11,Qこの人は誰ですか?Aコガネ……みたいです。
ドラゴンの頭が見える。
だんだんと、羽ばたきの音も近づいて来る。
この非常時に、ヒエンさんと逸れた。
「キュッ!」
「うん。そうだね」
私がいるぜ!とばかりに鳴いたコガネちゃんを籠から出して、自分の肩に乗せる。
「大丈夫?コガネちゃん落ちない?」
「キュイ!(大丈夫!)」
「ならちょっくら走るぜ!」
「キュー!(おうよ!)」
向かう方向は、我らがエキナセアだ。
正直言えばそれ以外に行くところもない。
だが、1つだけ問題がある。
ドラゴンの方に自ら出向く形になってしまうのだ……!
いやぁ、危険。すごく危険。
でも頑張ります。ヒエンさんがいるとしたらエキナセアだと思うし。
そんな事を考えながら走り出した。
これでも体力には自信があるのだ。
校内マラソン大会、女子5位だったしね。
帰宅部だけどね。
理由?簡単。オタク(という名の同志)の波に揉まれながら全力疾走でグッズ販売の会場に走る日々を送ってたからさ!
走っている間にもドラゴンはどんどん近づいて来る。
なんか、すごいデカイ。何あれ〜距離感狂うわ〜。
「キュッ!キュイ!」
「え?なんて?」
「キュー!」
「は?こっち来る!?なんで!」
「キュウ!」
ドラゴンがこっちに来るとかよくワカラナイ事をコガネが叫んでいる。
冗談だろ?……あれ?ドラゴン、こっち見てね?
……マジか。マジですか。
「マジで来たぁぁぁ!!」
「キュー!!!」
ドラゴンにロックオンされた。
こっちに飛んできてる。
冷静に考えて、バッドエンドだろ。
とりあえず、回れ右して走る。
が、ヒエンさんの言っていた通り、陸上でしか移動出来ない人間にはがドラゴンから逃げおおせる訳がないのだった。
……ああ、エルフとか獣人とかに会いたい人生だった。
そうだ、十字を切って念仏を唱えよう☆
そんな事を言ってる間に、ドラゴンの影が重なるほどに距離は近づいている。
振り返った瞬間に、ドラゴンが攻撃の予備動作と思われる行動をとった。
咄嗟に手で頭を庇ってその場にしゃがむ。
そして固く目を瞑る。
だが、衝撃は伝わってこない。
「主に、手を、出すな!」
その代わりに声が聞こえて来た。
……主?
薄っすらと目を開けると、目の前には白い、白い青年が立っていた。
「……えっと……?」
「主、大丈夫か?」
「あ、主……?」
青年がコクンと頷く。
青年の後ろを覗くと、ドラゴンが去っていく。
「えーっと、もしかして、コガネちゃん……ですか?」
「ああ」
「……なんで人型?」
「後で説明する。今はドラゴンをどうにかしないと」
「おっおう。せやね」
とりあえずコガネ君と呼んでおこうかな。
コガネ君に言われて立ち上がろうとするのだが、足に力が入らない。
「……コガネ君よ」
「どうした?主」
「足が竦んだ」
「……なら、運ぶ」
「ん?運ぶ?えっ、ちょっ、ちょい!」
コガネ君は私の横にしゃがむと、そのままヒョイッと私を抱き上げる。
「えー……そんな軽々?」
「?主は軽いぞ?」
「うん、そっか……で、これからどうすんの?」
「ドラゴンをどうにかしないといけないな」
「追いかけんの?」
「主がそれで良いなら」
「じゃあ、そうしましょ」
「わかった」
言うなり走り出す。
もう、とりあえずコガネ君のことは一旦考えんのやめよう。頭痛くなりそうだし。
「いっけーコガネ君!」
もうこれはノリで乗り切るしかないよね!(駄洒落じゃないよ?)