教室まで来てください!」
「あ、ああ」
拓也の勢いに押され弘吉は理由も聞けないまま屋上を後にするのだった・・・