62,Qどうですか?Aサックサクです!!
サクラとモエギを送り出してから約10分。
のんびり2羽を待ちながらコガネちゃんと喋ったり、ヒエンさんのところにパンを持っていったりしていたら2羽が帰ってきた。
「おっ、おかえり〜」
「チュン」
「どうだった?」
「チュン」
「そっか、なら出よう」
今は道が比較的空いているらしい。
ならさっさと行こう。
大通り、混むと本当に移動が大変なんだよ……
「主、財布持った?」
「持ったよ」
「中身は?」
「入ってる……コガネちゃん、ちょっとくらい私を信用してくれてもいいんではなくって?」
「ごめん、つい」
つい心配になるってか?
まあ、よく忘れ物するけどさ……おつかいに行ったのに財布忘れるというサザエさん的な事もやった事あるけどさ……
「よし!行くぞ!」
「おー」「ピッ!」「チュン」
右手を突き上げると、それに乗ってくれるお供たち。
本当にみんなノリがいいよね。
大好きだよ。
サクラとモエギなんて羽を持ち上げて参加してくれてるからね。
なんていい子たちなんだ……
「ヒエンさーん、いってくるね〜」
「はいはい、行ってらっしゃい。気を付けてね」
「はーい」
ヒエンさんに声をかけ、エキナセアを出る。
大通りに入ると、本当に人が少なかった。
いや、多いことには多いんだけど、普段の大通りに比べたら進みやすい。
サクラとモエギのお陰だな。
「あ、主、危ない」
「うん?あ、ほんとだ」
ぽやーっとしていたら花壇に突っ込みそうになった。
危ない危ない。
コガネちゃんが一緒にいると安心して注意力が下がるな(言い訳)
「ピッピッ!」
「うん、もうすぐだよ」
「ピィー!!」
「もうすぐやて」
サクラが騒がしいんだか……
今日も今日とて肩に乗ってるから結構うるさい……
「チュン」
「……ピ」
あ、静かになった。
さっすがモエギ。
サクラを扱わせたら右に出るものなしだね。
と、まあそんな事を言っている間に焼き菓子の店への分かれ道についた。
「ここを右だね」
「そうだね」
大通りからは多くの横道が伸びており、私はガルダで生活し始めてから数ヶ月が経つというのにどこがどう繋がっているのか未だに把握出来ていない。
サクラとかモエギは上から見てるから分かってるのかも知れないが、私の移動手段は徒歩だ。
上からなんて見れないのだから把握出来ないのも仕方ない。
普段はずっとエキナセアにいるわけだし。
「主、主、着いたけど……」
「ん?おお、ほんとだ」
何故か必死に言い訳しているうちに店に着いた。
そういえば店の名前初めて知ったな……へぇ……アマドコロっていうのか……甘所……?
「よし、店内も割と空いてるみたいだね」
「入ろっか」
「そうだね」
答えたらコガネちゃんがドアを開けてくれた。
そして私が入ってから自分が入りドアを閉める。
……なんだろう、この執事もしくはメイド感は……
「いらっしゃいませ」
「あ、どうも……すいません、鳥って入っても大丈夫ですか?」
「鳥、ですか……飛んで羽を落としたりしなければ大丈夫ですよ」
「ありがとうございます……だ、そうなので2羽共飛ばないように」
「チュン」「……ピィ」
おい、サクラちゃん?なんだいその不満げな声は?
なんなら外で待っててもいいんだよ?
そんな私の威圧感(などはほとんど無い)が伝わったのか、サクラはもう一度小さく鳴いて首に擦り寄ってきた。
くすぐったいって。可愛いなおい。
「主、蜂蜜だって」
「お、本当だ〜上にかけてあるんだね」
味は一種類では無かったようだ。
どうしよう、どっちも食べたい。どっちも買うか。
どうせ普段使う機会がなくてお金溜め込んでるし。
ヒエンさんからお小遣い貰ったし。
「……主、わがまま言ってもいいですか?」
「おや珍しい。言ってご覧なさい」
「両方食べたい」
「気が合うなコガネちゃん。私もそう思ってた」
「ピッピッピィ!(私は蜂蜜の方が気になる!)」
「チュンチュン(僕は砂糖だけの方が)」
「なるほど、ならどっちも4個ずつでいいかな?」
「4個……あ、店主の分か」
「そうそう」
会議終了。
顔を上げると、店員さんがニコニコしながらこちらを見ていた。
なんか、あ〜微笑ましいわ〜和むわ〜みたいな雰囲気を醸し出している。
あれだ。アスターさんがよく私に向けてくる目線と同じ感じのやつだ。
「どちらも4個ずつ、でよろしいですか?」
「はい、お願いします」
そして会話から注文を理解されていた。
差し出された紙袋はコガネちゃんに受け取ってもらい、私は代金を払う。
さて、これであとはエキナセアに帰るだけだ。
ヒエンさんも一緒に食べれたらいいな。
今、作業部屋すごい事になってるんだよね……
さっき覗いた時は濾し器と鍋と薬研と大ビン(7、8本)がフル稼働してたんだよな……
なんでビンの中にビン入れてんの?とか思ったんだけどあれ本当になんだったんだろ……
ヒエンさん、なんで大ビンの中に小ビン入れてたんだろ……しかも3本……
「主、危ないよ。考え事しながら歩くのやめようか」
「あ、はい」
コガネちゃんに手で止められたのは大通りとの合流地点。
これは、あれだね?地球でいうところの「歩きスマホはやめましょう」的なノリだね?
歩きながらスマホをいじるな、じゃなくて歩きながら考え事をするな、だからな……かなりの落差が……
「そういえばコガネちゃんはヒエンさんが今何の薬作ってるのか分かる?」
「いや、全く分からない」
「やっぱりそうなんだね……」
「でも棚の奥底からビンを引っ張り出してるのはみたよ」
「……ヒエンさん、なに作ってんの?」
「……なんだろうね……」
……気になる……
「帰ったら聞いてみようか」
「そうだね」
そんな会話をしていたら、エキナセアに着いた。
……あれ?なんか、行きと違う道を行った気がする……
サクラについて行ったら知らない道を通ってエキナセアに出たんだけど……
今度このあたり散歩してみよう。
「ただいま〜」
「あら、おかえりアオイちゃん」
「ヒエンさん、買ってきたよ!時間あるなら一緒に食べよ!」
「やった。ちょうど一段落したところなの」
ヒエンさんが嬉しそうに笑う。
……なんだなんだ、可愛いな……ヒエンさんって「美人」とか「綺麗」とかのイメージが強いんだけど、可愛いんだね。可愛いかったんだね。
「主、店主、リビング行こう」
「そうだね。行こう」
「そうね。早く食べましょう」
「ヒエンさん……どんだけ食べたいの……」
「疲れた時には甘いものが1番なのよ」
疲れた時……そんなに疲れるの?薬作りって……
というか一段落って、まだ作り終わってないってことかな?
どんだけ手間かかる薬なの?
てかどんな薬なの?
「ねぇ、ヒエンさん、今日は何の薬作ってたの?」
「今日は〈魔女の秘薬〉って薬を作ってるの」
「ま、魔女!?」
「そう。魔女。……あ、この場合の魔女は白魔女だと思ってちょうだい」
「なんだ……白魔女か……」
「そもそも魔女って、もはや伝説の存在なのよね」
「そうなの?」
「ええ。気になるなら今度詳しく話してあげるわ」
「やった」
「……主、主、早く食べよ」
「ピィィ!!」
「あ、ごめんごめん」
喋っていたらコガネちゃんとサクラに急かされた。
どんだけ食べたいの?
……あ、モエギもこっちをじっと見てるね……ごめんね……お待たせ……
「とりあえず、私とヒエンさんとコガネちゃんはノーマルと蜂蜜両方買ってきたよ。サクラは蜂蜜、モエギはノーマルだったよね?」
「チュン」「ピ!」
私が袋をガサゴソやってる間にコガネちゃんが皿を出してくれた。
さすが、気が利くね!
「……いい香り……」
皿に移した砂糖菓子を渡すと、ヒエンさんがポツリと呟いた。
うん、すごくいい香り。
お腹鳴りそう。
「それでは……いただきます!」
「いただきます」
「ピ!」「チュン」
手を合わせてから砂糖菓子を口に運ぶ。
まずはノーマル、砂糖だけの方から。
この砂糖菓子はラスクのようなものに砂糖をかけ、それを焼いたシンプルなものだ。
シンプルだからこそ美味しいのかな?
砂糖菓子に歯を立てるとサクッといういい音がした。
実際サックサクで、中まで砂糖が染み込んでいるようだ。
上にかかった砂糖もいい具合に焼けていて、すごく食欲をそそる。
……美味しかった……
それでは蜂蜜の方も……
蜂蜜がかけてある方も、ベースは変わらないようだ。
上からかけられている蜂蜜は焼けていないので、さっき食べたノーマルにあとから蜂蜜をかけている……のだと思う。
食感は……こちらもサックサクだ。
でも、こっちは中が少し柔らかい。
……あ、蜂蜜が染み込んでるのか。
美味しい。
「美味しかったね……」
「うん。美味しかった……」
「……今度また買いに行きましょう」
「ピッ!」「チュン……」
アマドコロの店員さん、今度ヒエンさんが買い占めに行くのでご注意ください……
それにしても美味しかったな……
いやぁ、今日はいい日だ……
アオイちゃん、残念。「甘所」ではなく「甘野老」です。




