121,Q出来は?Aバッチリです!
王女様に連れられて、イピリアの王宮に向かう。
正直、私が王宮になんて行っていいのだろうか、と思ってしまうが、まあ、ポーションなら作れるって言ったの私だしなぁ……
「して、お主ら名前は」
「アオイです。こっちはコガネ、です」
「そうか。私の名はカーネリアだ。そう呼べ」
「はい。……カーネリア様……?」
「うむ」
王女様は満足そうに笑い、手で前を示した。
「あそこが、王宮の入口だ。表からではなく、使用人用の出入り口から行くぞ」
「はい」
いつの間にか目の前に迫っていた王宮を見上げると、大きなステンドグラスがキラキラと輝いていた。
ほあー。綺麗だなぁ……
上を見ていたら、コガネ君に肩を叩かれた。
もう、入口に着いたようだ。
使用人の出入り口にも警備員と思わしき人がいて、カーネリア様をみて目を丸くした。
「殿下!またお一人で……」
「後ろの者たちは私の客だ。粗相のないように」
カーネリア様は警備員の言葉を遮り、中に入る。
……なんというか、慣れてる感じだ。
よくこういうことをしているんだろうか。
「このまま薬学室に行って構わないか?」
「はい」
王宮の中は、窓から入ってくる光が壁や天井に反射して、キラキラと輝いていた。
過度な装飾はなく、調度品なんかもあまり飾られていない。
でも、すごく豪華。何が、というわけではなく、この空間が豪華。
少し歩いて、花や葉っぱが彫られた扉の前に着いた。
……うん。「薬学室」って感じだね。
カーネリア様の後に続いて中に入ると、薬草やポーションの実の香りが流れ込んできた。
……落ち着く。すごく落ち着く。
「おや……殿下、どうなさいましたかな?」
「薬師を連れてきた」
「またお一人で街に降りられたのですか」
部屋の中には、おじいさんが一人。
何となく、薬師試験の監督のおじいさんに似た雰囲気を漂わせている。
薬師さん、なのかな?でも、薬師がいるなら街に降りる必要はないよなぁ……?
「説教は後だ。ポーションが必要なのだろう?」
「それはそうですが……」
「アオイ、始めてくれ」
そうは言われても、始めていいのか、と迷っていると、おじいさんが諦めたように笑った。
「全く殿下は……すまないね、君は旅の人かい」
「あ、はい」
「薬師免許を見せてもらえるかな」
「はい」
おじいさんに薬師免許を手渡すと、名前を見て目を細めた。
そして私の顔をじっと見つめてくる。
……なんだなんだ、私は何もしていないぞ。
「……不思議な縁があるものだな……まさかこんなところで薬師会の期待の新人に会えるとは……」
「き、期待の新人?」
「ああ、プラチナ級薬師ヒエン・ウィーリア・ハーブが弟子を取った、その弟子もかなりの速さで級を上げている……と噂になっているのだよ」
「……あ、そっか、ヒエンさん有名人なのか」
おじいさんから薬師免許を受け取り、部屋の奥を手で示される。
「製作に必要なものはそこに揃っている。製作を頼めるかな?」
「はいっ!」
「……私も薬師なのだがねぇ……歳を取ってナベをかき混ぜる体力がなくなってしまったのだよ」
「……あ、そっか、魔法……」
「うむ。ここでは使えない」
魔法が使えないから、鍋をかき混ぜるのは体力勝負なのだ。
ヒエンさんはたまに魔法で木べら動かしてるけど、あれが出来ない。
なるほど……外部発注になるわけだ。
「さて……コガネ、そこの薬草取ってくれる?」
「ああ」
手が届かない位置にあった薬草を取ってもらい、乾燥具合を確認する。
……うん、大丈夫。しっかり乾燥してる。
えっと、薬研は……あった。ナベの中に水は、入ってない。
どこだろ……あ、あったあった。……重たいし、コガネに入れてもらおうかな。
……よし、出来た。
濃さは問題ないし、色も綺麗。
ちゃんと出来てるはずだけど……普段と違う環境だと、なんか不安だなぁ……
「出来たかい」
「はい」
ナベの中のポーションを少し掬って小瓶に移し、おじいさんに手渡す。
おじいさんはそれを透かして眺め、少しだけ口に入れた。
そして、満足そうに微笑んだ。
「流石じゃな、見事なポーションだ」
「あ、ありがとうございます」
よかった、問題なかったみたいだ。
……まあ、自信はあったけどね!ポーションならもう数えきれないくらい作ってるからね!
「残りはこちらでやっておこう。ありがとう、君のおかげで助かった」
「いえ、良かったです」
「終わったのなら、場所を移そう。アオイ、こちらに」
「あ、はい!」
ニコニコ顔のおじいさんに見送られ、カーネリア様の後ろをついて行く。
……どこに行くんだろうか。
途中、メイドさんを見かけたり(こちらを見て固まった後、慌てて頭を下げていた。カーネリア様が独断で人を城内に入れたからかな?)綺麗な庭を横切ったりしながら進んでいく。
……どこに行くんだろう?聞いてみたいけど、話しかけてもいいのかな?
疑問に思いながらついて行くと、温室、みたいなところが見えてきた。
あそこが目的地、かな?
「アオイ」
「は、はい!」
「お主、茶は何を好む?」
お、お茶は緑茶派……いや、この場合はアルハニティーか。
でも、アルハニティーって庶民的なお茶だし、言っても伝わらないかな?
「あ、甘みの強い物を……」
「そうか、ふむ……」
カーネリア様は少し考え、パンッと手を叩いた。
私がビックリしている間にメイドさんが近くに来ていて、カーネリア様から何か言われてすぐに離れて行った。
「さて、この温室は許可のない者の立ち入りを禁止している。そう固くならずともよいぞ」
「は、はい」
つまり、人目は気にするなってことかな?
考えながら、カーネリア様の後ろについて温室に足を踏み入れた。