66,Q嬉しそうですね。Aついに…ついに出来たんです!
モエギがレヨンさんのところに向かった翌日、私はいつも通り作業部屋に居た。
モエギはまだ帰ってきて居ない。
レヨンさんの所で休憩してるのかな?
「……さて、と。そろそろ……」
手の甲で汗を拭い、ポーションの実をナベの中に落とす。
そして力を入れてナベの中をゆっくりとかき混ぜる。
作り始めて少ししてから気付いた事なのだが、ポーションの実を入れた後は少しゆっくりと混ぜた方がいいようだ。
なぜかはわからないが、そうした方がちゃんと効果が出る。
「……このくらい、かな?」
毒消し(製作途中)をかき混ぜる手は止めずにヌマスグリの数を数える。
適当に掴んでからナベの横に置いてある作業台(箱)に置いて数え直すのだ。
「……よし。25個」
本を読んだり店番したりしながら感覚で数を合わせる練習をしていたのだ。
結構な回数繰り返していたらなんとなく出来るようになり、現在の成功率は7割くらいになった。
「うーん……もう少し、かな?」
ナベの中のポーションの実は、まだ完全に崩れていない。
ここでヌマスグリを入れてしまうと効果が薄くなってしまう。
まだ待機。
「よし」
しばらくナベをかき混ぜて、ポーションの実が煮崩れたのを確認してからヌマスグリを入れる。
この後は少し速めにかき混ぜる。
一定の速度でグルグルとナベをかき混ぜていると、ヌマスグリの色が出てきた。
今日のは色がちゃんと濃い……と、思う。
「よい、こら、せっと」
重いものを持ち上げると声が出てしまう不思議。
なんでだろな?
そんなことを言いながら柄杓でナベの中身を濾し器に移す。
重い。すごく重い。
「これ、で……ラストォォ!」
最後の1杯に無駄な気合いを入れ、柄杓を置く。
そして作業台の代わりにしていたビンの箱を引き寄せる。
小さい方の柄杓はこの上に乗せておいた。
後はビンに入れるだけだ。
「……うむ」
とりあえずいつも通り一本分だけ入れた毒消しを目の前に置き、ヒエンさん作の毒消しと見比べる。
見た目は同じ。だと思う。
「やりますか……」
毒消しの横に麻痺毒を置いてため息をつく。
今日は大丈夫だと思うんだけどな……
麻痺毒のビンのコルクを抜き、自作の毒消しも開けておく。
念のためヒエンさん作の方も。
「……うう……」
嫌だな……普通嫌でしょ……自分から麻痺毒浴びに行く人とか普通居ないでしょ……
言ってても仕方ないので諦めて麻痺毒を手に取る。
そして数秒躊躇ってから左腕にかける。
「……あー……ビリビリする……」
なんかもう慣れたな……
さてと。それじゃあ毒消しかけますか。
「……お?おおお?」
自作の毒消しを腕にかけると麻痺毒の効果が消えた。
ヒエンさん作の毒消しかけたときみたく消えた。
あれ?これ、もしかしなくても成功した?
出来た?毒消し出来た?
「……やったぁぁぁ!!」
盛大にガッツポーズをしてから立ち上がる。
ヒエンさんは今店に居る。
毒消し制作初の成功だ。
嬉しいから早く報告したい。
「ヒエンさぁぁん!!」
「なあに?アオイちゃん」
「出来た!!」
「あら、本当?」
「たぶん!!」
「多分なのね……」
カウンターに座って優雅に読書をしていたヒエンさんは優雅にイスから降りて作業部屋に歩き出した。
相変わらず優雅だね、ヒエンさん。
なんで裏通りで薬屋なんてしてるのか分からないくらい優雅だね。
そんな優雅なヒエンさんは優雅に作業部屋に入っていった。
とりあえずついて行く。
「……うん。完璧ね」
「やったぁぁ!!」
「これなら売っても大丈夫ね」
「え、売るの?」
「ええ。ちゃんと効果もあるのに安いんだから最高じゃない?」
「でも、売れるの?」
「大丈夫よ。ここはエキナセアよ?」
「……うん?」
なんでしょう、その理屈……
結構謎だよ?
「エキナセアはちゃんと効く物しか売らないって評判なのよ」
「あ〜……なるほど……」
この世界、薬の効き目についてちゃんとした基準がない。
なので、冒険者の間で流れる噂などが店の評判に直結する。
「じゃあ、これビンに入れるの?」
「ええ。お願いね」
「はーい……お昼休憩はヒエンさんと交代?」
「ええ。今日のお昼はコガネちゃん作よ」
「おっ、楽しみにしてよう」
ヒエンさんはヒラヒラと手を振って店に戻って行った。
さて。久々に大量のビン入れだ。
疲れるぞ〜精神的に。
疲れたでござります。
作業自体は20分くらいで終わったんだけど、精神的にしんどいです。
疲れた。癒しが欲しい……コガネ……コガネちゃんは何処へ……
「あ、主。お疲れ様」
「コガネちゃん……疲れた……」
庭を通ってリビングに入ると天使が居た。
いや、うん。コガネちゃんだけどね?
髪真っ白だしふわふわだし疲れて霞んだ目で見るとガチの天使に見えるんですよ……
そんな事を考えながらフラフラと歩いてイスに座る。
「主、毒消し出来たの?」
「うん……なんで知ってるの?」
「さっき、店から声が聞こえたから」
「あ、そっか。あんなに叫んだら聞こえるか」
テーブルに突っ伏した状態で少しだけ顔を上げると、コガネちゃんが水を出してくれた。
お礼を言って口をつける。
冷えた水が美味しいね……
「主、お昼は?」
「食べる〜」
コップを置いてすぐに潰れた私の頭を撫でていたコガネちゃんは、返事を聞いてすぐに立ち上がった。
……うん。頭撫でられるのは割と好きだけど、コガネちゃんにされるとなぜか照れるね。コガネ君ならなんの問題も無いのにね。
「今日はパスタにしたよ」
「お、久しぶりだ〜」
この世界、主食はパンだが麺もある。
でも米はない。解せぬ。
「夏野菜のパスタ」
「美味しそう……というか匂いが美味しい。もう既に美味しい」
「まだ食べてないのに……」
トマトがベースと思われるソースに様々な野菜が入ったパスタはすごく美味しそうだ。
「いただきまーす」
手を合わせてからフォークとスプーンを手に取る。
麺を巻くのが苦手な私のためにコガネちゃんはスプーンも渡してくれていた。
さすがの気遣いですな。
そんなわけで左手にスプーン、右手にフォークを装備してパスタを食す。
「……美味しい……このパスタ美味しい……」
「良かった」
トマトソースの絶妙な塩加減や、少し大きめで食感がいい野菜がすごく美味しい。
何よりソースがいいね。
この、しっかり煮込んである感じとか、酸味が少なめな感じとかすごく私好みです。
多分トマトの種は取ったんだろうな……
「いいね、このソース。トマトの種は取ったの?」
「うん。主は酸味少ない方が好きでしょ?」
「……好きです……」
私の味覚を完全に把握してるのかな?
まあ、普段から一緒にご飯食べてるし最近はコガネちゃんがご飯作ってるし把握する事自体は出来るだろうけど……
すごいね、コガネちゃん……
私の好みなんて覚えてもなんの役にも立たないのに……
そんなことを考えながらパスタを完食する。
ちょうどいい感じに満腹です。
量の調節まで完璧。
さすがコガネちゃん。
「ごちそう様でした〜」
「お粗末さまでした」
「よし、店番しよう」
「私も」
「あ、コガネちゃんもこれから店番なのか」
「うん」
なら退屈で死にそうになる事はなさそうかな。
暇なら喋ってられるしね。
それに、今日は割とお客さん来る気がするんだよね。
「じゃあ行こっか」
「うん」
皿を片付けてからリビングをあとにする。
扉を開けると、相変わらず優雅に読書をしているヒエンさんがいた。
「ヒエンさーん。お昼交代だよ」
「はーい。アオイちゃん、ビン詰め終わった?」
「うん。持ってくる?」
「ええ。このカゴに入れておいて」
「店主、このメモは?」
「ああ、カゴの中に入れて」
「ポーションの時と同じ感じでいいの?」
「ええ」
ヒエンさんは休憩を取りにリビングへ行き、私は作業部屋へ。
コガネちゃんは勢いをつけてイスに座っていた。
可愛かった。
そんなことを言いながら作業部屋に戻ってカゴを探す。
最後に見かけたのが初級を受けるにポーションを入れてたので……カゴ……どこに置いたっけ?
「……棚?」
普段使われない大体の物が入っている棚を漁ってみると、無事にカゴを発見する事ができた。
ヒエンさん、置き場に困ると大体この棚に入れるんだよな。
ここに無ければ二階の物置と化している部屋。
まあ、今はどうでもいい事なんだけども。
「さてさて。確か28本だったよな?」
とりあえず箱の上に置いておいた毒消しの本数を数えながらカゴの中に入れていく。
「よーし。回収完了!」
ちゃんと28本回収出来たので店に戻る。
「コガネちゃん、メモ貸して」
「はい」
「ありがと〜」
コガネちゃんからメモを受け取り、カゴにセットしてポーションの時と同じ位置に置く。
これでOK……な、ハズ。
コガネちゃんがツッコんで来ないという事は問題ないんだろう。
さて。これで後はコガネちゃんと喋りながら店番するだけだ。
アオイちゃん、おめでとう。
…あ、どうも。瓶覗です。
今回はブクマじゃないです。
実はちょっと不思議な事がありまして…
この前、総合Ptが100になったって大騒ぎしたじゃないですか。
あの後101になってまして…この1、なんでしょう?




