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134,Q理解できますか?Aちょっと無理ですね。

 状況を呑み込みきれずに固まった私が動き出すまで、先代勇者さんたちは待っていてくれた。

 ついでに、ヒエンさんの事を色々謝られた。

 説明が雑で行動が早いのは昔かららしい。

 そのあと、先代勇者さんたちが姿を消した理由の話になった。


「魔王を倒すためにここまで来て、実際に魔王を倒した、のは確かだ。だが、倒すと同時に呪いを受けてな」

「呪い、ですか」

「ああ。死の概念を薄れさせる呪いだ」

「つまり、死ななくなった、と」

「完全な不死ではないが、ほぼ不老不死だな。俺はエルフだから違和感は薄いが、他は人間だ。200年を超えて姿が変わらないのは流石にな」

「私はそんなに違和感ないよ?そもそも不死みたいなものだったし」

「流石不死鳥、でいいんですかね……?」


 基本的な説明は、イセルアさんがしてくれた。

 とっても聞きやすい。他の勇者さんたちも近くに来て話を聞く体制に入っていた。


「死の概念が薄れれば、生きているという認識も薄くなる。それに、姿の変わらない自分と老いていく知人を見比べると、どうにもならない悲しさがあるものでな。人が好きだから、距離を置きたくなるのだ」

「それで、記録と記憶を消したんですか」

「ああ。そして人から離れ、変化の少ない狭間に身を置いた。……ウィルとレプは、そうではなかったがな」


 そうだ、レプさんは時々市場に来るくらいの関わり方だったが、ヒエンさんはずっとガルダに居たのだ。

 他が人から離れても、1人だけずっと人のそばにいたのだ。


「……そんなに見ても何も出ないよ?」

「説明くらいは出るかと思いまして」

「仕方ない、そのくらいは出してやろう。

 まあ、単純なんだけどね?人と関わって得る悲しさとか虚無感より、人から離れた方が寂しかっただけ。伊達に唯一の弟子持ちじゃないんだよ。人と関わるの好きなんだよ」


 ヒエンさんが何でもないようにそう言ってフッと笑うと、それまで何も言わなかった勇者さんたちが一気にヒエンさんの方を向いた。


「そこまで言うなら弟子に顔見せに行けよ」

「そうだぞー。関わりは切らないくせに正体隠しやがってー」

「弟子君寂しがってるぞー。私知ってるんだー」

「あの子口外しないでしょ。教えてあげてもいいのに」

「ああもう、一気にうるさい!250年顔合わせてないんだぞ!?どの面下げて行けと!?」

「その面」


 おお、ヒエンさんが集中砲火受けてる。なんか珍しい光景だ。

 ヒエンさんが言い返しきれてない辺り、本当に珍しい。


「関わり切ってないんですか」

「……まあ、切りがたいよね……愛弟子だし……」

「じゃあ会いに行けよ」

「それとこれとは別問題なんだよ!」

「どんな人なんですか?」

「あー……えっと……コガネ君の師匠?」

「は!?」


 予想外の関わり方してたんだけど……

 待って、ヒエンさんの紹介で錬金術学びに行ったんだよ?関わり切れて無さすぎじゃない?

 正体明かせって言われまくるわけだわ……そりゃそうだわ……


「まあ、その件はこの問題が解決してから改めて話すとして」

「もう話さなくていい……」

「今は説明が先だな。まだ、アオイさんがここに連れてこられた理由を説明してない」


 そうだった。なんかお話してたら忘れてた。

 そうだよ、ここ魔王城なんだよ。何でこんなに静かなの?

 魔王城に先代とはいえ勇者御一行が居るんだよ?


「あの、ここ、魔王城なんですよね?」

「ああ、そうだな。安全なのは、そこに当代魔王が居るからだ」

「ふぇ?」

「皮肉でしょ?ただでさえお前魔王側だろとか闇で勇者とかいいのかよとか言われてたら本当に魔王側っていうか魔王になっちゃったんだよ……」


 ふ、深い悲しみのオーラが漂っている……

 からかっていたのだろうヒエンさんがそっと目を逸らすくらいには深い悲しみのオーラだ……

 魔王って単純に強さで決まるらしいから、本当に強いんだろうな……まあ、闇の支配者だもんね……


「さて、当代魔王は人間と敵対する気がないから、今人界はそこそこ平和なわけだが、問題があるんだ」

「平和なのに、ですか?」

「当代ではなく、先代……つまり、俺たちが倒した魔王なんだが、あれは、消滅していないんだ。長い時を生きて、肉体が消滅しても魂だけで魔力を溜めこみ、魔力が溜まりきると肉体を復活させる。歴史上にいくつかある、魔王軍が人間を圧倒する時代は、その魔王が肉体を持っている期間に当たる」


 ……不死身ってこと、かな?

 でも、肉体は消えてるんだよね……?

 あ、そもそも死の定義が分からないや。


「歴代の勇者と呼ばれる人物は、その魔王の肉体を撃ち滅ぼし、人類につかの間の平安を与えたに過ぎないんだ。それでも、大きな功績であることに変わりはないんだがな」

「イセルアさんたちも、ですか?」

「ああ。だが、今回だけは状況が違い過ぎる。本来人間の寿命を全うして死ぬはずの勇者は全員生きた状態で、新たな勇者が生まれた。そして、魔王復活までの期間があまりに短い」


 言いながら、イセルアさんは一冊の本を見せてくれた。

 内容は、魔王が復活した年、勇者が現れた年、魔王が倒された年。

 魔王が倒されてから復活するまでは、大体500年から600年くらい間がある。


「……250年、ですよね?」

「ああ。本来の半分程度だ。かつての資料にあった破壊状態より深く破壊したにも関わらず」

「魔王が手馴れてきたとか?」

「それなら、もっと段階を追って期間が短くなるはずなんだ。復活の予兆を感じてから色々と調べたが、原因は分かっていない」


 神考さんが分からないなら私が分かる訳ないな。


「俺たちが全員生きている、新たな勇者が現れた、魔王が本来の半分程度の期間で復活した……それから、もう一つ今までになかったことが起きている。それを持って、今回のこの異変は、世界の循環の一つを破壊するための事だと結論付けた」

「循環の破壊……」

「ああ。魔王の消滅と復活は、人には破壊することが出来ない循環だった。それを破壊するために動いてきたが、天がそれを邪魔することはなかった。破壊は許されたことらしい」


 天が許した破壊活動……それだけ聞くと天災っぽいな。

 ……そうだ、それと、もう一つ。


「もう一つの異変って何ですか?」

「……君だ」

「へ?」

「アオイさん、君が、最後の鍵だ。ここに連れてこられた理由はそれだ」


 当たり前のように言われたそれを理解するのにはだいぶ時間がかかった。


「いや、え?でも、……え?」

「おかしいとは、思わなかったか?なぜ幼い自分の所にウィルが現れたか。その歳になってから、この世界に連れてこられたのか。それは忘れていたとしても、君は様々なものに襲われながら、今まで傷一つ負わずに過ごしてきたはずだ。

 そして、当然のように神獣と契約を結んだ」

「それは……スキルが、スキルの影響なんじゃ……」

「君のスキルは、その時は覚醒していなかったはずだ。多くの力がある本来のスキルの、一番力の強いものが見えたに過ぎない」


 そう言って、イセルアさんは魔法陣を出現させた。

 レヨンさんの所で見たものと同じもの。

 ……今ここで、私のスキルを見るってこと、かな。

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