58,Q大丈夫ですか?A大丈夫に見えますか?
「いってらっしゃ〜い♪」
なぜか上機嫌なヒエンさんに送り出され、エキナセアを出る。
モエギはいつも通り肩に止まっている。
モフモフや……
「あ、そういえばモエギはコガネちゃんとサクラがどこに行ったのか知ってる?」
「チュンチュン、チュッチュン(詳しくは知らないですけど、ちょっと遠いって言ってましたよ)」
「遠いのか……だからコガネちゃんなんだね」
「チュン」
「うん。足速いもんね」
喋りながら(?)ギルドにむかう。
行きたくないが仕方ない。
仕方ないが行きたくない。
「……チュン、チュン」
「ん?どうしたの?」
「チュン」
「ああ、この香りね〜焼き菓子だよ」
「チュン?」
「あれ?食べた事ない?」
「チュン」
「じゃあ今度買いに行こっか。コガネとサクラも一緒に」
「チュン!」
そうか。焼き菓子は珍しいのか。
ガルダの中には普通に店があるから珍しいものでもないのかとの思ってたな。
考えてみれば、ガルダって賑わってるもんな……
スラム街的なものも見た事ないし。
豊かなのかな?
あれ?砂糖とかって高級品だったりするのかな?
見た事ない気がする。
「ねえねえモエギ」
「チュン?」
「砂糖って高級品?」
「チュン」
「やっぱりそうなのか……」
高級品らしい。でも存在はするんだね。
砂糖ってサトウキビとかがあれば取れるんだっけ?
「チュン、チュン」
「ん?あ、ほんとだ」
考え事をしている間にギルドに着いた。
はあ……入るの嫌だな……
早くアスターさんの所に行こう。
「……よし!行こっか」
「チュン」
気合いを入れてからギルドの中に入る。
……なんか、ギルドの中にいた人が一瞬こっちを見た気がする。
気のせいかな。気のせいだな。
……うん。早く行こう。アスターさんの元へ。
早歩きと駆け足の間くらいのスピードでクエスト発注窓口へ向かう。
「あ、アスターさん」
「あらあらあら誰かと思えば最強の癒し、アオイさんではありませんか〜お久しぶりです〜」
「お久しぶりです」
「あら?その肩の子は……」
「あ、この子は私のお供です。モエギって言います」
「チュン」
「まあ可愛い♪この子がアオイさんのとこの子だとすると……一緒にいた薄桃色の子もですか〜?」
「あ、はい。そうです」
「この前小鳥が2羽ほど舞い込んで来てですね〜すごく癒されたのですよ〜なるほど、アオイさんのとこの子でしたか〜」
……そういえばギルドにも行ってたんだった。
「すいません……多分騒がしかったですよね……サクラが」
「いえいえ〜おとなしく窓に止まってましたよ〜」
本当かな……?
……でも、モエギが抑えておけばサクラもおとなしく……なるのかな?
「そういえばアオイさん、今日はお使いですか〜?」
「あ、そうでした。お使いでした。アスターさん、クエストの発注お願いします」
「は〜い」
アスターさんが引き出しから紙を取り出している間にポケットからメモを取り出しておく。
「はい、それではクエストの内容をお願いします〜」
「アンデットスライムの毒採取、です」
「また面倒なものを依頼して来ますね〜ハーブさん」
「面倒なんですか?」
「面倒ですよ〜。アンデットスライムって、ちょっと強めの魔窟にしかいないんですよ〜」
「そうなんですか……」
「あ、量の指定はどのくらいですか〜?」
「えーっと、2ビン分、です」
「は〜い。あとは……報酬ですね〜」
「えっと、報酬は500ヤル、です」
「了解で〜す。パーティー指定はありますか〜?」
「ないです」
「はい。では確認させていただきますね〜。
クエスト内容はアンデットスライムの毒採取。
量は2ビン分。
報酬は500ヤル。
パーティー指定なし。
受注者はエキナセアにて詳細を聞く。
以上で大丈夫ですか〜?」
「はい。大丈夫です」
「ではサインをお願いします〜」
ペンを受け取り、書類の依頼人の欄にエキナセア、と書き込む。
「は〜い、これで発注完了です〜」
「ふあ……」
「チュン」
「うん、大丈夫だよ……ちょっと疲れただけだよ……」
「ふふふ。お疲れ様でした〜」
何はともあれ任務達成。
あとはエキナセアに帰還するだけだ。
「それじゃあアスターさん、さようなら」
「はい、さようなら〜いつでも遊びにいらして下さいね〜」
アスターさん、遊びに来るのは難しいと思われる。
私はお使い以外にここに来る気はないので。
とりあえず手を振って、足早にギルドから出る。
「チュン?」
「そうだね〜。このまま直帰だよ」
モエギと喋りながらエキナセアに向かう。
まだまだ日が高いな……
そろそろ夏のはずだ。ガルダって割と南の方にあるから暑い……らしい。
ちなみに私はもう既に寝苦しくてたまらない。
コガネとサクラとモエギはくっ付いて寝てるのに全然平気そうだ。毛皮も纏ってるのに。
なぜだ……
「チュン」
「お?どうした?」
「チュン」
いつも通りくだらない事を考えていたら、モエギが唐突に飛び始めた。
なんだなんだ。どうしたどうした。
「モエギ?」
「チュン、チュン」
「え?ほんとに?」
なんか、この先にコガネとサクラがいるらしい。
契約獣同士の察知能力って高いんだな……
「ピィ!ピッピッ!」
「おお、サクラだ」
「主」
「あ、コガネちゃん」
「店主からお使いの追加を頼まれた。全員で言って来いって」
「あ、そうだったの?」
「うん。行こう」
「はーい」
サクラが私の肩に止まった。
モエギも肩に止まっているので、いつもの両肩に小鳥を乗せるスタイルになった。
なんで肩なのかな?というかサクラはコガネちゃんの肩でもいい気がするんだけどな……
あれ?なんでコガネちゃんちょっと羨ましそうなの?
「お使いと言えば、コガネちゃんとサクラはどこに行ってたの?」
「王都の外に行ってた」
「えっ!?」
「なんか、嫌な魔力がするから見てきてくれないかって言われて調べに行ってたの」
「そうだったのか……ちなみに原因分かった?」
「分からなかったけど、なんかすごく嫌な魔力だったよ。しかもすごく強力な魔力」
「うーん……よく分からんが嫌な予感がするね」
「だね。主、気を付けてね」
「分かった」
何に気を付ければいいのかは分からんが。
とりあえず、今はお使いを済ませちゃいますかね。




