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15,Q試験はいつですか?A3ヶ月後です。

「それじゃあ始めましょうか」


 世界統一認証薬師試験、勉強2日目。

 今日はポーションを作ってみることになった。

 いきなり過ぎやしないかと思ったんだけど、経験が一番だと押し切られてしまった。


「ヒエンさん、この本読んでも全くと言っていいほど理解できなかったよ」

「初級ならどうにかなるわ。頑張って」

「初級があるなら上級とかもあるの?」

「あるわよ。世界統一認証薬師の階級は、下から順に初級、下級、中級、上級、シルバー級、ゴールド級、プラチナ級、最上級、となってるわ」

「多いね。予想の斜め上をいってたよ」


 なんだ。プラチナ級って。キンキラキンなのか?

 ちなみにこれ、凄さパラメータくらいの認識でいいらしい。

 実際、ポーションを販売するときはそんなに関係ないんだとか。


「さてと。始めるわよ」

「あ、はーい」


 ヒエンさんに促されて床に敷かれたマットに腰を下ろす。

 渡されたのは、薬研という道具だ。

 時代設定がちょっと昔のアニメとかで、お医者さんが薬草とか砕いてる、細長いあれ。

 その薬研で薬草を砕く。ひたすら砕く。

 ……予想以上に大変そうだ。


 ポーションを作り始めてから約一時間。

 ひたすら、ただひたすらナベをかき混ぜていたら腕が疲れてきた。

 ヒエンさんはすごいな〜この作業いつもやってるんだもんな〜


「アオイちゃん、ここでこれを入れるの」

「うん?木の実?」

「そう。これが、ポーションの元みたいなものね」

「へぇ〜梅みたいだね」


 渡された実は、梅干しにする前の黄緑色の梅の実によく似ている。


「実際、同じものかもよ?昔、梅は薬だったから」

「そうなの?梅なの?これ」

「こっちの世界の梅、かしらね。この世界に梅は存在しないから」


 話をしながら、梅もどきをナベの中に入れる。

 そうしたら、またかき混ぜるらしい。

 ポーション作りは、ただひたすらナベをかき混ぜる行為だった。

 単純な作業だからこそ辛い。


 その作業をしばらく続け、梅もどきが崩れてきたら横に置いてある巨大濾し器にかけるらしい。

 柄杓を使ってナベの中身を濾し器に流し込む。

 上下運動。腕辛い。

 あー、これ明日は筋肉痛だな。


 ヒイヒイ言いながらナベの中身すべてを移し替え、ポーションが落ちてきている間にビンとコルクを取ってくる。

 ビンの箱重い……くっ、これが日本というぬるま湯に浸かっていた代償か……!全然持ち上がらんぞ……!


「大丈夫?」

「大丈夫……じゃ、ない、です……」


 息も絶え絶えになりながらビンの箱を濾し器の前に移動させる。

 最初から近くに置いとけよ!と、思わなくもないが、他に必要なものがありすぎて、少しだけだが運ぶ時間の取れるビンは少々離れたところに置くしかない。

 ポーション作り、すごく大変。


「アオイちゃん、これで入れてね」

「わあ、柄杓小さいバージョンだね」


 渡された柄杓を使ってビンの中にポーションを流し込む。入れる量の目安は、ヒエンさんがガラス工房の親方に文句を言われつつこだわってつけているビンの球体の真ん中らへん。


「……ヒエンさん、こんな感じ?」

「そうそう。上手。それでコルクを締めたら完成」

「なるほど、最終工程なわけだね」


 もう一息、というか、もう終わりだ!

 ……と、思ったんです。はい。だがしかし。なにぶん量が多い。

 この作業は腕は疲れないが、精神的に疲れる。

 こまかいんだよね。


 その後格闘すること約20分。

 明らかにヒエンさんより時間がかかっている。

 でも、初めてだし。上出来だよね?


「お疲れ様。大変だったでしょ?」

「うん。すごく……ヒエンさんすごい……」

「私は慣れてるもの」

「そっか。慣れか……そういえばヒエンさん」

「なあに?アオイちゃん」

「この大量のポーション、どうするの?」

「特別価格で売るわよ」

「特別価格?」


 ヒエンさんによると、エキナセアでは毎回、認識試験を受ける人が練習で作ったポーションを普通のポーションの半額で売っているんだそうだ。

 半額、つまり5ヤル。

 普通に考えれば大損だろう。材料費は変わんないわけだし。

 でもなぜか大丈夫なのがエキナセアにすごいところ。

 なんでも独自のルートで色々なものを安く仕入れてるんだとか。だから全然平気なんだとか。


「さて。それじゃ〜お店に行きましょう」

「はーい。コガネちゃん大丈夫かな」

「大丈夫でしょ。頭はいいんだから。それに、アオイちゃんより確実に強いわよ」

「デスヨネ〜」


 コガネちゃんは、私がポーション作りをしている間、1人で店番をしていてくれている。

 今日の朝、開店準備をしているコガネちゃんの横を通って作業部屋に移動したら小さなガッツポーズで応援してくれた。可愛いかった。


「コガネちゃ〜ん」

「あ、主。終わったの?」

「うん。どうにか」

「お疲れ様」

「ありがとう。コガネちゃんもお疲れ」


 ヒエンさんはのほほんと会話する私たちの前を通過して、カウンターの端に私の作ったポーションを入れた籠を置いた。

 籠の中には〈特別価格、半額5ヤル。詳しくは店員にお尋ね下さい〉と書かれたカードが入っている。


「さてさて。2人共、店番お願いね。私はちょっと出かけて来るから」

「はーい。いってらっしゃい」

「いってらっしゃい」


 ヒエンさんはエプロンを外してカウンターに置くと、颯爽と出かけて行った。

 なんかカッコいい。


「主、主」

「お?どうしたコガネちゃん」

「試験、いつ?」

「それが、3ヶ月後らしいんだよ」

「……近いね」

「だよね。大丈夫かな」

「主、頑張って」


 そう。3ヶ月後なのだ。

 ヒエンさんは軽〜く言い放ったが、かなりギリギリな気がする。ギリギリアウトな気が。

 でもまあ、コガネちゃんにも応援されたし、頑張るでござりますよ。

今回なんとなく、プロローグの内容のおさらいな感じがします。

あ、どうもどうも、瓶覗でございます。

いつも通り、どうでもいい話を載っけに参上仕りまして候、で、ございます。


〜どうでもいい話〜

ポーションの製作時間


ヒエンさんの場合→約3時間

アオイちゃんの場合→約4時間


この差は確実に経験の差ですね。

ちなみに、ヒエンさんがギルドで有名なのは無茶振り甚だしいからではなく、世界統一認証薬師としてのランクが高いからです。

多分キンキラキンなんです。多分。

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