79,Q今日は?Aガルダの収穫祭です!
朝、まだ早い時間。
コガネちゃんはウキウキしながら私を揺さぶっている。
起きたから。分かったから。
「主、主」
「うん、起きた。起きたから揺すぶるのやめよう」
「ピィッピッピィ♪」
「はいはい」
「チュン」
「はいな」
今日はキマイラの収穫祭からちょうど1か月の日。
ガルダの収穫祭の日なのだ。
1週間前からウキウキしていた我がお供ちゃんズは朝早くからこうしてはしゃいでいる。
まだ6時だよ?みんな元気すぎじゃないかな?
「私は着替えるから、ヒエンさんを起こしてきなよ」
「うん。サクラ、モエギ、行くよ」
「ピィ!」「チュン」
お供たちが部屋から出ると、急に静かになった。
……なんだ、ちょっと寂しいぞ?
早く着替えて追いかけよう。
そんなわけで早着替えのお時間です。
こっちの世界に来てからやってなかったけど、まだできるかな?
日本にいたときは毎日のようにお世話になってた技術なんだが……
うん。ちょっと遅くなったかな。
まあ、こっちに来てからやってなかったしね。
仕方ないか。
「アオイちゃーん」
「あ、ヒエンさん。おはよーございます」
「おはよう。ふぁぁ……」
「眠そう……」
「まあね。コガネちゃんたちに起こされたのよ。元気ね~あの子たち」
「なんかすいません」
コガネちゃんたちがヒエンさんのところに行ったのは私がそう言ったからである。
さすがに申し訳ない。
ヒエンさんは笑って許してくれた。
「さて、と。朝ご飯作りましょうか」
「はーい」
ちなみに今日はエキナセアもお休みだ。
ワックスフラワーはどうなんだろ?
装飾品店だと、稼ぎ時ってことになるのかな?
国外からも人が集まるだろうし……
「主、どうかした?」
「ううん、何でもない」
ぼんやりと考えていたら、いつの間にかコガネちゃんが横にいた。
コガネちゃんはふわふわした白いワンピースドレスに身を包み、髪の毛をハーフアップにしている。
超かわいい。オールバックコガネ君も好きだけど、ドレスアップコガネちゃんも好きだな。
ちなみに髪留めはワックスフラワーで買ったいつものやつだ。
「さて、アオイちゃん。髪の毛いじるわよ」
「ご飯は!?」
「あとで」
コガネちゃんを眺めていたら、背後にヒエンさんが立っていた。
ビックリした……
しかもご飯後回しにされた。
お腹空いたのに……
「あら、アオイちゃんリボンが縦になってるわね。ちょっと動かないでね」
「はーい」
ヒエンさんは慣れた手つきで私の腰のリボンを結びなおす。
後ろだったからね。失敗しても仕方ないね。
いや、着慣れない服なのに早着替えしようとしたのが間違いだったんだな。
「はい、座って」
「はーい。……ヒエンさん、器用」
「まあ、薬作ってるしね」
「それ関係ある!?」
「上位の薬作ってると関係してくるのよ」
なるほど。つまり私に作れない薬を作るときですな。
この「上位」って分け方よくわかんないんだよね。
前にヒエンさんが説明してくれたことがあったけど、全然理解出来なかった。
麻痺毒は下位だけど即死毒は上位……とか、覚えてられない。
「はい、できたわよ」
「早くない!?」
「あら、そう?」
「しかもすごい!!これどうなってんの」
私の短い考え事の時間だけで髪の毛のセットを終わらせたヒエンさんは、満足気に頷いてイスを引いた。
……すごいなあ。なんかすごすぎてよくわかんなくなってきた。
「ふふ。可愛いでしょ」
「はい……」
確かに可愛い。でも可愛いよりすごいの方が強い。
編み込んであるのか巻いてあるのか固めてあるのか分からないが、とにかくすごい。
「さあ、朝ご飯食べちゃいましょ」
「はーい。……今日の朝ご飯は?」
「サンドイッチよ」
「あー……こないだのハムですか」
「いい加減使い切りたかったのよ」
この世界に消費期限なんて親切な物はない。
なのでなにがいつまで食べられるかは個人の判断なのだが、ヒエンさんがこの読みを誤ったことはない。
まあ、最悪食べてみてダメだったら薬作ればいいんだけどね。
薬屋って、割と最強な気がする。
レベル上げるのにモンスター倒す必要もないし。
「主、主」
「お?どうしたのコガネちゃん」
「ピィッ!!ピッピ!」
「え?もう?」
祭り始まったって、準備じゃなくて?
早くない?まだ7時だよ?
「どうかした?」
「ヒエンさん、祭りってこの時間からやってるの?」
「ああ、お店は開いてるわよ。1,2店だけどね」
「まだ7時なのに……」
「準備してる人がターゲットなのよ。売ってるのは飲み物とかね」
「あー……なるほど」
それなら朝早くからやってても納得だな。
むしろ早くから始めないと意味がない。
「そういえば、何時から行くの?」
「そうねぇ……」
ヒエンさんは顎に手を当てて何かを考え始める。
小声でなにか呟いているが、よく聞こえない。
……クリソベリルだけ聞こえた。
「多分11時くらいね」
「多分?」
「ええ。クリソベリルが来るのよ。お祭り、一緒に行きたいんですって」
「ジェード?」
「来るわよ」
コガネちゃん、すごく嬉しそう。
可愛いな~。でもなんかちょっと寂しいな~。
コガネちゃん取られた気分。
「それとアオイちゃん」
「なーに?ヒエンさん」
「ダンス、頑張って」
「……え?」
「ガルダのお祭りって1日だから、夕方からダンスパーティーになるのよ」
「え、いや、だからと言って……」
「まあ、モクラン君あたりが付き合ってくれると思うから」
「ヒエンさん、話を……」
「クリソベリルに囲まれてればほかの人は声かけられないだろうし」
「ヒ、ヒエンさーん?」
「数曲だけ踊ってみなさいな」
そういってヒエンさんは準備のため2階に上がっていった。
今日は特に話を聞いてくれなかったな……
そんなに躍らせたいんですかね……
ヒエンさんに限って私に恥をかかせたいとかはないと思うが……
「主、頑張って」
「助けてはくれないのね……」
「主が踊るところ、見たい」
そういって目をキラキラさせるコガネちゃんは、まるで天使のようだった。
……ああもう!
踊るよ!!踊ればいいんだろ!!
頑張るよ!!踊れないけど!!
「チュン、チュッチュン」
「大丈夫……頑張るよ……」
モエギが心配してくれた。
お前は本当にいい子だね……
モエギで和んでいたら、サクラが急に「お祭り見てくる!」と外へ飛び出した。
ちょ、おま!!
「モエギ、追っかけて!」
「チュン」
ほんっとうにモエギはいい子だなあ!!
サクラは後で叱っておこう。
そして「おはしも」を教え込もう。
「お」ちついて行動する
「は」しゃぎ過ぎない
「し」らない場所は前を見て飛ぶ
「も」えぎと行く
……これ今度紙に書いて部屋に張っておこう。
最後は戻ってくる、でもいいな。
「主、クリソベリル来たよ」
「え?もう?」
現在時刻は8時。
いつの間に時間が……
時計を見てびっくりしていると、扉がバアン!!と開いた。
……この開け方は……
「アーオイちゃーん!コーガネちゃーん!」
「わあ、やっぱりアヤメさんだ」
「アヤメ、もう少し静かに開けられないの?」
「あ、モクランさん。おはよーございます」
クリソベリルのいつもの方々が店内に入ってきた。
そう、実はリビングではなくカウンターでのんびりしていたのだ!(謎行動)
「おはようアオイちゃん」
「おはよーございます、アヤメさん」
「いつも天使のようだけど、今日は一段と可愛いわね。これが不特定多数の目に晒されるなんて……大丈夫よ。私が守るわ!」
「アヤメ、落ち着いて。その子驚いて固まっちゃってるから」
アヤメさん、最近会ってなかったからなぁ……
ストレス溜まってたのかなぁ……
「ジェード」
「ああ、コガネ。久しぶり」
「うん。久しぶり」
コガネちゃんはジェードさんと話せて嬉しそうだ。
……やっぱり犬尻尾が見える……
コガネちゃんキツネなのに……
あ、でもキツネってイヌ科か。
「あら、みんな来たのね」
「よう、ヒエン。めかしこんでるな」
「そういうリーダーも……って、いつも通りね。お祭りの日くらいなにかすればいいのに」
ドレスアップされたヒエンさんはどこのご令嬢でしょうか?な感じだった。
見とれてしまった……
「とりあえず、みんな座りなさいな。イス足りないからリビングから持ってきましょ」
ヒエンさんが手をパンと叩いて言うと、急に静かになってリーダーさんとジェードさん、コーラルさん以外が席に着いた。
3人はリビングからイスを持ってきて座り、なんか会議っぽいことが始まった。
……どうしよう。話の流れについていけない。
どうも皆さまこんばんは。
瓶覗です。
こないだの土曜に更新したのは幕間だったので、珍しく水曜に現れてみました。




