32,Qコガネと2人ですか?Aクリソベリルが一緒です。
買い物に行ってから3日が経った。
今日が出発である。
ちなみに、買い物に行った際は聞いていなかった目的地と行く理由は、『キマイラに錬金術師に会いに行くこと』らしい。
「アオイちゃん、そろそろ来るわよ〜」
「あ、はーい」
そのキマイラは若干遠いらしく、……というか国外はだいたい馬車で移動するらしく、最初はキマイラ方面に向かう商人たちの馬車に同乗させて貰う予定だったのだが、ヒエンさんの知り合いがちょうどキマイラを通過して移動するというので、そちらに乗せて貰う事になったのだ。
で、その人たちがそろそろ来るらしい。
「ア〜オイちゃ〜ん!コ〜ガネちゃ〜ん!」
……この声は。
「わあ、やっぱりアヤメさんだ」
「うふふ〜久しぶりアオイちゃん♡あら、コガネちゃんは?」
「ここにいる」
「あら……今日は男の子バージョンなのね……」
扉を開けるなり抱きついてきたのは、クリソベリルのアヤメさんだった。
アヤメさんに頭を撫でられながらヒエンさんにジトッとした目線を送ると、「嘘は言ってないわよ★」という顔をしていた。
さすがはサプライズ大好きヒエンさん。
「アヤメ、早くして」
「いいじゃない。そんなに時間経ってないでしょ」
「あ、モクランさんだ〜おはよーございます」
「うん。おはよ。君からも言ってくれない?このままだとアヤメが動きそうにないから」
「はーい。……だ、そうなのでアヤメさん、行きましょう?」
「分かったわ(キリッ)」
アヤメさんは驚くべき変わり身の速さで私を解放し、入口に向かっていった。
とりあえず、アヤメさんに撫でられまくってボサボサになった髪を直しつつ、大量の荷物を抱えるコガネ君に近づく。
「コガネ君、大丈夫?」
「問題ない。……主、髪ボサボサ」
「あとで直すよ〜。さて、それじゃーヒエンさん、いってきます」
「いってきます」
「はい。いってらっしゃい。気をつけてね」
両手の塞がっているコガネ君のために扉を開け、ヒエンさんに手を振ってエキナセアを出る。
店の前に停めてあったクリソベリルの馬車は、いつぞやのチグサさんたちの馬車程ではないにせよ、大きなものだった。
「おお、でっかい」
「まあ、色んな物を積み込むからね。とりあえず、こっち。先に荷物置いたほうがいいよ」
モクランさんに促されて、コガネ君が馬車の後ろ側に歩いていく。
ついて行こうとしたら、アヤメさんに捕まった。
「荷物は後ろから入れるけど、人は前からでも乗り降り出来るの。先に乗ってましょ」
「はーい。それにしても立派な馬車ですね……」
「先代のリーダーが作ったらしいわ。これを引ける馬を探すのに苦労したそうよ」
「やっぱり馬も立派じゃないといけないんですか」
喋りながらアヤメさんに手を引かれて馬車の前方にたどり着く。
すると、そこには1人の男の人がいた。
……なんか見覚えがある気がする。
「やあ、久しぶり……と言っても、覚えてないかな?」
「えーっと……あ!月花羊のクエストの時にポーション買ってた方ですか?」
「うん。よく覚えてたね」
そうだそうだ。月花羊の時にいた。
……この人がいるという事は……まさか……
「今回はコーラルはいないよ」
「へっ!?あ、そうですか……」
「うん。君たちと一緒に行くことになったから、アヤメがコーラルだけは来るなって言ってさ」
「それは……ご迷惑を……」
「大丈夫大丈夫。そんなに痛手じゃないしね」
私がコーラルさん……例のイケメン(笑)さんを苦手視しているのはクリソベリルの方々の共通認識らしい。
「今はコーラルなんてどうでもいいじゃない。早く乗りましょ」
アヤメさんが地味に酷い事を言って馬車に乗り込む。
……この馬車、乗り口高い。
アヤメさんはなんでもないかのように乗り込んだか、私には無理そうだ。
「アヤメさーん。ヘルプミー」
「あら、高かった?ちょっとまってね……はい、掴まって」
アヤメさんが馬車の柱みたいな部分を片手で掴んで逆の手を差し出してくれる。
どうでもいいけど、アヤメさんのこの体勢めちゃくちゃカッコイイ。
そんなカッコイイアヤメさんに有り難く掴まらせて頂き、そのまま引っ張り上げて貰う。
フワッ
「うひゃあっ」
あまりにも軽々と身体が浮かび、前に倒れ込む。
ポスッと音をたててぶつかった先は、アヤメさん。
そのまま抱きしめられる。
「大丈夫だった?」
「お陰様で」
「なら良かったわ。でも、台かなにかあった方が良さそうね」
アヤメさんは言いながら私を抱き上げて、馬車の端まで移動する。
そして窓の横に座る。
……なんで私、抱き上げられた?
ちなみに今はアヤメさんの膝の上。
「そろそろ出発するってさ……って……捕まってる」
「本当だ。主が捕まってる」
「結構居心地いいです。アヤメさんの膝の上」
「そう?ならずっとこのまま……」
「ジェード、出発していいよ」
「了解。行くよ〜」
アヤメさんの言葉を遮ってモクランさんが馬の手綱を握るジェードさんに声をかけ、馬車が進み始める。
初・馬車である私はアヤメさんの膝の上でウキウキワクワクしている。
考えてみれば、ガルダから出るのすら初めてなのだ。
……すごく、楽しみでござります。




