43,Qなんでしたか?A使い魔、だったらしいです。
「この部屋つかって〜ベッド2つあるし」
「おお、広い」
レヨンさんに案内された部屋は、大きな窓から陽が差し込む綺麗な部屋だった。
広い。綺麗。なんか豪華。
「ベッド、1つでも大丈夫なんだけど……」
呟いたのは、警戒を解いて変化したコガネちゃん。
確かに寝るときはキツネ状態だもんね。
「ん?そうなん?」
「寝るときは無意識だから、キツネに戻る」
「へぇ〜そうなのか……」
「人型になる時は、意識がしっかりしてないといけないの。あと、魔力も必要」
「人型の時は自然に魔力消費するの?」
「ううん。慣れれば平気」
「なるほどねぇ……慣れか……」
レヨンさんはいつの間にやら持ってきたメモにコガネちゃんが言った内容を書いている。
すごくイキイキしてる。楽しそう。
「あ、そうだ。確認していい?」
「なに?」
「コガネちゃんはアオイちゃんの……」
「使い魔」
「え?コガネ、使い魔だったの?」
「え?違うの?」
初耳です。
使い魔って、魔女の黒猫のイメージが強いんだけど。
違うのかな?コガネ白いし。
「アオイちゃん、コガネちゃんと契約してないの?」
「契約……?」
「あ、知らないのか」
「はい。知らないです」
「普通、魔力を持った動物が人間を主に選ぶと、契約をして契約獣になるんだよ」
「契約獣……使い魔とはどう違うんですか?」
「使い魔は対等な関係、かな。使いって言っても強制力はないんだよね。
契約獣は人間が上。命令に強制力があって、契約した獣を自由に扱える」
あ〜なるほど。そうゆうことか。
うむ。分かった。認識出来た。
なら別に使い魔のままでもいいかな。
「ちなみに契約には魔力契約と血力契約っていう二種類があって、分かりやすく言うとね、魔力契約が相互同意の元行われる契約で、血力契約は血で縛る契約方法。これは、獣側の同意が無くても行えるから、一部の人には嫌われてる」
レヨンさんは右手の人差し指をピンと立ててそれをメトロノームのようにチクタクと動かしながら説明してくれた。
「それ、やり方以外に違いってありますか?」
「結構あるよ。まず、危険性。
血力契約は契約者の魔力やら精神やらが未熟だと、獣に食われる。てか呑まれる。
魔力契約は獣側からも同意を受けてるから危険性は小数点以下だね。
あとは、契約獣のステータスにも変化があるかな。
これも契約者次第で、血力は契約者の最高ステータスに影響されて弱まったりする。契約獣の最高ステータス以上になることは絶対にないけど。
魔力の方はむしろ強く出来る。契約獣が契約者の魔力を少しづつ蓄えて、本来はなれない魔力持ちが人型になったりする」
レヨンさんは楽しそうに説明してくれた。
好きなのかな?人に教えるの。
「……うん?血力契約、欠点だらけじゃないですか?」
「うん。欠点しかない」
「やる人いるんですか?」
「むしろ血力が主流だよ」
「え?なぜ?」
「魔力契約できる人材がいないんだよ」
「……えーっと……?」
「魔力契約には双方の同意が必要なわけだけど、そもそも人の言葉を喋れるような獣はめっちゃ強くて会えないし、信用してもらって契約……なんて無理ゲーなわけよ」
「あ、なるほど。意思の疎通が出来ないからですか。……あれ?レヨンさん、私……」
「だからアオイちゃんはチートなんだって」
「そういうことだったんですか!?」
私、意思疎通できる。魔力契約の一番の壁がない。
つまり、獣たちが私を気に入ってくれれば契約出来ちゃうわけだ。
普通に喋れるから認識のすれ違いは起こらない。
「そんなわけでアオイちゃん」
「なんですか?」
「コガネちゃんと契約してみない?」
「え!?いや、コガネちゃんの意思は……?」
「構わない。というかやりたい」
「おおお、なんかすごく積極的……」
「魔力契約にデメリットはほとんどない。むしろ主を守りやすくなる。やらない理由が見当たらない」
「そうなの?」
「確かにお互いの魔力感知は出来るようになるね」
「……私にも、コガネちゃんの魔力を感知出来るようになると?」
「そゆこと」
「……やりますか」
これで迷子にならなくなるかも知れない。
というか、コガネちゃんが嫌じゃないのなら問題はない。
「魔力契約のやり方は簡単だから、アオイちゃん覚えちゃって。これから契約獣が増えまくるだろうし」
「増えまくる……?」
「少なくとも現在3体でしょ?」
「あ、この子たちもやるんですか?」
「ピッ!」「チュン!」
「おお、やりたいのね。分かった分かった」
契約の仕方は、確かに簡単だった。
手順もそんなに多くない。
①契約獣に名前をつける
②契約獣がその名前を受け入れる
③契約者、契約獣が同時に魔力を放つ(軽く)
④契約者、契約獣が同時に「契約完了」と言う
ざっとこんなもんかな。
マジで簡単だった。
これで出来るのかどうか心配なくらい。
まあ、とりあえずやってみましょ。
下準備は、魔法陣を書いておくこと。全く同じ物を2つ書いて、それぞれ契約者と契約獣が中心に立つ。
魔法陣は、それからずっと使うらしいので簡単なのにしました。
これが私の陣になるそうです。
そんなわけで。準備は整ってるわけで。
やりますか。
セリフがちょっと恥ずかしいけれども。
「新たに契約を結びし獣、汝の名、コガネ」
コガネのいる側の陣が淡く金色に光る。
コガネが名前を受け入れた証拠、らしい。
なので右手を伸ばして、コガネ側の魔法陣に魔力を飛ばす。ちょっと練習したら、魔法陣の間くらいの距離なら飛ばせるようになった。
コガネも魔力を飛ばしたらしく、二つの魔法陣は同時に青く光った。
ここで一泊置いて、
「「契約完了」」
魔法陣が同時に赤く光る。
これで、契約完了だ。
……おお、うまくいった……
驚いた……本当にコガネちゃんの魔力が分かるよ……若干だけど……
「おお、主の魔力だ……」
コガネちゃんはコガネちゃんでなにやらニコニコしている。可愛いからなんでもいいか。
「ほおぉぉ……いいものが見られた……」
レヨンさんはレヨンさんでホクホク顔だ。
良かったですネ。
「ピー!」「チュン!」
「分かった、ちょっとまて、名前ならすぐにつけるから!」
2羽の鳥たちからは私たちにも名前をつけろ、そして契約しろと急かされた。
「コガネちゃん、ちょっとお話聞いてもいい?アオイちゃんが鳥たちの名前を考えてる間」
「うん。構わない」
「そんなわけでアオイちゃん。名前決まったらリビングに来てちょうだいな」
「分かりました〜」
コガネちゃんとレヨンさんが部屋を出ていく。
さて。名付けタイムだぜ!




