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64,Q手紙ですか?A手紙ですね。

 小鳥が届けてくれた紙の大きさはB5くらいの大きさで、どうやって小鳥の足に括り付けていたのか不思議だ。


「あ、もう行っちゃったか……」


 とりあえず小鳥に水でもあげようかと思ったのだが、小鳥は早々に飛び去ってしまった。

 まあ、行ってしまったのなら仕方ない。

 とりあえずこの手紙(?)を読もう。

 えーっと、どれどれ……


 〈やあやあどうも。久しぶり。

 この手紙は無事にアオイちゃんに届いたかな?

 まあ、読んでるなら届いたってことだろうから気にしなくていいか。

 さて、今回手紙を書いた理由なんだけど、実は知り合いが面倒な呪いにかかってしまってね。

 アオイちゃんの保護者さんは有名な薬師だって聞いたから薬の調合をお願いできないかと思ってさ。

 無理なら無理でいいんだけど、ちょっと頼んでみてくれないかな?

 ちなみに「堕ちし龍の呪い」って言う厨二病感溢れる呪いなんだけど、アオイちゃんは知ってるかな?

 詳しく知りたいようなら「世界とは何か」の「気になった呪い編」を読んで貰えればどんな呪いか書いてあるよ。

 と、まあ呪いの話はこれくらいにして、ちょっとお知らせなんだけど、3ヶ月後にキマイラでお祭りがあるんだ。

 単に私がアオイちゃんと会いたいだけなんだけど、来れるようなら来てみたら楽しいかもよ?

 そんなことを書いていたらもうスペースがないね。

 それじゃあね。

 レヨン・ベール〉


 堕ちし龍の呪い……!?

 なんだその厨二心をくすぐる呪いは!?

 というか「気になった呪い編」って……分かりやすく趣味だな……

 まあ、とりあえずヒエンさんに聞きに行こうかな。

 ……あれ?そういえばなんでレヨンさんはヒエンさんの事知ってるんだ?

 話は……したっちゃしたけど、ヒエンさんって有名なのかな?

 手紙にも有名な薬師って書いてあるし……


「……うーん?」


 分からん。

 なら考えても仕方ない。


「ヒエンさーん」

「あら、どうかした?」

「ちょっとお願いが……」


 作業部屋の扉を開けて顔だけ中に突っ込むと、ヒエンさんは薬研で薬草の類だと思われる何かをすり潰していた。

 ……ナベかき混ぜてるとかではないから話しかけても大丈夫だな。多分。


「珍しい。どんなお願い?」

「えっとね、堕ちし龍の呪いって言う呪いの解除?の為の薬の調合……なんだけど」

「唐突ね。というか堕ちし龍の呪いとか久々に聞いたわ」

「うん。唐突だと言う自覚はあるよ」

「どうしたの?急に」

「実は手紙が届きまして……」

「手紙?誰から?」

「レヨンさん……世界とは何かの作者さんから」

「…………あ、そういえば仲良くなってたんだっけね」

「うん」


 ヒエンさんは手を止めて何かを考えるように遠くを見つめる。

 ……かっこいい……


「その作者さんが呪いにかかったの?」

「いや、知り合いの人らしいよ」

「そう……アオイちゃん、返事を書く準備をしてちょうだい。紙が無かったと思うから、コガネちゃん達に買ってきて貰いましょう」

「分かった!モエギー!」


 お使いの追加を頼む、という事はモエギに言伝を頼むという事だ。

 考えてみたら、契約獣(鳥?)が2羽いるってすごく楽。色々と。

 そんな事を言っていたら窓からモエギが入ってきた。


「チュン」

「コガネちゃんに伝言頼める?帰りに便箋買ってきてって」

「チュン」


 モエギは用件を聞くと、すぐに窓から出ていった。

 ……優秀やな……


「……あれ?結局ヒエンさん薬作ってくれるの?」

「ええ。でも時間も金もかかるわよ」

「まあ、それはそうか……」

「今回送ってもらう手紙は払ってもらう事になる金額と、調合にかかる時間のお知らせね」

「なるほど……それは速く伝えた方がいいもんね」


 って、あれ?

 堕ちし龍の呪いって、薬調合してる余裕あるくらいのんびりした呪いなの?

 本読んでみるか……


「さて。そうと決まれば準備が必要ね」

「手伝う事ある?」

「とりあえずは大丈夫よ。それに店番が居ないと」

「そっか。なら私は店番してるね」

「お願いね」


 ヒエンさんはとりあえず終わらせましょ、と呟いて薬研に手を添えた。

 私はとりあえず店番しましょ、と思っていつの間にか完全に入っていた作業部屋から店に戻った。


「……さて」


 今現在店に客は居ない。

 リビングに行く時間くらいはあるだろう。普通に。

 そう思ってリビングに行き、棚から世界とは何か、気になった呪い編を抜き取って持っていく。

 ……なんか他に比べて厚くない?

 さすが完全趣味だな……


「……重いぞ」


 私の筋力がなさ過ぎるだけなのだが、片手で持つのが辛い。

 ヒイヒイ言いながら扉を開けて店に戻る。

 カウンターに本を置き、イスに飛び乗ったらやっと読書開始だ。

 集中力が続かないから読書とは言えないかも知れないが。


「えーっと……堕ちし龍の呪い……」


 目次を開いて指でなぞりながらページを探す。

 結構多いな……こんなに厚くなるわけだわ。

 レヨンさん、絶対これ書いてる時が1番楽しかったよね。


「お、あったあった」


 堕ちし龍の呪い、76ページ。

 76……76……


「74……75……」


 ページをめくって行くと、目的のページにたどり着いた。


 〈堕ちし龍の呪い


 〜概要〜

 堕ちし龍の呪い、つまりは堕天龍の呪いだ。

 堕天龍というか龍そのものが半分伝説になっている現在、この呪いが未だ存在しているかどうか分からないが文献に残っている情報をまとめると、以下の事が呪いの内容らしい。

 1、継続的な寿命の短期化

 2、最大魔力の大幅な減少

 3、視力の低下

 4、免疫力の大幅な低下

 5、筋力の低下

 6、悪魔種との相性上昇

 本当はもっとあるのかも知れないが、私が調べた中で信憑性があると思われるのはこの6つだ。

 継続的な寿命の短期間化は、時間を追う事に減少年数が大きくなっていくらしい。

 もしも呪いを受けた場合はなるべく速く解除することをおすすめする。

 さて、この中で私が最も気になったのは悪魔種との相性上昇なのだが、これは全く良いものではない。

 分かりやすく言うと悪魔種に狙われやすくなるという事である。

 言い方を変えれば悪魔種と会いやすくなる、つまり契約するチャンスが増えるという訳だが、堕ちし龍の呪いでは最大魔力の大幅な減少も同時に起こる訳だから悪魔種に出会って無事でいられる可能性は低く、ましてや契約など不可能であろう。


 〜呪い解除の方法〜

 解除方法は2つ程あるが、現実的なのは片方だけである。(そもそもこの呪いが現実的ではないのだが)

 まずは1つ目。「龍の加護」を受ける事だ。

 龍の加護とは、堕天していない普通の、清らかな龍に認められた者のみが受けることの出来る、加護の最上位の1種である。

 これは、あまりにも現実味がない。

 龍に会うということはそれだけで伝説となるような出来事である。

 加護を受けるなど夢のまた夢、伝説の中の伝説だ。

 そんな不可能な方法を紹介した後は、現実的な方法も紹介しておこう。

 2つ目の方法、「清龍の涙」という薬を飲む事だ。

 現実的、と言ったが、それはあくまで龍の加護に比べて、という事である。

 清龍の涙の説明をしよう。

 清龍の涙とは、薬師の中でもほんのひと握りの者にしか作ることの出来ない薬学の英知の結晶である。

 古の書・龍に記された説明を見ると、「世界の創成を司りし清き龍が生きとし生けるものの糧とするべく地に流した涙に最大限近付けた人類の最高傑作」という、なんとも仰々しい事が書かれている。

 私のような凡人には到底理解できない世界感である。この世界を創ったのは龍らしい。………………〉


 ……え?なに、この、重い呪い。

 なんでレヨンさんのお知り合いはこんな呪いにかかってるの?

 というかこれつまり、世界のどっかに堕天龍がいるって事じゃね?

 ……いやいやいや、それよりだよ。

 なんでヒエンさんこんな薬作れんの?

 ヒエンさん「ほんのひと握り」の中に入ってんの!?

 というかヒエンさんそんなすごい人だったんだ!?

 いや、うん。知ってたよ?すごい人だって事はなんとなく認識してたよ?

 でもさ、こんなにすごいとは思わないじゃん?普通。


「……あー……やっと分かったわ」


 そもそも不思議だったんだよな……

 いつぞやのドラゴン襲来の時のギルドでの事とか。

 ヒエンさんの名前が出た瞬間のざわめきの感じ、明らかにヒエンさん有名人って感じだったもんな……

 なるほどなぁ……そりゃ有名にもなるよな……

 魔女の秘薬といい、清龍の涙といい、普通の・・・人には作れない薬を当然のように作れるんだもんな……


「なーるほどなー」


 どうりで、こんな小さな店なのに顔がきくわけだよ。

 アスターさんがよく言ってる「エキナセアの制服着た子に何か出来るヤツは居ない」って、つまりこういう事だろ?

 ヒエンさんが怖いから何も出来ないってことだろ?

 秘薬やらなんやら作れるなら、毒も作れるだろうし……というか実際作ったらしいしな……即死毒。


「……はぁー……」


 手を頭の後ろで組んでイスの背もたれに体重をかけ、ぼんやりと考える。

 私、エキナセアに釣り合わな過ぎでは?


「ふぁー……」


 謎の声を発しながらぼんやりしていると、窓からモエギが入ってきた。


「チュン」

「おー、おかえり」

「……チュン?」

「いや、ぼーっとしてただけ」


 どうかしたかと心配そうに訪ねてくるモエギを撫でつつ、考えをまとめる。

 薬師として釣り合ってなくても、異常って点では合ってるんだろう。

 私、オリジナルスキル持ちだし。


「……チュン、チュッ」

「そっか、ありがと」


 コガネちゃんとサクラはあと2時間くらいで帰ってくるそうだ。


「あ、そうだモエギ」

「チュン?」

「今日か……明日くらいにレヨンさんのところまで手紙を届けて貰いたいんだ」

「チュン」

「ちなみに、往復でどのくらいの時間が掛かる?」

「……チュッチュン、チュン」

「つまり片道6時間、か。速いね」

「チュン、チュンチュン」

「それもそうか」


 モエギの身体を指先で撫でながら、のんびりと会話する。

 今日はそんなにお客さん来ない気がするから、コガネちゃんの帰りを待ちながらモエギと喋ってようかね。

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