130,Qどうですか?A面白魔石…
朝日を浴びて、コガネは目を覚ました。
意識が途切れる直前を思い出して一瞬青くなったが、隣で眠るアオイの姿を確認してほっと胸を撫でおろす。
そして、自身がキツネに戻っていることに気付いてベッドから降りた。
旅の間は常に取っている男の姿になり、装備に変化がないことを確かめる。
キツネ状態から人型になった時に着ている服は、色々な条件で変わる。
エキナセアに居るときは風呂上りに毛皮(白いワンピース)姿になっているから起きて変化してもその服(毛皮)で、今回は他者からの干渉で無理にキツネに戻されたため変化してもキツネに戻る前に着ていた服なのだろう。
……これ、キツネ状態の時はこの服どこに行ってたんだ……?
「……チュ」
「おはよう、モエギ。何があったか、説明してくれるか?」
「チュン」
アオイとサクラはまだ寝ている。
サクラはもう起きてもいい時間だが、起きないなら寝かせていていいだろう。
モエギから昨日、自分が倒れた後何があったのかの詳細を聞いた。
現れた人物は、予想が出来る。モエギの言っていた姿見と能力を持つ者は1人しか存在しないだろう。
「……はぁ……」
「チュン?」
「いや、俺もまだ未熟だな……大人になったと思い込んでいた子供ぐらい未熟だな……」
「チュン、チュッチュン」
慰めてくれるモエギを撫で、厩に荷物を取りに向かう。
あの馬は優秀だから、荷物は心配ないだろう。
朝、目を覚ますをコガネが起きていた。
とりあえず何も考えずに飛びついて、そのまましばらくしがみついておく。
大丈夫だって言われてても、不安は不安だったのだ。
このくらい許されるはずだ。許されろ。
「……主?」
「うん」
「……おはよう」
「おはよ」
一向に離れる気配のない私に、コガネは困ったように固まっている。
もう少し。もう少ししたら離れるから。多分。
そんなことをしている間にサクラも目を覚まし、コガネに飛びついてわちゃわちゃし始める。
「ちょっ、流石に危ないぞ!?」
「うーーー」
「ピィ!!!」
そんなわちゃわちゃを少し離れた安全地帯で微笑ましそうに眺めていたモエギの制止の声で、コガネから離れてとりあえず座る。
落ち着いてから、現状の確認と旅の経路の確認をして、予定を決める。
「俺の体調も問題ないし、出ようと思えばいつでも出られるぞ」
「そっか。じゃあ……とりあえず、今日は観光がしたいな」
「分かった。なら、明日出発にするか」
元々、1つの国に長く留まる予定はなかった。
何なら、道中襲われてコガネがダウンした以外、旅の予定は変わっていない。
時間だけで見たら順調なくらいだ。
「とにかく、探索に出よう」
「うん」
国ではない定住地は初めてだ。
第3大陸にもあるらしいが、いつも寄らずに済むように旅の予定が組まれている。
私は襲われやすいから、らしい。
「この町って、名前あるの?」
「正式な名前はないな。呼び名はヘリオトロープだ」
言いながら、町の中心の高い塔を指さす。
塔の頂上には少し薄い紫色の大きな球体が鎮座している。
「あの魔石が、この町の結界だ。国を成すほど力の強くない土地神の座す地に、あの魔石を置いて街を作るんだ」
「ほえー……あれ、大きさはどのくらい?」
「……確か、直径が9メートルだった気がする」
「でっか」
そんな大きな魔石があるのか……
私の知ってる魔石は、最大サイズが7センチくらいだったんだけどな……
大幅更新すぎるよね。単位から変わったよ。
「町の呼び名は、魔石の色だな」
「他の町にもあれがあるの?」
「同じようなものがあるぞ。正確に同じではないが」
つまり、他の町の呼び名も魔石の色になるのかな?
……そもそも、町って人為的に配置するのかな?
あんな魔石が自然にある訳ないだろうし……
「せんせー質問」
「なんだ?」
「町ってどうやって出来るの?」
「さっきも言ったが、土地神の座する土地にあれの系統の魔石を置く。あの系統の魔石を特殊成長形と呼ぶんだが、その中でも大きなものは、その魔石の周囲の状況で魔石の出力魔力量が変わるんだ」
……うん?なんか新しい単語がいっぱい出て来たぞ……?
まあ、最後まで聞けば分かるかな?
「どういう仕組みかは分からないが、周囲の人間の生活状況で出力魔力量が変わるらしくてな。町を活気ある町に成長させて、犯罪行為を取り締まって、観光客が来るようにすると魔石の出力が上がって、より遠くまで結界を張る用になるんだそうだ」
「……それなんてゲーム?」
そんな感じのゲーム、私何回かやったことある気がする……
何でそんな魔石があるんだ……何でそんな詳細に魔石の使用方法分かってるんだ……
「面白いよな。特殊成長型の魔石は、大きさで効果が変わるらしいぞ」
「面白魔石って認識でいい?」
「いいぞ」
いいんだ。コガネも面白いって言ってたし、そういう扱いの魔石なのか。
「せんせー質問」
「なんだ」
「土地神と魔石以外に国との違いってあるの?」
「国の方が、統治がしっかりしている」
統治ってことは、王様がいるかいないかってことかな?
町にも町長とかいそうなもんだけどね。
「ここには警備兵もたくさんいるし、そんなに感じないと思うが他の町はもっと荒れてたりするぞ」
「そうなの?」
「ああ。なるべく主は近付けないように旅の予定組むくらいにはな」
「ここが荒れてない理由は?」
「第6大陸側唯一の定住地だからだ。町も大きいから、魔石の出力も強い。ここが潰れたら困るから、いろいろな国が支援もしているしな」
なるほど。なんとなく分かったぞ。
やっぱりコガネの説明力はすごいね!
「ここも、あまり裏通りには近付かない方がいい。何があるか分からないからな」
「はーい」
そもそもコガネと離れて行動はしないだろうから、そこはそんなに気にしなくてもいいかな。
まあ、注意はしておこう。
そんなこんなで、1日町を探索した。
楽しかった。他の国じゃ見ないようなものもいっぱいあった。
大体はコガネに「危ない」認定されて近づかなかったけどね。
やっぱり国で商売してる人って、それなりに信用があるってことなのかな?
「主、明日は早く出るから、もう寝た方がいいぞ」
「はーい」
うーん、保護者。この安心感。
そういうコガネはまだ何か作業しているみたいだが、私は言われた通り寝るとしよう。
ベッドに潜り込んで目を閉じれば、すぐに意識は夢の中に落ちて行った。