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109,Qどうですか?Aすごいです…!

 キマイラの門を潜り、広場に進むとレヨンさんが居た。


「アオイちゃーん。久しぶり」

「レヨンさん!お久しぶりです」


 相変わらず左右非対称な人だな。カッコイイ。

 まあ、キマイラが左右対称何それ美味しいの?な国だから雰囲気はものすごく合ってるんだよな。

 ……それよりも。


「レヨンさん、髪伸びましたね」

「そうかい?……まあ、最近切ってなかったからね。そういうアオイちゃんも結構伸びたね」

「そうですかね?」


 確かに最近邪魔だなーと思うようになった。

 切ろうかな?でも結んだ方が楽なようなら伸ばした方がいいのか。


「とりあえず家に行こうか」

「はーい」

「コガネ君は……その荷物持って坂登れるかい?」

「大丈夫だ、問題ない」

「そのセリフを教えたのはアオイちゃんかな?」

「店主だ」

「ヒエンさん……!!」


 頼むからコガネに妙なセリフを教えないでほしい。

 コガネが神獣だって言われてもパッとしないのって、こういうセリフを言ってるからだと思うんだ。

 黙ってればかなり神々しいのに……


 そんなことを思いながら、歩き出したレヨンさんについて行く。

 合流したサクラとモエギは、サクラがコガネ君の抱えた荷物の上に、モエギは私の肩の上に乗っている。

 サクラが楽しそうに揺れてる。そこ気に入ったの?


「ここの階段も、そろそろ整備しないとな~」

「この階段の整備ってレヨンさんがやってたんですか?」

「この先にあるのって私の家だけだからね」

「なるほど……」


 他の人からしてみれば、使えなくなっても問題ないのか。

 ……いや、問題あるのか?

 情報屋としてのレヨンさんに用事がある人は困るか。


「この階段、私の保護者だったエルフさんが作ったんだよね」

「……そうなんですか」


 家がこの先にあるから整備するってだけじゃないんだろうな。

 多分、自分が使わないような、近くを通りかかりすらしないような道でも整備するんだろうな。


「さて、と。鍵開けるからちょっと待ってね~」

「はーい」


 家の鍵を開けるために裏に回ったレヨンさんを待つ間に、コガネに話しかける。


「コガネは明日から錬金術師さんの所に行って来るんだっけ」

「ああ。……主はどうするんだ?」

「色々やりたいことはあるからね。楽しんでる!」

「そうか」


 コガネ君に頭の悪いお返事をしたタイミングで家の中からレヨンさんが顔を出した。


「はい、お待たせ」

「お邪魔しまーす」

「お邪魔します……前は普通に玄関閉めてなかったか?」

「この鍵、魔力制御式なんだけど最近調子が悪くてね……コガネ君、良かったら後で見てくれないかい?」


 私じゃどうにもならん。というレヨンさんに、コガネ君が頷くのを確認してモエギと笑う。

 手紙でその話を聞いてから、コガネならどうにか出来るんじゃ……と思っていたのだ。

 実際に来てみて直ってなかったらコガネに頼んでみようと思っていたのだが、私が何か言う必要はなかったようだ。


 コガネなら直せるだろう。

 どんなにエルフさんの魔力が強くても、コガネは魔法特化の神獣だ。

 そう。魔法特化の。……魔法、特化?


「物理攻撃してる姿しか思い出せない……」

「主?」

「何でもないよ……」


 明日、レヨンさんに魔法特化(?)のコガネの話を聞いてもらおう。

 愚痴ではないが、ちょっと話を聞いてほしい。


「とりあえず荷物置いてきな~。前と同じ部屋でいい?」

「はい」

「よし、行ってこーい」

「はーい」


 レヨンさんの家は少し不思議な構造をしてる。

 離れたところにあると思ってた部屋同士が廊下を挟んで隣だったりする。

 というか、廊下が多いんだよね。多分。

 普通の家だと必要なくね?って思う廊下が結構ある。


「よっこらせ」

「主、それ言うのやめた方がいいと思う」

「癖なんだ……」

「そうか……」


 こっちの世界に来る前にもいろんな人に言われたよ……

 直そうとも思ったんだけど、無意識に言ってるんだよね。

 どうにもならないね。


「ピィッピ!」

「そうだね」

「主、今何時だ?」

「4時半だよ」

「それなら、夕飯前に鍵を見れそうだな」

「おお!見学していい?」

「ああ」


 コガネ君はそう言ってコガネちゃんに変化する。

 何度見ても不思議な光景だな……

 コガネちゃんは変化が終わると同時に髪をまとめ始める。

 髪留め、気に入ってくれてるようで何よりです。


「よし、行こう主」

「うん」


 コガネちゃんに促され、サクラとモエギを肩に乗せてリビングに移動する。

 リビングに着くと、レヨンさんがお茶を出してくれた。

 緑茶だ。やった。


「鍵を見せてもらえる?」

「もちろん」


 鍵を受け取ったコガネちゃんは、両手の間に鍵を浮かべた。

 ……なんか幻想的だな……

 大き目の球体を両手で持ってる感じの手の間隔の中心にアンティーク調の鍵が浮いてる。


 コガネはそのまましばらく停止していたが、やがてゆっくりと手を動かし始めた。

 それと同時にコガネの手の間の魔力も動き始める。

 今までに視てきたどんな魔力よりも精密で、今までに触れたどんな魔力よりも緻密な魔力で、コガネの手の間が満たされている。


 その状態を保つだけでも、常人では魔力が足りないのだろう。

 見ているだけで、胸が高鳴るのが分かる。

 これほどの魔力を使わなければいけない何かがこの鍵1つに詰まっているのだ。


 基本的に、私は物事に対する興味が強い。

 それが自分の知識外であればそこまで惹きつけられることはないのだか、自分の持つ知識が少しでも掠っていれば、そのことに対する興味は格段に増す。


 理解できなくてもいい。

 むしろ、理解できないくらいがいい。

 それを理解しようと足掻く時間が楽しいのだ。


 だから、これの仕組みを知りたい。

 何にこれほどの魔力をつぎ込んだのかが知りたい。

 これほど緻密な魔力でなければいけない「何か」の正体を知りたい。


 コガネが、魔力をゆっくりと飽和させ始める。

 魅入りすぎて呼吸すら疎かになっていたようだ。

 コガネの魔力が完全に切られると同時に、私はゆっくりと呼吸を再開した。


「……これで、直ったと思う」

「ほぉ……私には理解できない領域だな……」

「コガネ、これどうなってたの?」

「……言葉で説明するのは難しいな…………歯車が、少しずつずれてたからそれを直した感じ」

「そうなんだ……」


 鍵が完璧に直ったかどうかを確かめに行ったレヨンさんを見送りながら、コガネがポツリと呟いた。


「エルフとはいえ、あれを1から作ったのだから、相当の使い手だったんだろうな……」

「……やっぱりそうなのか」

「ああ。……その技術が誰にも伝わらずに失われたのは、残念だな」


 コガネがそんな風に言うのは初めてだ。

 相当すごい人だったんだろうな。


「ありがとうコガネちゃん。完璧に直ったみたいだ」

「良かった。一応元の形に直したから、しばらくは大丈夫だと思うよ」

「そのしばらくは100年くらいだと思っていいのかな?」

「うん」


 ……しばらくの範囲がえらく広いなぁ……

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