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122,Qどうですか?A美味しいです…!!

 その温室には、様々な花が咲き誇っていた。

 色とりどりの花は、すべてが自己主張をしながらも、他の花の邪魔はしていない。

 まるで、絵画の中のようだ。

 見とれていると、カーネリア様が嬉しそうに笑った。


「見事だろう?」

「はい……この温室は……?」

「我が管理している。ここくらいだ、私の自由が利く所は」

「え?」


 王女様なら、もっと自由……では、無いか。

 いろんなものに自由を奪われて、いろんなことを制限されているんだろうな。

 本当は、1人で街に降りるなどできないはずだ。


「……まあ、座れ」


 カーネリア様に促され、温室の中央に置いてあるイスに腰かける。


「少し、愚痴をこぼしてもいいか?」

「はい」


 自虐的な笑みと共に、小さなため息を吐いたカーネリア様は、テーブルに肘をついて頭を預け、ゆっくりと話し始めた。


「我は、この国唯一の王位後継者だ。我は、この国の道具のひとつであり、婚約も例外ではない。昔から王宮を抜け出したりはしていたが、この歳になってから以前よりずっと息苦しくてな……。

 こんな話を、旅人にすべきではないとは分かっているのだがな」

「……いえ、他に漏れる心配も無いですから、吐き出す相手としてはいいんじゃないでしょうか」


 カーネリア様は、いくつなんだろうか。

 歳上な気がしてたけど、案外離れていないかもしれない。


「なあ、アオイ」

「はい」

「お主を、我が友として今後ここに呼んでもいいか?」

「へっ……?」


 思わず変な声を上げてしまった。


「駄目か?」

「いえ、ダメでは無いですけど……」


 なんで急にそうなったんだ?


「お主は邪気が無い。王族としての私に関わるものは、誰もが多少なりとも邪気を持っている。お主の側は居心地がいい」

「邪気……」


 それ、前にも誰かに言われた気がする……

 誰だっけな?……色んな人に言われた気もするな?

 ……コガネ?なんでそんなに頷いてるの?私そんなに邪気無い?


「駄目か?」

「……いえ」

「そうか」


 カーネリア様は嬉しそうに笑う。

 そして、短く口笛を吹いた。

 少しして、鳥が飛んできてカーネリア様の腕に止まった。


「これにアオイを覚えさせよう。こちらからの手紙はこれが運ぶ。……アオイからの手紙は、その鳥達が?」

「はい」

「なら、これを」


 カーネリア様は腕に止まった鳥を飛ばせて、懐から何かを取り出した。

 ……ブローチ?


「我の紋が入っている。それを見えるところに着けていれば、我の所まで来れよう」

「ありがとうございます」


 きれいな細工が施され、小さな宝石がはめ込まれたブローチを2つ。

 なくさないように、大切に仕舞う。

 ……リボンの中央につけたら、いい感じになるだろうな。

 考えてニコニコしていると、温室の扉がノックされた。


「入れ」

「失礼致します」


 入ってきたのは温室に入る前にカーネリア様に呼ばれていたメイドさんだ。

 手にはおぼんを持っている。


 メイドさんはほとんど足音をたてずにテーブルまで来て、私とカーネリア様の前にティーカップを置いた。

 そして、コガネを伺う。


「お飲みになりますか?」

「……いただきます」

「かしこまりました」


 コガネの前にもティーカップが置かれ、中央にはケーキセット、私の横には小さな果実が置かれた。

 手早くすべてを終わらせたメイドさんは、一礼してから音もなく去っていった。


「その果実は鳥達に」

「ありがとうございます」


 サクラとモエギに許可を出して、2羽が食べ始めたのを見てから出されたお茶に手を伸ばす。

 少し口に含んで、思わず固まった。

 ふわりと広がる優しい甘みと、あとからくる嫌味のない強い甘み。それらがすっと消えて、後味は爽やかな柑橘のような、少し酸味をもった甘み。


「どうだ?」

「おい、しいです!」


 甘みだけでこんなに種類があるのか。

 このお茶絶対高い。私の感覚がそう告げている。


「そうか」


 カーネリア様は微笑みながらティーカップを傾ける。

 ……絵になるなぁ……絵画とかでありそう。



 その後、色々な話をした。

 お互いの歳とか、生活とか、薬師のことを聞かれたり他の国の王家のことを聞かせてもらったり。

 なんというか、本当に友人同士のおしゃべりって感じだった。

 その「友人同士のおしゃべり」の結果、カーネリア様の印象は最初の時とだいぶ変わった。

 そんなこんなで時間は過ぎて、辺りは夕焼けに包まれた。


「そろそろ、か」

「そうですね」

「……また、来い」

「はい」


 名残惜しそうなカーネリア様に見送られて、王宮を出る。

 護衛を付けるか聞かれたが、コガネがいるから、と断った。

 コガネはというと、もう逸れないように、と手を繋いで歩いている。

 ……本当に、保護者だなぁ……


 宿に着くと、アジサシの皆さんはもう戻ってきていた。

 何かの計画を練りながら会議のようなことをしていたアジサシさんは、私達に気付いて手招きした。


「やあ、おかえり」

「ただいま、です」

「観光は楽しかったかい?」

「あー……観光、うーん……」

「……?どうかしたかい?」


 言っていいだろうか、と迷ってコガネを見ると頷かれた。言っていい、って事だよね?


「えーっと、色々あって王宮に行ってました……」

「……なにやら面白そうな事になってるね?」


 面白そう、でいいのか?

 ……まあ、チグサさんからしたら面白そうの範疇なのか……な?


「で、その結果は?」

「結果だけでいいんですか」

「理由は後でのんびり聞くさ」

「あ、はい」


 なんというか、面白がられてる?

 結果、結果はまあ、「カーネリア様とお友達になった」なんだけど、なんかそれだけ言うと余計面白がられそうだな……

実は終わりが近付いて来ているエキナセア。本当に今年中に完結するかもしれません。

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