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125,Qこれは?Aも、もふもふ…

 朝起きて、着替えて寝間着をしまったら荷造りはおしまいだ。

 特に買い込む物もなく、出発まで特にすることもない。

 うーん……何しようかな?


「主、やることもないし、これの包みでも探しに行くか?」


 コガネの手に乗っているのは、昨日買った聖銀のピアス。

 今は木箱に入っているが、木箱の蓋は意外と開きやすい。

 ……確かに、何か包みが欲しいかもしれない。何となく、可愛く包みたい。絶対「なにこれ」って言われるけど。


「行く!行こう!!」

「分かった。行こう」


 宿を出て、コガネ君と手をつないで昨日も行った市場に向かう。

 モエギは私の肩、サクラはコガネ君の肩に乗ってる。流石にモエギにくっつくのはやめたらしい。


 少し歩いて、人に酔った。

 多くない?人多くない?なんか、生命の危機感じるレベルで人が多いんだけど……

 これあれか、朝市か。昨日はお昼すぎに来たからここまでじゃなかったってことか。


「主頑張れ。もう着くぞ」

「うぃ……」


 コガネ君に引っ付いて人の波に飲まれない事に意識を向けていると、軽く肩を叩かれた。

 顔を上げると目の前にはたくさんの紙や布が置いてある出店。

 リボンなんかも売ってるから、ここで一式買ってしまえそうだ。


「おお、可愛い」

「どんなのにするんだ?」

「可愛くしよう。シンプルに可愛く」

「そうか」


 コガネ君が周りを見ていてくれるので、そちらは気にせずに包み選びに集中する。

 シンプルに、ピンク系でまとめたいな。リボンも付けて……

 あ、縁がレースのリボンがある……あれ良いな。

 あれに合わせて、ラッピング用紙はピンクがかった白で……


「決まったか?」

「うん!」

「じゃあ、ついでにこれもいいか?」

「いいけど……珍しい。何かに使うの?」

「まだ秘密だ」


 コガネ君が淡い青の布も追加してきた。

 物を欲しがるのも珍しいから、買うのは全然いいけど何に使うのかが気になる。

 布だから、加工もできるんだよな……

 ……何に使うんだろ?


 まとめて購入して、行きと同じようにコガネ君に引っ付いて宿に戻る。

 ひいい、人が多いよお……都会苦手……田舎に行きたい……

 ひいひい言いながらコガネ君に引っ付いてる間に宿に着いたらしい。


「すぐに包むか?」

「うん。包んで入れとこう」

「分かった」


 部屋に戻ってラッピング用紙とリボンを受け取り、コガネの布は荷物に仕舞われた。

 ……何に使うんだろ……?

 気になったが、教えてくれないようなので一旦忘れて木箱を包む。

 真ん中に箱を置いて、紙に変な跡が付かないように気をつけながら包んでリボンで止める。

 リボンは上面の中央で大き目のリボン結び。うん。可愛い。


「主、器用だな」

「そうかな?」

「そんなにきれいに包む人初めて見た」

「そうかな……?まあ、好きだったからねーラッピング」

「そうなのか」


 そう、好きだった。意味もなくラッピング用紙とリボン買ってきて意味もなく持ち物を包むくらいには好きだった。たまに頼まれてやったりもしてた。

 まさかここで役立つとは……人生何があるか分からないな……いや、異世界に来ちゃってる時点で何があるか分かったもんじゃないんだけどね?


「崩れないように、国外に出たら保護魔法でも掛けとくか……」

「いや、割とすぐ直せるよ?」

「なんかもったいない」

「そっか……」


 そんな会話をしていると、扉がノックされた。


「おーい、そろそろ行くけど、準備は出来てるかい?」

「あ、はい、大丈夫です」

「じゃあ行こうか」


 顔を出したのはチグサさんで、言われて慌てて部屋を出る。

 宿の外にはもうすでにアジサシが止まっていて、コガネが抱えていた荷物を積み込んだらすぐに出発となった。

 イピリアを出てすぐに、コガネは宣言通り木箱に保護をかけていてた。


「さて、勘付いてると思うけど、今夜は野宿になるよ」

「主の体質のことは分かっていて、野宿なんだな?」

「もちろんさ。ちゃんと考えがあるから、そんなに警戒しなくても大丈夫だよ」


 チグサさんはそう言って笑うと、特等席に戻って行った。

 あの笑顔を見てると、大丈夫だと思えるから不思議だな。

 コガネに「大丈夫」って言われるのもすごく安心するけどね。

 レヨンさんとヒエンさんは別枠だな。大丈夫でも何か起こる予感しかしない。


 そんなくだらないことを考えたり、コガネとお喋りしたりサクラとモエギをモフったりしている間に、アジサシはどんどん速度を上げて進んでいく。

 おお、速い。すごい。

 馬車の前に座って馬を操る人は、ずっと同じ人だった。フードを深くかぶっていて、表情は見えないけどなぜか怖いとは思わなかった。


 馬車の速度がすごいからか、一度も襲われることなく夕方になった。

 ……こんな回避方法があったのか……すげぇ……

 ポカーンとしていると、窓からチグサさんが入ってきた。


「酔わなかったかい?」

「大丈夫でした」

「それは良かった。そろそろ野営予定地に着くよ」


 言われて外を見ると、森の近くを走っているようだった。

 この森は、迷いの森とは違う森だな。

 コガネをチラッと見ると、頷かれたので間違いないだろう。

 もう今更そんなことで驚かない。でも、馬車が森に入っていくのは驚く。


「少し入った所に開けている場所があるんだ。そこで夜を明かすよ」


 チグサさんはそれだけ告げると、馬車の前の方に行ってしまう。

 ……森って危険なイメージあるんだけど……

 コガネをチラッと見ると、コガネも何か考えているようだった。


「この辺りに腰を下ろしている神はいなかったはずだが……」

「土地神様?」

「ああ。大体覚えているが、この大陸は国以外はほとんど居ないはずだ」


 つまり、安全地帯があるわけではない、と。

 でも考えはあるって言ってたしな……

 危険ではない、のかな?いや、危険があるのはとても困るんだけど……


 唸っていると、馬車は森の中の草原に出た。

 ……いや、草原と言うほど広くはないかもしれない。

 まあともかく、ここが野営地らしい。


 馬車から必要なものが下ろされ、地面にシートが敷かれる。

 チグサさんに手招きされてシートの上に腰を下ろし、キャンプ設営の様子を眺める。

 ほえー、速い。流石慣れてる。すごい勢いで必要なものがそろっていく。


 特にすることも出来ることもないのでぼんやりとしていると、手に何やらモフモフしたものが当たった。

 サクラかモエギだろうと思って目を向けると、全く知らないモフモフだった。

 え、なにこのモフモフ。可愛い。可愛いけど何?


「こ、コガネ君、この子どなた?」

「ん……?ああ、ヨルハ・プーアか」

「よるは……?」


 混乱している間にモフモフ改めヨルハ・プーアが正面に移動してきた。

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