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47,Qどうですか?A強いです……すごく。

 ウルフ族が現れた。

 キマイラの騎士団が応戦した。

 アオイは怯えながら観戦している。


 そんな状態が約10分ほど続いていた。

 ウルフ族は確実に数を減らし、騎士団から負傷者は出ていない。

 キマイラ騎士団、予想以上に強かった。


「ファルさん、あと何体ですか?」

「ん〜……あと15体、かな?」

「結構減りましたね」

「でも残りは青狼以上しかいないからな〜案外時間かかるかもよ?」

「そう……ですかね?」


 ウルフ族との戦場ではヴィスリさん&コガネ無双が延々と続いている。


「……早く終わっちゃうかもね?」

「そう……ですね」


 2人があんまりにも強いので、周りの人たちは若干暇そうだ。

 でも油断はしていない。さすが。


「ファルさんはあの無双に参加しないんですか?」

「ボクの今回の任務は残党がいないかどうかの確認とアオイちゃんの護衛だからね~戦闘は関係ないよ」

「関係ないんですか?」

「シルトが参加しろって言うなら参加するけど……言われてないし、いいかなって」

「確かに参加しなくても勝ちそうですしね」

「2人が無双しちゃってるからね」


 窓枠に顎をおいて外を眺めていたら、1体のウルフ族がこちらに向かってきた。

 ……ああ、また狙われた……

 戦闘開始直後からちょいちょい私を狙ってくるやつがいるのだ。

 そんなに私を攻撃したいのか?

 おうおう!やれるもんならやってみろ!1発でも当てられればお前の勝ちだぜ!リアルに!!

 そんな心構えで向かってくるウルフ族を見ていると、ウルフ族は横にぶっ飛んだ。

 コガネがドロップキックをかましたのだ。


「……まさかのドロップキック……」

「いい蹴りだったね〜コガネ君さすが」

「確かにいい蹴りでしたけども……」

「魔法じゃないのかよ、は言っちゃダメだよ」

「ういっす……」


 横を見ると、ファルさんも遠い目をしていた。

 やっぱり物理攻撃に思う所はあるらしい。

 そりゃね、本来白キツネって魔法攻撃が基本の種族ですからね。なにが悲しくてドロップキックなんて技を覚えたのか……というかどこで覚えたのか……


「主、無事か?」

「うん。コガネ君の見事な蹴りのお陰で」

「練習しといて良かったな。ドロップキック」

「……どこで教わったの……?」

「クリソベリルのところで」

「あの人たちかぁぁぁ!!」


 納得した。心底納得した。

 あの人たちならドロップキックだろうが、膝蹴りだろうが、かかと落としだろうが、完璧にこなしてしまうだろう。

 でも、うちの子にあんまり物騒なこと教えないで欲しい。


「ちなみに誰?」

「アヤメとジェード」

「まさかの2人体制……」


 アヤメさんはともかくジェードさんまで……

 でもなんでドロップキック?なんで物理攻撃?

 しかも無駄に完成度高いんだけど?


「魔力切れの時に使える技を教えてくれって言ったらこれを教えてくれた」

「……いや、うん……そっか」

「役立っただろ?」

「せ、せやね……」


 コガネ君は若干のドヤ顔と親指を立てるポーズを残して戦闘に戻っていった。


「……アオイちゃん、クリソベリルとお知合いなの?」

「あ、はい」

「……考えて見ればクリソベリルの本拠地ってガルダだったね〜そっか〜知り合いなのか〜」


 ファルさんは疑問を自己処理したようだった。

 クリソベリルの本拠地と私の現住所が同じ国だからといって知り合いであるとは限らない……というか確率低いと思うのだが、ファルさんはそのらへんに思考を持っていかないようにしているようだ。

 考えてもどうにもないことは考えない主義らしい。


「お?残り1桁かな?」

「わぁ、ほんとに早く終わっちゃいますね」

「そうだね〜」


 こうしてのんびり話している間にもキマイラ騎士団の猛攻は続く。

 数頭のウルフ族が逃げようとするが、結界かなにかに阻まれて逃げられない。

 魔力を感じる気がして馬車の外を見渡すと、前から2番目の馬車の上に人が立っていた。

 杖を持っている。この人がこの辺り一面に結界を張っているようだ。


「ファルさんファルさん」

「なーに?」

「あの人、魔法使いですか?」

「そうだよ〜ルルク君。第一部隊唯一の魔法使い」

「この結界も、そのルルクさんが?」

「うん。ルルク君は魔力強大だから色々1人で出来ちゃうんだ」

「へぇ〜……」


 すごい人のようだ。

 じぃーっと見ていると、気付かれたようだ。

 ルルクさんがこっち見た。

 そして、すぐに目線を逸らした。


「あ、ルルク君対人恐怖症気味だから、初対面の人と目を合わせられないんだよね〜」

「……難儀ですね……」


 私も人のこと言えない気もするが。

 ……でもまあ、私はちょっと人見知りなだけだし!

 エキナセアで接客やってたらだいぶ改善されたし!


「それにしても……私にも分かるってことはかなりの量の魔力ですよね?」

「そうだね〜ボクなんてこの結界のお陰で安心しきっちゃって寝そうだよ〜……ふぁぁ……」

「寝ないでくださいね!?」

「うん……大丈夫大丈夫……」

「すごい眠そう……」


 本当にうつらうつらし始めたファルさんを揺さぶっていると、窓枠にヴィスリさんが着地した。

 びっくりした。


「おい、ファル」

「うぅ……あ、シルト。どうしたの?」

「1体隠れた。赤狼だ」

「ん〜。ちょっとまって〜」


 まだ眠いのか、ファルさんは右手で目を擦りながら左手を真っ直ぐに伸ばして窓の外に向ける。

 次の瞬間、ファルさんの手を中心に空気が波打ち始めた。これは、あれだ。コガネがよくやるヤツ。


「なんだっけ……魔力波?」

「ええ。ファルは、狼系の生物の捜索に長けていますからすぐに終わります。……大丈夫ですか?」

「あ、はい。もう大丈夫みたいです」


 私はこれが苦手だったりするのだが、ファルさんの魔力はいつもより慣れるのが早かったのでどうにか大丈夫そうだ。

 慣れれば平気なのだ。

 慣れるまでが長いけど。


「シルト〜いたよ〜結界ギリギリの岩の影〜」

「分かった。ありがとな」

「いえいえ〜」


 ヴィスリさんはファルさんの頭を軽く撫でて戻っていった。

 なんだろう……こっちまでほっこりする……


「さて、シルトが倒しに行ったのを入れて残りは5体かな」

「わあ早い。」

「でもこっからが大変だよ〜」

「そうなんですか?」

「うん。ウルフ族は圧倒的劣勢になって逃げられないことを悟ると、姿を消して魔力も消して隠れ始めるんだ」

「なにその高度な技」


 なんかよく分からない世界の話になってきたが、大変だということだけは分かった。

 そしてそんな隠密行動を取るウルフ族を探し当てられるファルさんがすごいことも分かった。

 とりあえず、もう少し観戦することになりそうだ。

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