最終話,Q終わり、ですね。A始まりかもしれませんよ?
エキナセアの話はここで終わりです。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました!
この後、おまけをいくつか連投して締めくくりになりますが、話的にはここで完結です。
なので、今回は後書きを長々書きたいと思います。
お前の話なんて興味ねぇよ!はぁん!!という方は飛ばしてくださいませ。
それではもう少しだけお付き合いください!
全員が魔王の間に立ち、そこに置かれた空席の玉座を睨んでいた。
段々と、嫌な魔力が高まり始めた。
魔王の間の天井、私が入ってきた丸い穴から、真っ赤な月が覗いていた。
月の光は玉座に集まり、そこに魔王を形作っていく。
人の数倍の大きさ、蝙蝠のような巨大な羽、ねじ曲がった角……そこまで見て、目を背ける。
どうやら、私はこれがこの上なく苦手らしい。
魔王が玉座の前に復活し、目の前の勇者たちを睨む。
玉座の目の前を陣取った神速の聖剣、アーリック・ベルと視線が交わった瞬間、魔力が爆発した。
その戦いは、私の入り込む余地なんてなかった。
魔王の動きも、勇者さんたちの動きも全く見えない。
唯一分かるのは、コガネが流れ弾を防いでくれていることくらいだ。
……本当に、私がすることあるの!?
混乱しつつ、現状何ができるわけでもないのでせめて邪魔にならないようにコガネの後ろに座り込み、魔力に酔わないようにコガネの魔力に集中する。
そんな状態がしばらく続き、急にフッと意識が遠のいた。
ゆっくりと目を開けると、そこは見覚えのない白い空間だった。
全く知らない場所なのに、なぜか落ち着く場所。
「……へ?」
落ち着きはするが、知らない場所なのだ。
それに、コガネも居ない。
どうすればいいのか分からない。
とりあえず辺りを見渡してみると、後ろに人が立っていた。
黒い髪をした、中性的な人。
その人の少し離れた後ろの方に、12人ほど人が立っていた。
そして、陰に潜むように、もう3人。
ああ、ここは、この人の空間なのか。
それを理解して、落ち着いた。
すまない
声は発されていない。
口が動いただけ。
でも、声を聞くより鮮明に言いたいことが分かった。
ありがとう
何に対しての謝罪で、何に対しての礼なのかは分からなかった。
問題はなかった。多分そういうことだ。
「……聞きたいことが、あるの」
なんだ?
「あと、いくつ選べる?」
いかようにも
薄れて取るか、濃く減らすか
「……何を、選ぶべきだと思う?」
自由に
やっぱり、正解はくれないのか。
というか、正解はないんだろうな。
しいて言うなら私の選んだものが正解になるんだろう。
……ちょっとくらいレール敷いといてくれませんかね?
「頼っていいのかな」
もちろんだとも
「……逃げて、いいのかな」
必要なことだ
「また、会える?」
時が来れば
「……うん。ありがとう。これは、借りるだけにする」
そうか
時間にしたら、数分の会話。
それでも、お互いの伝えたいことは伝わったようだ。
誰よりも落ち着く雰囲気を放つその人は、微笑んで私に手を伸ばす。
行っておいで、我が愛し子よ
その手が額に触れた時、私の意識は、光の中に落ちて行った。
ここに来た時と同じように意識が遠のき、ゆっくりと目を開けるとそこは魔王の間。
私には全く見えない高位の戦いが続いていて、コガネが私を守ってくれている。
やることは分かった。やり方も知ってる。
でも、私1人じゃ出来ないこと。
頼っていいと言ってた。あの人も、かなり頼ってるみたいだし。
多分、そういう種族なんだろうな。
「コガネ」
「なんだ、主」
「やらなきゃいけない事が出来た」
「……俺は、どうしたらいい?」
振り返ったコガネに、手を伸ばして魔力を伝える。
これで、伝わるはず。だって神獣だもん。
コガネから前に聞いた神獣の定義はかなり雑だったけど、実際は「神が直接自らの配下に置いた12の者」
つまりは、神の補佐役みたいなものだ。
「……分かった。出来るはずだ」
「流石コガネ。始めよっか」
「ああ」
私の魔力は弱い。
自分を守る弱い結界しか張れないし、攻撃魔法はほとんど使えない。
だから、例え神から借りてきた力でも、1人で魔王の循環を破壊するなんて出来ない。
最初にコガネが契約獣になったのは、多分そのため。
あの人の最初の契約も白キツネだったみたいだし、あの人が1番頼るのも白キツネだ。
神の力の行使には、白キツネの補佐が必要である。
どんな形での補佐かは決まってないみたいだけど、これは覆らない決め事らしい。
私の場合は、魔力の増幅と伝達。あの人は、多分魔力情報の管理。
今回は、私が放った循環破壊の魔力を、コガネが増幅させて魔王に放つ。
神の愛し子だか何だか言われているし、覚醒もしたみたいだが、私の基本スペックは今もそんなに変わらない。
なので目の前の戦闘は全く見えないし、その状況で魔王に魔力をぶつけるなんて出来るわけがないのだ。
だから、私は魔力を練って放つだけ。
そこからの大変なことは全部コガネに丸投げした形になった。
……しょうがないじゃん、これじゃなきゃ出来ないんだもん。
それにほら、コガネ優秀だし。
私がやるよりずっと成功率高いって。
「いけるぞ、主」
「よし、じゃあ、お願い!」
「任せろ」
コガネの頼もしい声を聞いて、背に当てていた手から練り終わった魔力を放つ。
その魔力はコガネの体内魔力と混ざることなく背から手の先へと移動し、その間に幾分か強化された。
コガネが放とうとしている魔力に気が付いたのか、魔王が大きく動こうとして、2人の勇者に行く先を阻まれた。
そして、魔王の動きを妨害するための壁が現れ、2人の勇者はそこから飛び退いた。
神から借りてきたその魔力は、循環破壊なんて物騒な内容の癖にやたら温かな魔力で、魔王に当たると同時に白く爆ぜた。
視界が白一色で埋まり、一瞬、あの人が見えた気がした。
うん。もう大丈夫みたいだし、これは返すね。
そんな私の言葉が聞こえたのかは知らないが、借り物の魔力は持ち主の元へ戻った。
私の視界に色が戻る時には、もう魔王は消えていて、コガネが心配そうに私を見ているだけだった。
「……1発成功、流石コガネ君」
「主のお供第1号だからな」
普段通りの私の様子に安心したのか、コガネはフッと微笑んでそう言った。
なんだかとても自慢げ。
コガネ君にしては珍しく、思いっきり撫で繰り回したい雰囲気が出てる。
撫でようかな……どうしようかな……なんて悩んでいたら、ヒエンさんに思いっきり抱きしめられた。
「わっぷ!……ヒエンさん?」
「……ごめん、ちょっとだけこのままでいさせて」
そんなことを言って、身長的にキツイだろうに私の肩口に顔を埋める。
どうしたらいいのか分からないのでとりあえず抱きしめ返して気が付いた。
私とコガネ以外の、先代、今代勇者パーティー全員がその場に座り込んでいた。
「主は神の魔力で、俺はその影響で覚醒状態だったから平気だが、魔王の魔力を直接浴びていたんだ、これくらいで当然だな」
「……それも、あるんだけどね。どっちかっていうと精神的に、泣きそうなんだわ」
私の肩口でヒエンさんがモゴモゴと呟く。
「……泣いていいんですよ?」
「嫌だ。錬金王はカッコつけたいんだよ。女なのに「王」な理由はそこなんだよ」
「……カッコつけすぎたと」
「女の子にキャーキャー言われるのっていいじゃん?」
動作が男性的だとは思ってたけど……理由がそこそこくだらなかった。
ヒエンさんの時は普通に女性的だったし、完全に意識してやってるよね。
……うん?女性的なのを意識してやってるのか……?
「……何で私はこんなことで悩んでるんだ……?」
「循環の破壊に要する力がそんなに多くなかったんだろうね。流石愛し子」
フワリと私から離れたヒエンさんは、いつものヒエンさんだった。
いや、正確にはウィルさんだからいつも通りじゃないんだけどね。
「くだらないことを考える余裕があるんだから、大したもんだ」
「主は代行者だからな」
「……もう、あの魔力は返してきたけどね」
「あ、そうなの?」
長い間人間を苦しめ続けた魔王を撃破した後とは思えない緩い会話。
なんとも締まらないが、私にはこのくらいがちょうどいいかも。
その後、何とか動き出した勇者たちの魔力が回復するまで、少しお喋りをすることになった。
「ケイたちはどうするんだ?帰れば英雄、何でも出来るだろう」
「……笑いませんか?」
「笑うわけないだろ、身内に未知の力を技術として確立した馬鹿が居るんだぞ」
「何でそこで私の悪口言った?というか悪口なのかそれ?」
うーん、ゆるい。
始まる前も、終わった後もゆるい。
私は戦闘中何もしてなかったから、余計にゆるい。
「……国を、作りたいんです。差別のない国を。技術を学べる国を」
「なるほど。なら、助言くらいは出来そうだな」
イセルアさんが笑って、ケイさんに歩み寄る。
「場所に心当たりがある。国を作るのはそう簡単じゃないが、不可能でもないさ」
「……手伝って、貰えるんですか」
「巨大な書庫だけいただければ」
ケイさんの顔が輝き、イセルアさんと握手をして立ち上がる。
今代勇者さんたちは、皆国造りに参加なようだ。
「お前らはどうすんだ?」
「アルこそどうするのよ」
「……旅でもすっかなぁ……」
「なら、ついてくわ」
アルさんとモアさんは旅……旅って、どこ行くんだろ……?
絶対人界に留まらないよね?
「私はセザについて行こうかな、国造りするならヒーラーもいりそうだし」
「本音は?」
「セザのとこに居たいな」
リラさんはそう言ってイセルアさんの横に移動する。
イセルアさん、慣れた感じで場所開けてるし、一緒に行動すること多かったんだろうな。
「私は精霊界に留まるわ。何かすることもないし」
「僕も、狭間残留かな。魔界から遠いところで」
「私はー……私も現状維持だな。魔道具作る設備も整ってるし」
精霊女王、闇の支配者、リーンさんは現状維持らしい。
「俺はレプのとこに行くか」
「……へ、ルト、来るの……?」
「嫌じゃなければな」
「嫌なわけないじゃん!?」
烈風さんがリーンさんの所に、なのか。
……先代勇者たちから「いちゃつくなぁぁ!!」という声が飛んでおります。
怒ってるというより楽しそうです。やじです。
「ウィルは?」
「薬屋継続。楽しいしね」
「……良かった。どっか行っちゃうんじゃないかと思ってましたよ」
「はは。そう簡単にやめんさ」
ヒエンさんは笑って、私に向き直って真剣な眼差しを向けてきた。
「アオイちゃんは?」
「私、ですか」
「ああ。君は正しく代行者の力を手に入れた。もう、魔物に必要以上に襲われることもない。何かしたいなら、する力はある」
「……代行者って言われても、戦闘力も神の力も貰ってきてないんですよ」
必要な時に力を借りる。
私がそう望んだから、現状私の能力は以前となんら変わりない。
そうなれば、出来ることは1つだ。
「ヒエンさんが薬屋続けるなら、エキナセアに置いてください」
私がそういうと、ヒエンさんはパアッと笑顔になった。
……そんな愛らしい表情できたんですね。
「なら、そろそろある薬師試験上級受けよっか!」
「急すぎません!?何事も急すぎません!?」
「セザ!問題集送って!」
「ああ、イセルアさんすみません……」
「いや、何となく察しは付いてた。すぐにでも送ろう」
本当に自由だな、この人は!
……でも、まあ、これまでの日常は崩れないみたいだし、ちょっとくらいいいかな。
ヒエンさんが好き勝手やってるのがエキナセアだしね。
どうも、瓶覗です。
薬屋エキナセア、完☆結
ということで、ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました!
実は、操作ミスで後書きが消えて、書くの2回目でございます。
めっちゃ書いたのに!!悲しい!!
そんなわけで、何か言い忘れるかもしれません。
さて、この話、エキナセアは気付けばダラダラと3年近く書いてるんですね。
こんなダラダラとではありますが、完結まで漕ぎつけられたのは読んでくださる方が居たからだなぁ…と、しみじみ思っております。
ブクマ50人いけば大勝利、と思って書いていたので、50人超えたあたりから実感がなくてですね、夢だろうと思いながら書いていました。
私のイメージでは、もっとこう、校庭の端に生える謎のキノコくらいの感心だろう思っていたので。
さて、あとなに書いたっけ…
どうでもいいのですが、現在深夜2時でございます。
手がかじかんでタイプミスがひどいです。
どうでもいいですね、はい。
思い出しました。
そう、3年も同じ話を書いてるとですね、最初の方が目も当てられない文章なことに気が付いてしまうんですね。
はああああ!!書き直してぇ!!
とも思いましたが、瓶覗成長記録ということでそのまま残そうと思います。
成長…成長しましたかね?少しは出来たと思っておりますが…
そう、それと。
私は文を書くのが好きです。
それが駄文であろうと、創作なんて自己満足だろ、と書き殴る人間です。
そんなわけで、もしかしたらエキナセアの続編的な何かを書くかもしれません。
書くとしても、期間はそこそこ開くと思いますが。
なんせ、エキナセアは見切り発車もいいところだったので。
次書く時は、もっと計画的に、終着地の景色も見えるように行きたいです。
エキナセアは最初の方、終着地どころか次の話が見えませんでしたからね!!
何で書き始めたんだよお前!!と、今になって思ったりします。
さて、1回目書いた時の内容はあらかた書いたと思うので、そろそろ締めようかと思います。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
読みづらい、至らぬ点だらけの文だったと思いますが、おかげさまで完結することが出来ました!
ここまで読んでくださった皆様に最大級のお礼を、どうやって示せばいいのか分からないので示せませんが、ブクマ、評価、感想本当にうれしかったです!小躍りしてました!
ありがとうございました!
以上、瓶覗でした!