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17,Qなにか良いことでもありましたか?Aはい!

 ポーション作りを始めて1週間とちょっとが経った。

 今日は、エキナセアの定休日らしい。

 ということは、今日1日暇なのだ。

 ヒエンさんはなにやらポーションよりはるかに手間のかかる薬の仕込みをするらしく作業部屋にいる。

 コガネちゃんは今日が休みだと知るやいなや部屋(私の)に戻って行った。覗いてみたらキツネに戻って巣の中で丸くなっていた。ちょうど日が差して暖かいらしい。

 ちなみに、コガネちゃんは寝るときいつもキツネに戻ります。


 私は……どうしよっかな〜暇だな〜。

 本でも読むか……いや、それは保って10分だ。

 うーん……どうしましょ。


 唸っていると、リビングの店に繋がっているのとは別の扉が開いた。

 この扉の繋がっている先は庭である。

 庭に出るための扉は2つ。

 1つはここ。もう1つは作業部屋だ。

 と、なれば。入って来るのはヒエンさんだろう。

 むしろそれ以外は困る。


「アオイちゃん、ちょっといい?」


 よかった。ヒエンさんだ。


「どうかしたの?ヒエンさん」

「渡さないといけないものがあったのよ」


 ヒエンさんは言いながら歩いてきて、ポケットから何かを取り出した。

 これは、封筒?


「ヒエンさん、これはなーに?」

「お給料。今日で一カ月でしょ?うちは月の終わりが給料日なの」

「……オキューリョー?」

「そうよ。私はアオイちゃんに、うちで働くかって聞いたんだもの。実際働いてるんだからお給料は払うわよ」


 ……言われてみれば、そんなことを言われた気がする。

 いやでも、住む場所と三食の食事を提供して貰っているにもかかわらずお給料まで貰ってしまっていいのだろうか。


「先に言っておくと、食事代は抜いてあるわ。部屋はどうせ余ってたし、エキナセアでは薬師の免許を持っている、または取ることになった人からは部屋代を取らないことになってるの」


 先手を打たれた。


「本当に貰っていいの?」

「ええ。あ、これ、アオイちゃんの財布ね。こないだ出かけたときに見つけたから買っちゃった。気に入らなかったら変えて」


 渡されたのは、水色の地に薄紫の小さな花が刺繍されたがま口。

 ……これは、なんというか。


「ヒエンさん、ありがとう。なんか笑えてきたよ」

「ふふふ。そうでしょ?」

「これつまり、私の名前だね?」

「ええ。見た瞬間、衝動買いしちゃった」


 薄紫は「藤色」水色は「葵」ということだろう。

 そのまんま私の名前である。

 これを気に入らない理由がどこにあるというのか。


「ヒエンさん、ありがとう。すごく気に入ったよ」

「ならよかった。……コガネちゃんは?」

「寝てるよ〜日が差して暖かいみたい」

「なるほどね。アオイちゃん、出かけるなら気をつけてね。今日はボディーガードがいないから」

「はーい」


 確かに気をつけないと。

 今日はエキナセアの制服着てないし。

 作業部屋に帰っていくヒエンさんの後ろ姿を見送り、給料袋を開ける。

 入っていたのは銀貨1枚と半銀貨2枚、それから銅貨が1枚だ。


 ここで説明しておこう!(当然の説明キャラ)

 前にも言ったかもしれないが、この世界のお金は6種類の硬貨だ。

 半銅貨……1ヤル、銅貨……5ヤル、半銀貨……10ヤル、銀貨……100ヤル、半金貨……1000ヤル、金貨……5000ヤル。

 つまり給料は125ヤル。


 ……多くね?

 この世界、一月80ヤルくらいあれば生活できるとか聞いたことをあるぞ。

 いや、【世界とは何か】に書いてあったことだから読んだことあるぞ、か。

 とにかく、かなり自由が増えたようだ。


 ……どうしよう。なに買おう。

 いや、貯めるか?特に欲しいものもない……あ。あったわ。欲しいもの。

 髪留め。コガネちゃんの髪いじるのに欲しかったんだった。

 買おっかな。買っちゃおっかな。


「とにかく、出かけますかね」


 悩んでいても仕方ない。

 悩むなら出かけてしまえホトトギス。だ。



 大通りを1人で歩く。

 なんか久々な気がするな〜最近店から出てなかったしな〜

 こう久々だと、街の至る所が気になる。

 ドラゴン襲撃の傷跡はもう完全に消えていて、街は私が来た時と変わりがない。

 ……まだ1週間ちょっとしか経ってないのにな。

 やっぱりあれか、魔法とかあるからか。


 考えながらプラプラしていたら、一軒の店に目が止まる。

 髪飾りの店のようだ。

 ……案外簡単に見つかったよ。さすが大通り。


 店の扉を押し開けると、カララン♪と鈴がなった。

 店の中は色々な種類の髪飾りで埋め尽くされている。


「いらっしゃいませ〜」


 店員さんに軽くお辞儀をして、店内を見渡す。

 ……これ、どこから見りゃいいんだ?

 多すぎて目移りするな〜

 とりあえず、直感で見ていけばいいか。

 困ったときの第六感だ。


 勘を頼りに店の一角に近づく。

 ……おおう。キラキラしてる……

 でもなんかこう、嫌なキラキラ感じゃないんだよな。言うなればそう、自然のキラキラ感。

 ……伝わらないか。

 とにかく綺麗なんですよ。


「なにかお探しですか?」


 店員さんに話しかけられた。

 そりゃ、こんだけキョロキョロしてたら不思議におもうよね。


「あ、えっと、プレゼント、探してまして」

「プレゼントですか。どのようなものを?」

「それすら決まってなくて……」


 プレゼントでも間違ってはいないはずだ。

 自分用じゃないわけだし。


「なら、贈る相手の特徴を教えてもらってもいいですか?」

「贈る……あ、白いです。すごく」

「白い、ですか。それなら濃い色より淡い色がいいかもしれないですね」


 私のこの説明になんの疑問も抱かないのか。この店員さん。すごいな。


「これなんていかがですか?」


 店員さんが見せてくれたのは、淡い色の花が咲き誇る小ぶりな髪飾り。

 綺麗。とても綺麗。

 でも、コガネちゃんにつけたら埋もれる気がするな。


「……これの、大きいバージョンとかってありませんか?」

「大きいバージョン……ああ、それなら……」


 あるのか。え。普通に驚き。


「少し、色合いが変わってしまうのですが」


 そう言って見せてくれたのは、確かに少し色合いの違う髪飾り。

 さっきのものが赤系統の色でまとまっていたのに対して、これは緑と黄色でまとまっている。

 なにより目を引くのは、1番大きな花だ。

 右上にあしらわれた花の色が、コガネの目と同じ色なのだ。


「これ、これがいい!これにします!」


 結果、即決。

 だって綺麗だし。コガネに合いそうだし。

 これからの季節(夏)に合いそうだし。


「ありがとうございます」


 促されて、カウンターまで髪飾りを持っていく。


「髪飾りが1つで55ヤルです」

「えーっと……はい」

「105ヤルですね。では50ヤルのお返しです」


 受け取って、財布にしまう。


「ラッピングはどうされますか?無料でできますが」

「あ、お願いします」

「では、店内で少々お待ちください」


 店員さんがカウンターの内側から包装用と思われる紙と髪飾りを入れると思われる箱を出して、ラッピングを始めた。

 なので大人しく店内を見て回る。

 それにしても綺麗だ。

 色とりどりの花や鳥があしらわれた髪飾り。

 月や星なんかもある。


 ……これ、どうやって作ってるんだろ。

 というか作ってるのかな?

 いや、作ってるんだろうな。

 そうなると1つ1つ手作りか。

 すごいな〜細かいな〜


「お客様、ラッピングができましたよ」

「あ、ありがとうございます」


 ラッピングしてもらったものを、さらに袋に入れてもらう。


「あの、ここにある髪飾りって、全部作ってるんですか?」


 聞いてしまった。いやだって、気になるし。


「ええ。すべて手作りです」

「す、すごいですね」

「いえ、楽しいですよ。自分の作ったもので、人に喜んでいただくのは」


 確かに、楽しくなければ出来ないだろう。こんなに細かくて、根気がいるであろう仕事。

 つまり、好きこそものの上手なれ。


「もしよろしければ、またいらしてください。購入されなくても、見るだけでもいいですから」

「え、いいんですか?」

「はい。いつでもいらしてください」

「ありがとうございます!」


 この店員さん、すごい美人。見た目もだけど、なにより内側が。


 お礼を言って、ついでに45度でお辞儀をして、最後に手を振ってお店を出る。

 うむ。また来よう。今度は、自分用にこれより小ぶりなのを買いに来よう。


 そう心に決めて、るんるん気分でエキナセアに帰る。

 実に、充実した休日でした。

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