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91,Q大丈夫ですか?A大丈夫なわけないですよね(泣)

 魔獣が私をガン見してるでござります。

 怖いです。過呼吸一歩手前です。

 コガネ君が魔力を当て続けてくれてるからまだマシだけど、やっぱり息はしづらいな……


「コガネ君、魔力に当てられて息がしづらくなるとかあるんだね」

「ああ。強く当てられすぎるとな」


 コガネ君にくっついて魔獣の目線から逃れようとしつつ、気を紛らわせるために話題を振る。

 コガネ君はそれを分かっているのか魔力に当てられた時の症状を詳しく教えてくれた。


「魔力に当てられた時は、大体気持ち悪くなったりするだけだが、あまりに強い魔力に当てられると呼吸が出来なくなったりもするんだ。魔王の魔力とかは当てられるだけで死んだりするぞ」

「こわっ」


 流石かよ魔王さん……

 ……そういえば、ケイさんたちはそんな魔王さんと戦うのか。

 すげぇ……頑張ってください……


「それはそうと主、戻ってきたみたいだぞ」

「ん?何が……って、あ!見えた!」


 結界の外を飛んでいるカゴが。

 まあ、実際にカゴが飛んでいるわけじゃないんだけどね。

 サクラとモエギがカゴを持って戻ってきたのだ。


「ピィ……ピッピー……(ふあ……疲れた……)」

「チュン……チュッチュン……(流石に……重かった……)」


 サクラが静かになるって、そうとう疲れたんだね。

 お疲れ様です。


「ありがとう、サクラ、モエギ」

「ピィ!」「チュン」


 カゴの中には20本ほどの魔力ポーションが入っていた。

 重かっただろうな……と思ってカゴを受け取ると、中にメモが入っていた。


「……うん?」

「どうした主」

「なんか入ってる」


 コガネ君にカゴを渡してメモを開くと、ヒエンさんの字で

 〈お代は要らないわ。リーダーにもそう言ってちょうだいな〉

 と書いてあった。

 ……ヒエンさんイケメン!!


「コガネ君、リーダーさんたちに渡してくれる?」

「ああ。……主は大丈夫か?」

「チュン、チュン(僕が魔力を当てます)」

「……ああ。そうだな。頼む」

「モエギそんなこと出来たの?」

「チュン」


 モエギが優秀だ。

 流石は私のお供。

 私がダメダメだからみんなが強くなる☆


「主、何かあったらすぐに呼んでくれ」

「はーい」

「ピィッピ!!」

「チュン」

「うん。ありがとう」


 コガネ君が私から離れると、急に息が出来なくなった。

 酸素を求めるように胸のあたりを手で押さえる。

 やっばい。頭の中真っ白になってきた。


「チュン!」

「………………カハッ」


 モエギが珍しく大きな声を出したと思ったら、呼吸が楽になった。

 そのまま咳き込む。

 まって、酸素多すぎだよモエギ君。もう大丈夫だから。


「チュン?」

「うん。ありがと」

「チュン」


 コガネ君の魔力のように全身を包むような安心感はないが、なぜか落ち着く優しい魔力だった。

 これがモエギの魔力なのか。

 今までにも魔力波で確認したことはあったが、こんな風にちゃんと感じることはなかったな。

 うん。なんかモエギって感じだ。


 モエギの魔力に身を委ね、ゆっくりと目を閉じる。

 すると、不思議な光景が見えた。

 ……いや、見えたというより、脳内に映し出された。

 …………これもなんか違う気がする。

 うーん……まあ、とにかく全く見覚えのない風景が見えてるんですよ。





 1人の女性が草原に座っていた。

 花が咲き、心地よい風が吹く草原だ。

 白いワンピースを着た女性は、美しく微笑みながら少し離れたところに居る男性を眺めている。

 男性には獣人の証ともいえる耳と尻尾があった。


 イヌ科のものだと思われる耳をピンと立て、何かを追いかけまわしていた男性は、一際高く跳んだかと思うと、勢いそのまま女性の元に走ってきた。


「フィアナ、フィアナ!見てくれ!捕まえたぞ!」

「ええ。見てたわ」

「これが幻想蝶か……綺麗だな」

「そうね。とっても綺麗」


 男性は手に持ったアミを女性に見せ、楽しそうに笑った。

 アミの中には光り輝く1匹の蝶が入っている。

 2人はこの蝶を捕まえるためにこの草原に来ていたのだ。


 2人はしばらく蝶を眺め、それをカゴに入れて荷物の中にしまった。

 そして男性が女性を背負って歩き出す。


「この蝶がいれば、材料は揃うんだよな?」

「ええ。他のものは集め終わってるわ」


 女性はそう言って髪につけた花に手をやった。

 花は美しいが、どこか怪しい雰囲気だった。

 その花は、なぜか女性と似ているように感じた。


「この蝶がいればフィアナの足も動くようになるのか?」

「さあ、どうかしら」

「分からないのか?」

「ええ。誰にも分からないの」


 男性は女性の言葉に首を傾げたが、自分には難しすぎる話だと判断してそれ以上は聞かなかった。





 ……え、なに今の。

 どこですかあの草原は。

 謎だわー。魔力に当てられすぎて何かが見える……とかあるのかな?


「どうした、主」

「あ、コガネ君。今ね、なんか謎の光景が見えた」

「……何が見えた?」

「草原」


 私の言葉に、コガネ君は考え込んでしまった。

 ……変なこと言ったからかな?


「主、それはもしかしたらあの魔獣の記憶かもしれない」

「ふぇ?」

「主は魔力が特殊だし、魔獣の魔力にも当たりまくったからな。見えても不思議……では、ないぞ。うん」


 コガネ君、最後自分に言い聞かせてなかったかい?

 絶対言いながら不思議だって思ったよね?

 そんなことも分からないほど馬鹿ではないんだよ?


「もう少ししたらモクランを呼ぼう」

「え、でもなんかやってるんじゃなかったっけ?」

「もう少しで作業も終わるんだ」

「あ、そうなんだ」


 モクランさん何やってたんだっけ……えーっと……落とし穴?

 罠ってそんな感じなんだ~と思ったことだけ覚えてる。


「……終わったみたいだな。呼んでこよう」

「はーい」


 コガネ君がモクランさんを呼びに行き、サクラはそれについて行った。

 モエギは私に魔力を当て続けてくれている。

 わあ~……あの魔獣また炎飛ばしてきたよ。

 もし本当にさっき見た記憶があの魔獣のものなら、綺麗な女の人があんな風になった原因が謎すぎるんだけど……


「なにが見えたって?」

「あ、モクランさん」

「主、さっき見えたっていう光景、詳しく教えてくれ」

「うん」


 私のなさすぎる語彙力でどこまで伝わるかは謎だが、とりあえず全部話したよ。

 幸いコガネ君とモクランさんの理解能力が高かったからちゃんと伝わったよ。


「なるほどね……飛行型であの魔力と属性……多分その女の人があれだね」

「そうなんですか?」

「うん。あれは足が動かないみたいだし」

「え、なんで分かるんですか?」

「あれだよ」


 モクランさんはそう言って後ろの魔法を指さした。

 あれはモクランさんが発動させてた謎の魔法……


「あの魔法は対象1体の魔力の移動とか動きとかその他諸々記録と集計をする魔法なんだよ」

「何それすげぇ……」

「便利だな」


 モクランさんって戦闘する人かと思ってたけどめっちゃ優秀なサポートだったんだ……

 でも戦闘も出来るんだよな……つおい……


「とにかく、今はあれを捕まえないとね」

「捕まえるんですか?」

「うん。物理攻撃は出来ないみたいだから、弱らせて拘束して魔封じかけて研究所行きかな」

「こわっ」


 何ですか研究所って……

 絶対怖い施設だ……なにか黒いことが行われているに違いない……

 そんなことを考えて1人震えていると、アヤメさんが歩いてきた。


「モクラン、始めるわよ」

「分かった。すぐ行くよ」


 モクランさんは私の頭をポスポスと叩いて罠のある場所に行ってしまった。

 とりあえずコガネ君にくっついておく。

 やっぱりここが落ち着くね。


 少しすると、魔獣が吠えて結界の外を狙い始めた。

 ジェードさんが攻撃したのだろう。

 ……そういえばあの魔獣飛んでるけど落とし穴効くのかな?


 そんなことを思ったのだが、魔獣はクリソベリルが集合している場所に突っ込んだと思ったら急に地面に伏した。

 何事かと思ったら、モクランさんが魔法で地面に縫い付けたらしい。

 そして、その場所は落とし穴の上だ。


 魔獣が地面に縫い付けられると同時に地面が崩れ、魔獣をさらに下に落とす。

 魔獣は出ようともがくが、暴れれば暴れるほど周りの地面が崩れ身体が埋まっていく。

 そんな魔獣に向けて、2人の魔力こえが響く。


「大いなる水の神よ!」

「大いなる大地の精霊よ……」


 ツルバミさんとユリシアちゃんだ。

 ツルバミさんはどこか楽しそうに、ユリシアちゃんは珍しくパッチリと目を開いてそれぞれの演唱を完了させる。


「今ここに、汝の力を示したまえ!」

「我が魔力と融合し、我に宿らん……!」


 ツルバミさんの唱えた魔法は先ほどと同じもの、ユリシアちゃんは別のものだ。

 同時に発動した2つの魔法は、今度は混ざり合うことなくそれぞれの役割を全うした。

 2つの魔法が消えた時、モクランさんの演唱が完了する。


「我が名を持ちて、汝が魔力を封印す」


 モクランさんの魔法が発動すると共に、魔獣を光が包んだ。

 それと同時に私が感じていた息苦しさは消え去り、魔獣はモクランさんが取り出した水晶の中に納まったのだった。

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