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60,Qそれはなんですか?A精霊花、らしいです。

今回の最初は久々にコガネちゃんが喋りました。

 朝6時。起床。

 主はまだ寝ている。

 サクラとモエギは既に起きていて、私が起きたことに気付いて近づいて来た。


「ピィ、ピッ」

「チュン」

「キュー」


 外に出たいらしく、窓を開けてくれと言ってくる。

 朝だけはサクラも静かだ。

 主の眠りを妨げないように、鳴き声を小さくする。


「ピィ」

「はいはい」


 机から降りて人型に変化し、サクラに急かされ窓を開ける。


「あんまり遠くに行かないでね」

「ピィ」

「モエギ、お願いね」

「チュン」


 2羽を送り出し、窓から入ってきた風に耳を傾ける。

 カサカサと木の葉の揺れる音。

 上空の突風の音。

 そして、それに混ざる精霊の声。


「……シルフィ?」


 呟いた声に答えるように、風が耳元を通り過ぎる。


「ずいぶんご機嫌だね」


 ここ数日あまり機嫌が良くなかったのだが、今日はやけにご機嫌だ。


「……ああ、言われてみれば」


 シルフィは笑いながら、嫌な奴がいなくなったの♪と言う。

 確かに、昨日まで漂っていた嫌な魔力が消えている。


「なにかあったの?」


 問いかける声に答えたのは楽しそうな笑い声。

 この質問には答えてくれないらしい。


「ありがとう、シルフィ。主を起こすね」


 話してくれただけでも、私の魔力の回復になる。

 お礼を言って、声をかけてから主に近づく。

 シルフィは帰ったようだ。


「主、主。朝だよ」

「……うう……」

「あーるーじー」

「うー……」


 相変わらず起きない。

 体を揺さぶってみても駄目だ。


「主、起きて〜」


 揺さぶりながら声をかけ、その作業を10分ほど続ける。

 主は朝に弱いのだ。




「おはよう。主」

「……おはよ……コガネちゃん……」


 眠いでござります。

 今日も今日とてコガネちゃんに起こされたでござります。

 現在時刻は朝の7時。

 もう少し寝させてくれても良くないかい?コガネちゃん。

 私はまだ眠いよ……


「主、二度寝禁止」

「……ういっす」


 釘を刺されてしまった。

 コガネちゃん、お母さんみたい。


「……あれ?サクラとモエギは?」

「外にいるよ」

「そっかぁ……」


 多分コガネちゃんに頼んで出してもらったんだろう。

 窓開いてるし。

 ああ、風が涼しい。


「主、私は下に行くから、着替えて降りてきてね」

「はーい」


 ここで二度寝……すると確実に怒られるな。

 起きよう。潔く起きてしまおう。

 うーん……眠い……

 目を擦りながらベッドを降りる。

 そしてエキナセアの制服を手に取ろうとして、


「ん?」


 制服の上に花びらが乗っている事を気がついた。

 なんか綺麗。

 でもこれ、どこの花びらだろ?

 この近くにこんな花咲いてなかったと思うんだけどな……

 まあいいか。


「……持っていこっかな」


 一旦どけて制服に着替え、花びらを手に持つ。

 コガネちゃんかヒエンさんに聞けば何の花か分かるかも知れないし。

 そういえば、今日は気持ちのいい朝だな。

 最近なんか空気が悪い感じがしてたけど、今日は文句なしの天気だ。強いて言えば暑い。

 エキナセアの制服は夏仕様になっている。

 詳しく言うと、半袖になっている。


「うーん……眠い……」


 呟きながら扉を開けて部屋を出る。

 階段を降りてリビングに行くと、机の上には美味しそうなパンとオムレツが。

 ヒエンさんが作ってくれたようだ。


「おはよう。主」

「おはよ〜」


 本日2回目の挨拶。


「あ、ねえねえコガネちゃん。これ、何の花か分かる?」

「え?……あ、これ……」

「ん?どうしたの?」

「主、これ、どこにあった?」

「制服の上に乗っかってた」

「シルフィか……」

「しる……?」

「あ、何でもないよ。これ、精霊花っていうすごい珍しい花の花びらだから、お守り代わりに持っておいたら?」


 珍しいものらしい。

 精霊花、か。なんか凄そうだな。


「お守り……枯れない?」

「うん。大丈夫だと思う」


 枯れないのか。すごいな。精霊花。

 とりあえず時計に挟んでおこうかな。


「アオイちゃん、コガネちゃん、おはよう」


 ポケットから時計を出して、中に花びらを入れていると庭からヒエンさんが入ってきた。


「おはよー」

「おはよう」

「あら?アオイちゃん、コガネちゃん、なんで制服なの?」

「……え?」

「今日は休みよ?定休日じゃない」

「……あ」


 忘れてた。今日休みだった。

 エキナセアの、定休日といいながら定まってない気がしなくもない定休日だった。


「私は1日作業部屋にいるけど、アオイちゃんたちはどうするの?」

「うーん……あ、そうだ。焼き菓子のお店」

「焼き菓子?」

「こないだギルドにお使い行った時に次の休みに行くって約束してたんだ」

「主、サクラとモエギ呼んで来ようか?」

「大丈夫だよ〜私が呼べば聞こえるみたいだから」

「……そういえば、主に呼ばれてるのはなんとなく分かるかも」

「あら、魔力契約の能力か何か?」

「うーん……どうなんだろう……」


 レヨンさんに聞けば分かるかな?

 今度お手紙送ってみましょ。

 まあ、それは一旦置いといて。


「サークラー。モーエギー」


 とりあえず窓の外に向かって言ってみる。

 来るかな?


「ピィ」「チュン」


 おお。来た。

 本当に聞こえるんだ。


「今日は店が休みだったから、前に言ってた焼き菓子のお店に行こうと思うんだけど……いい?」

「チュン!」「ピィ!!」


 モエギがこんなに大きな反応を示すとは……相当行きたかったんだね……


「あ、そうだ主」

「なーに?」

「あの店、午後からしか空いてないよ」

「あれ?そうなの?」

「午前中に下準備してるみたい」

「そうなのか〜じゃあ午後から行こう」

「ピィ!」「チュン」


 と、なると。午前中は暇なのか。

 どうしよっかな。


「コガネちゃん、午前中はどうするの?」

「うーん……パンでも焼いてよっかな」

「それは私からお願いしたいわ。ちょうど底をつきそうなのよね」

「じゃあ焼いてる」


 コガネちゃん、いつの間にパン焼けるようになったの?

 そういえばこの前ヒエンさんと2人でなんかやってた事があったけど……あの時か?


「アオイちゃんはどうするの?」

「そうさね〜……あ。そうだ」

「なにかする事でもあった?」

「うん。髪留め……バレッタ的な何かを買いに行こうと思ってたんだ」

「言われてみれば、アオイちゃん髪が伸びたわね」

「そうなんだよね。前髪を留めたくて」


 髪留め、といえば行く所は1つ。

 コガネちゃんの髪留めを買いに行った大通りのお店。

 あの店にはあの後も何回か行っていて、店主の女性と仲良くなったりしてました。

 ちなみに、店の名前は「ワックスフラワー」、店主さんはアリアさんといいます。


「よし、私は着替えて来ようかな」

「アオイちゃん、先に朝ご飯食べちゃいなさいな」

「はーい」


 確かに、食べないと片付かないもんね。

 早く食べちゃいましょう。


「それじゃあ、アオイちゃんは気を付けて行ってらっしゃい。コガネちゃん、私は作業部屋に居るから何かあったら来てね」

「はーい」

「うん」


 返事をすると、ヒエンさんは庭に出て行った。

 サクラとモエギは午後になるまで外に居るらしい。

 ……あ、そうだ。


「コガネちゃん、精霊花って加工しても大丈夫なの?」

「大丈夫だけど……なにかするの?」

「するかも知れないし、しないかも知れない」

「……そっか」


 喋りながら朝食を完食する。

 美味しかったです。


「主、美味しかった?」

「うん。美味しかったよ」

「このパン、私が焼いた」

「マジで?」

「マジで」

「すごく美味しかったです」

「良かったです」


 コガネちゃん、料理スキル高ぇ……

 ヒエンさん居なくても美味しいご飯が食べられる事が確定した。

 ……まあ、ヒエンさんが居なくならないのが1番何ですけどね?

 あの人なんか最近旅支度してる気がするんだよな……

 せめて薬師試験終わってからにして欲しい。


「コガネちゃん、料理好き?」

「楽しいよ」

「そっか〜」


 コガネちゃん、今ニコッてした。ニコッてした。

 可愛い。すごく可愛い。


「主、私片付けとくから置いといていいよ」

「え、そのくらいやるよ?」

「どうせまとめて洗うから」

「うーん……じゃあお願い」


 なんか甘やかされてる気がする。

 コガネは私を甘やかすのが上手だな……

 それじゃ、お言葉に甘えて準備しに行きますかね。

 準備って言っても着替えて財布持ったら終わりなんだけどね。


「さーて。さっさと着替えてさっさと出ますかね」


 ワックスフラワーは朝8時から開いてます。

 8時になるまで大通りの朝市でも覗いてみますかね。

 先月は全く使わなかったからお金はあるが、無駄遣いする気も無いので覗くだけ。

 脳内で予定を立てながら部屋に入り、クローゼットを開ける。

 悩む必要なんてない。だって服が少ないから。

 いやあ、楽だねぇ……全部色違いだからどれを着ても間違いなんてないよ。


「アオイちゃん、ちょっといい?」


 ヒエンさんの声がして、だらけた思考がストップする。


「どうしたの?ヒエンさん」

「今月のお給料、渡してなかったから持って来たの」

「あ、そういえば」


 ちょうど着替え終わったので部屋の扉を開ける。


「はい。今月分」

「ありがとうございます……って、なんか増えてない?」

「下級の薬師試験受ける事になったからね」

「……まだ受けてすらいないよ?」

「本音を言うと、焼き菓子のお土産待ってるわ」

「なるほど」

「1個でいいわよ」

「了解です」


 つまり金は渡すから買ってこいと。

 ヒエンさんは今日1日かけてなんか作るみたいだし、甘いものが欲しいのかも知れない。

 それにしても額が増えすぎな気がするが……問い詰めても躱されるだろうな……


「それじゃあ、気を付けて行ってらっしゃい」

「はーい……というかこのやり取り2回目……」

「細かい事は気にするな」


 ヒエンさんが去っていった。

 私は着替え終わったからもう出られるんだが……持ち物の確認でもしようかね。


「えーっと、財布、時計、ハンカチ……終わり!」


 このハンカチはヒエンさんからの貰い物だ。

 淡いピンクで結構可愛い。

 これは色合いがサクラだから、モエギっぽい色のも欲しいな……とか思ってたりする。

 探してみようかな。


「財布の中身は……入ってるな」


 全てをポケットに突っ込み、準備完了だ。

 いざ出発!

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