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18,Q試験は大丈夫そうですか?Aとても心配です。

 髪飾りを買いに行ってから、だいたい一カ月ほどが過ぎた。つまり、異世界に来て二ヶ月。

 ……いやぁ、飛んだねぇ。ぶっ飛んだねぇ。

 ここまで17話使って一カ月経過させたくせに、今度はたった一文だよ。

 理由?簡単。

 この一カ月ただひたすらポーション作って過ごしたからさ!

 さしてお伝えすることがなかったのさ!


 と、まあ、そんなわけでして。

 この一ヶ月で起こった変化といえばコガネちゃんの髪に綺麗な髪飾りがくっついたくらいでして。

 あ、そうそう。髪飾りなんですが、お昼寝から起きてきたコガネちゃんに渡してみたら、すっごく喜んでくれて、あれから毎日つけてます。

 いやあ、可愛い。


 そんなことを言いながら、今日もひたすらポーション作ります。

 さすがに一ヶ月も作り続けると慣れてきて、製作時間は40分くらい短くなった。

 だいぶ慣れたんじゃないですか?

 最近はヒエンさんも完全に付きっきりってわけじゃなくなってきたし。

 これ、割と簡単に試験受かるじゃね!?


「アオイちゃん、どう?」

「あ、ヒエンさん。もうちょいだよ〜」

「そう。それじゃ、終わったらリビングにきてちょうだい。店番はコガネちゃんに任せてあるから」

「はーい」


 返事をして、ナベに目を落とす。

 あ、もう大丈夫だ。というか、これ以上煮るとスライム状の物体が出来てしまう。

 いやあ、危ない危ない。調子に乗って失敗するところだった。


 最近独り言増えたな〜

 などと考えながらナベの中身を濾し器に移す。

 最初はやるたびに筋肉痛になっていたこの作業も、今では腕にそこはかとない疲労感があるくらいまで進化した。だいぶ筋肉がついたようだ。


 中身を移し終わったらビンを取りに行く。

 これは、持ち上げるのは諦めて引きずる。

 しょうがない。だって持ち上げて運ぼうとすると、濾し器にいれたポーションがほとんど落ちてくるくらいの時間がかかるのだ。


 とにかく、ズーリズーリと箱を引きずり、柄杓を片手に濾し器の前に腰を下ろす。

 そしてひたすらポーションをビンにいれていく。

 なんだかんだこの作業に慣れるまでが1番時間がかかった。


 ポーションを全てビンにいれたら今日の分の製作は終了だ。出来上がったポーションを籠にいれてお店へ持っていく。


「あ、主。お疲れ」

「おー。コガネちゃんお疲れさん」

「主、店主が呼んでたよ」

「はーい。ごめんねコガネちゃん、店番よろしく」

「うん」


 コガネちゃんに籠を渡してリビングに行く。

 リビングではヒエンさんがテーブルに何か書かれた紙を広げていた。


「ヒエンさーん?」

「ああ、アオイちゃん。まあとりあえず座りなさいな」


 手招きされたのでヒエンさんの横に座る。

 それにしてもなにやら難しそうなことが書かれた紙たちである。


「ヒエンさん、これは?」

「これは薬師試験の、筆記試験用の対策資料ね」

「……筆記、試験、ですか」

「そうよ。初級の試験は実技8割筆記2割でやるの」


 なんてこった。筆記があるなんて聞いてない。

 落ちるよ〜落ちちゃうよ〜

 筆記系が1番出来ないんだよ〜


「まあ、2割だから。そんなに難しくないわよ」

「本当に?本当に大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。アオイちゃんなら実技で高得点叩き出すだろうから筆記は2、3問あってれば大丈夫」


 なるほど。確かに実技が8割なんだよね。

 なら、どうにかなるか……?


「それでヒエンさん、これがその対策資料?」

「そう。知り合いに頼んでここ数年の資料をまとめて貰ったの」

「へぇ、すごい量だね」

「まあね。でも覚えるのは一部の最近ずっと出てる問題と、私の山勘部分だけだから割と少なくなるわよ」

「ヒエンさん、山勘当たるの?」

「当たる当たる。自分の試験の時も山勘で一部しか勉強しなかったけどほとんどあってたわよ」


 すげぇ。恐るべしヒエンさんの山勘。


「ま、とにかくアオイちゃんにはこれからひたすらポーション作りながらこれを暗記してもらいます」

「うっ……はーい。頑張ります」


 渡された紙に目を通す。

 内容は主に薬草の繁殖地とか、どんな効果があるのかとか、その他基本的なことだった。

 ……うむ、どうにかなりそうだ。


「それじゃあアオイちゃん、残り約40日頑張って」

「はーい。まあ、これならどうにか……」


 紙を持って、店に移動する。

 店番をしていたコガネちゃんが興味深げに紙を覗き込んできた。


「コガネちゃん、興味あるの?」

「うん。主が見てるものには、だいたい興味がある」

「それは、なんというか……」


 なにかが違う気がする。


「主は、人と見てる世界が違う気がする。だから、なにを見てるのか気になる」

「違うかな?」


 そんなことはないと思う。

 でも確かに、見え方は違うのかもしねないな。

 私はあくまでこの世界の住人ではないから。


「それで主、この紙は?」

「あ、これね、筆記試験の対策」

「筆記試験もあるんだ」

「らしいよ〜」


 なにはともあれ、頑張らなければ。



 その日から、午前中はポーションを作り、午後は店番をしながら筆記試験対策資料の暗記をする日々が続いた。

 今日も、ひたすら暗記に神経を集中させている。


 そんな中、チリリン♪と音がして、店の扉が開いた。


「アーオイちゃーん!コーガネちゃーん!」


 ……この声は。


「アヤメさん、いらっしゃい」

「いらっしゃいませ」

「あー。今日も可愛いわね。本当、なんでこんなに可愛いのかしら」


 相変わらずの早業で、もうカウンターのイスに座っている。


「ご注文は?」

「ポーション5本とハイポーションを2本お願い。

 そういえば最近、ずっとコガネちゃんが店番してるわよね」

「うん。主は試験の勉強で忙しいの」

「試験?」

「あ、はい。そうなんです」


 コガネちゃんが棚からハイポーションを出しているので、私が半額のご案内をすることにした。


「アヤメさん、アヤメさん、こっちのポーションだと半額なんですがどうしますか?」

「半額……あ、もしかしてアオイちゃん、薬師試験受けるの?」

「そうなんです。受けるんです」

「なるほどね〜じゃあこっちのポーションでお願い」


 アヤメさんがいうと、すぐさまコガネちゃんが籠からポーションを5本取り出す。

 この間、私がポーションを取ろうとしてイスから落下しそうになってから、私には取らせてくれないのだ。


「えーっと、それじゃー半額のポーション5本とハイポーション2本で85ヤルになります」

「はい」

「……はい、ちょうどいただきました」


 私がお金を受け取ると、コガネちゃんが袋にいれたポーションをアヤメさんに渡す。

 最近出来上がったコンビネーションの形。


「ありがとう。……アオイちゃん、頑張ってね。ガルダの試験は、確か一ヶ月後くらいでしょ?」

「はい。確かそのくらいです。ありがとうございます。頑張ります」


 アヤメさんは手を振って去って行った。

 長居しなかったあたり、今日は用事があるのだろう。


「ところでコガネちゃん、ガルダってなに?」

「……主、知らなかったの?」

「うん」


 コガネちゃんが目に見えて驚いてる。

 かなり常識的なことなのだろう。


「ガルダはこの国の名前。通称〔円形の国、ガルダ〕聞いたことない?」

「うん。ない」

「やっぱり主、変わってる」


 なるほど国の名前か。

 そうかそうか。

 でも、円形ってなんだ?


「コガネちゃん、円形ってなに?」

「ガルダはだいたいなんでも丸いの。王都を囲む塀とか、王城とか。だから、円形の国」

「なるほど。分かりやすい」


 丸いのか。そうか。

 確かにこの国の塀の角って見たことないな。


「主は、薬師試験の前に勉強することが色々とあると思う」

「うん。私もそう思うよ。試験終わったら勉強しよう」


 なにはともあれ、あと一ヶ月で世界統一認証薬師試験である。

そういえば出してなかった国の名前。

20に行く前に出せて良かったです。

ちなみに、ガルダの王都はスパルナ、王城はガルドマーンという名前がついてたりします。

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