67,Q賑やかですね。Aそうですね。
毒消し制作に初めて成功してから1週間が経った。
今日の午前中に作った毒消しもちゃんと成功したし、ヒエンさんからも「毒消しは習得したわね」と言われた。
で、今は店番しながら筆記の対策をしている。
コガネちゃんはすごく楽しそうに店の前を掃除している。
「……あれ?毒消し草ってそこら中に自生してるわけじゃないんだ?」
「ええ。毒消し草は薄暗い森の中とか、木陰とか、とにかく日陰に生えてるわ。日の当たるところでは見かけないわね」
「なるほど、陰生植物か」
ヒエンさんは横から手を伸ばして毒消し草の自生場所について答えよ、と書かれた紙を取る。
「……あら、答え書いてないのね」
「うん。書いてなかったよ」
「イセルア……手ぇ抜いたわね……」
ヒエンさんが怖い顔をする。
イセルアとは、ヒエンさんが過去の出題問題なんかをまとめるように頼んでいる人だ。
初級の時もお世話になった。
「まあまあ……正解はヒエンさんが分かるんだから……」
「それはそうだけど……あいつ暇人のくせに……」
ヒエンさんはそう言って頬杖をつく。
そして紙を光に透かした。
「……やっぱりあいつ暇人だわ」
「どうかしたの?」
「これ、光にかざすと答えが見えるようになってるみたい」
「え、なにそれすごい……」
もしかして本当に暇人なのかな?
イセルアさんって。
そんな失礼な想像をしていると、コガネちゃんが店に入ってきた。
「あ、お疲れ様〜」
「主、店主、帰ってきたみたいだよ」
「え?誰が?」
私の質問に答えたのはコガネちゃんではなく、バァァン!!と音を立てて開かれた扉と、入ってきた人だった。
「アーオイちゃーん!コーガネちゃーん!!」
「わあ、ビックリした……って、アヤメさんだ」
入ってきたのはクリソベリルのアヤメさんだった。
なんか久々な気がする。
「久しぶりね〜♡最後に会ったのはキマイラだから、10日ぶりくらいかしら」
「アヤメ、10日は久しぶりでもないでしょ」
いつも通り気付いたらカウンターに座っていたアヤメさんにツッコミを入れながらモクランさんが入ってくる。
それにしても、10日しか経ってなかったのか……
「でも久しぶりな感じはしますね。いつ帰ってきたんですか?」
「さっきだよ。帰還報告も何もしてないのにアヤメがこっち来ちゃってさ」
「それは……なんかすいません」
「君が謝る事じゃないでしょ」
モクランさんはそう言って、何かを差し出してくる。
小さな包みのようだ。
「モクランさん、これは?」
「お土産。第4大陸の特産品だって」
「へぇ〜……ありがとうございます」
後で開けてみよう。
そんなことを考えていると、ヒエンさんが楽しそうに言った。
「相変わらず賑やかね。クリソベリルは」
「あ、すいませんハーブさん」
「いえいえ。お陰で楽しいわ」
ヒエンさんはすごく楽しそうに笑っている。
……そういえば、アヤメさんは可愛いものが好きらしいけどヒエンさんはどういう判定になるんだろう?
「綺麗」のカテゴリーなのかな?
「はあ……やっぱりハーブさんは笑った顔が可愛らしいわ……」
なるほど。笑った顔は「可愛い」判定なんだね。
多分、普段は綺麗判定なんだろう。
アヤメさんの守備範囲の広さ……
「そういえば、アオイちゃん。前髪がずいぶんと神秘的になったわね……」
「あ、これ、この前買ったんです」
「すごく良く似合ってるわ」
「ありがとうございます」
そんな会話をしていると、入口の扉が開いた。
「アヤメ、モクラン、報告行かないの?」
「あ、ジェード」
扉から顔を出したジェードさんを見て、コガネちゃんが立ち上がる。
嬉しそうだね……可愛い……
「ああ、コガネ。ちょっと久しぶりかな?」
「うん。久しぶり」
なんだろう……コガネちゃんに犬の尻尾が見える……
全力で振られている尻尾が見える……
「とりあえず帰還報告に行ったほうがいいんじゃないかしら?また今度遊びにいらっしゃいな」
ヒエンさんがそう言って微笑むと、モクランさんは頷いて立ち上がった。
モクランさんはヒエンさんに頭を下げて、アヤメさんの首根っこを掴む。
「さてと。行くよ、アヤメ」
「え、嫌よ。久々のアオイちゃん……ちょっと、モクラン、聞いてる?ああ、引っ張らないで、歩く、歩くから」
あのアヤメさんが諦めて帰っていった。
モクランさん、強い。
「あ、そうだ。アオイちゃん」
「なーに?ヒエンさん」
「クリソベリルから注文を受けてた薬が明日完成するのよ。だから明日、クリソベリルの拠点まで届けに行ってくれない?」
「いいけど……朝出て夕方帰ってくるとかになりかねないよ?」
「それでいいわよ」
今度遊びに来いと言っておいて自分から遊びに行くスタイル。
まあ、来いって言ったのはヒエンさんで行くのは私だけど。
考えてみたらクリソベリルの拠点に行くのって初めてだな。
ちょっと楽しみ。
「あ、そうだ……」
モクランさんから貰ったお土産、開けてみよう。
第4大陸の特産品って言ってたけど、なんだろう?
手のひらサイズの包みを開ける。すると中には箱が。
包装紙だったのか、これ。
「箱の中身はなんだろな」
呟きつつ箱を開ける。
出てきたのは……指輪?
「……うん?魔力的な何かが発せられてる気が……」
うーん……分からん。
隣に居るヒエンさんに聞こうと思ったら、いつの間にやら消えていた。
相変わらず音もなく突然消える人だな……
「コガネちゃーん」
「なに?主」
「これ、魔力的な何かが宿ってる気がするだけど……」
「あ、これ魔導器だね」
「魔導器?」
「魔法を使う時に使う道具。魔道具みたいな物だよ」
「ふーん……でも私、魔法使えないよ?」
「多分使えるようになると思うよ」
「え、本当に?」
「うん」
マジか。私、魔法使えるようになんのか。
え、やりたい。魔法使いたい。
「誰かに習えばいいと思うんだけど……知り合いの魔法使いか……」
「コガネちゃんじゃダメなの?」
「私が使う魔法と人間が使う魔法は仕組みが違うからダメなんだ。……あ、モクランさんに習えばいいか」
「へぇ〜魔法の仕組みが……って、モクランさんは無理でしょ。忙しいでしょ」
「案外大丈夫かもよ?」
「うーん……無理だと思うけどな……」
でも指輪くれたって事は魔法使えるようになれって事……なのかな?
だとしたら教えて……は、くれるだろうな。
多分頼めば教えてくれる。
モクランさんなんだかんだ優しいし。
「……頼んで……みようかな……」
忙しそうだったら他の人に頼もう。
……ヒエンさんは魔法使えないのかな?
錬金術は出来ないって言ってたけど、魔法は使えそうだよな……
というかヒエンさんはなんでも出来そうだもんな……
後で聞いてみよう。
「さて。私は外掃除してくるね」
「はーい。行ってらっしゃい……まだ終わって無かったんだ」
「うん。もう少し」
コガネちゃんは綺麗好きなのかな?
それとも単に外が好きなのかな?
今日天気良いし、外に居たいのかな?
「……ま、なんでもいいか」
考えても仕方ないしね。
今はとりあえず、この筆記対策のプリントを読んでましょ。
……指輪は……つけとくか。
どの指にしよう?
「……どーれーにーしーよーうーかーなー」
そう、全ては神さまの言うとおりなのだ。
結果、右手の人差し指になりました。
……なんか、私結構装飾品つけてるよね。
今はつけてないけどイアリング持ってるし。
「……大体全部貰い物なんだよな……」
……うん。保護者に恵まれたってことで。




