表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/148

119,Q大丈夫ですか?A割とピンチです!

 朝、珍しく自力で起きてカーテンを開けたら朝日に目をやられた。


「うぉぉぉぉ……」

「主おはよう。なにしてるんだ?」

「太陽が……太陽がぁぁ……」


 コガネ君に無言で頭を撫でられた。

 なんか……ごめんね?こんな主で……

 頭を撫でられながら服を渡され、受け取ってモゾモゾと着替える。


「もう朝ごはんは食べれるみたいだ。食べに行こう」

「うん」


 アジサシさんが用意してくれたこの宿は、朝食付お風呂完備安全性バツグン、というなんというか高そうなところだった。

 普段の旅なら絶対泊まらない。


 しかもお代はアジサシ持ちだ。

 太っ腹すぎる。軽く困惑するくらい太っ腹だ。

 そんなアジサシさんは、もう朝食を食べ終えたらしい。

 チグサさんしか残ってない。


「おはよう、アオイちゃん」

「おはよーございます」

「よく眠れたかい?」

「おかげさまで」

「それは良かった。ボクらはもう出るから、探索するなら気をつけてね。夕食までには戻るよ」

「はーい」


 チグサさんはヒラヒラと手を振って宿を出ていった。

 うーん……カッコイイ。

 ちなみに朝食はバイキング方式で、私はパンと野菜とタレ漬けの肉を持ってきてサンドして食べました。美味しかったです。


「……ごちそうさまでした」

「よし、行くか」

「うん」


 サクラとモエギは私が起きる前にコガネ君から木の実を貰ったらしい。


「……そういえば、今日はコガネ君なんだね」

「ああ。無駄に絡まれたくないからな」

「確かに……」


 私とコガネちゃんって、2人でいると凄い目立つんだよね。

 見事に白黒だから、なのかは知らないけど。


「主、金はひとまとめにしないで小分けにしておいた方がいいぞ」

「はーい……なんか今回はいつもより慎重だね」

「魔法が全く使えないし、魔力も探知出来ないからな。何が起こるか分からない」

「なるほど……」


 普段はコガネが常に魔力探知をしてくれているので、何か起こる前に(もしくは起こった直後に)対処してくれるのだ。

 その状況に慣れ過ぎてしまって忘れていたが、この世界の治安はそんなに良くない。

 武器を持っているのが当たり前の世界だから、仕方ないことなのかもしれない。


「どこか行く当てがあるの?」

「いや、特にある訳でもないが……観光名所、みたいな場所はあるから、そこに行こうと思う」

「おお、楽しみ」


 観光名所ってことは、何かこの国の特徴なんかが色濃く出ている場所なんだろうか。

 ……というか、この国、そんなに観光客が来るんだね。

 迷いの森が近くて、魔法が使えないってなると、あんまり人が寄ってこなさそうだけど。

 そんなことを考えているうちに、人通りはどんどん多くなっていく。

 逸れないようにしなきゃなぁ……


 ……と、考えていたのに。

 時間帯もあるのだろうか。あまりの人の多さに、一瞬コガネを見失いそうになる。

 そこで、足を止めたのが間違いだった。


 あれよあれよと人の波に飲まれてしまい、そのまま流される。

 コガネの声が聞こえた気もしたが、周りの喧騒にかき消されてしまった。

 人の流れに逆らって歩く力も持ち合わせていなかったので、流され続けて見覚えのないところに行きついてしまった。


「あー……やらかした。完全にやらかした」


 サクラとモエギも居ない。

 完全な迷子だ。


「……迷子の鉄則。動かない」


 こうなってしまっては、私にはどうすることもできない。

 だけど……困ったなぁ。

 魔道具も使えないんじゃ、私はただの非力な小娘だ。


「魔物も侵入してくるって言うしなぁ……」


 普通は、そんなに遭遇することではないのだろうが、私は魔物に狙われやすい。

 魔力が阻まれるはずのこの国のも、それは変わらないらしい。

 昨日、コガネが言ってた。


 やることもなく、かといって死ぬほど不安、というわけでもないこの状況で、私は暇を持て余してしまった。

 待ってればコガネが見つけてくれるだろう、という確信があるせいで、どうにも緊張感がない。

 いや、魔物に襲われたらヤバいとは思ってるが、まあ、人のいる方に走るか……とか、そんなことを考えて終わらせてしまっている。


「……カバンの中身、確認してよっかな」


 この短時間で何かなくなってたら怖いな。

 のんびりゆったりカバンを手繰り寄せていたら、魔力とは違う、背筋の凍る気配がした。

 あ、ヤバイ奴だ。これはヤバイ奴だ。


 魔力ではない、「ただの」殺気。

 私に、真っ直ぐに向けられた殺気。

 動けなくなるには十分過ぎた。


「や……ばっ……」


 一瞬にして背中は汗でびっしょりになり、膝は笑い始める。

 それでも何とか逃げようと、人のいる方へ足を向けた。

 だが、その動きを、2,3メートル先にいる魔獣が許すわけがない。

 私に跳びかかってくる魔獣を見ながら、心の中で叫んだ。


 ああ、もう、何でいっつもこうなるのかな!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ