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103,Q本日は?Aレッツゴー図書館、です!1

 中級薬師試験の翌日、私はヒエンさんに言われて私服に着替えていた。

 そろそろ雨期も終わりが近いこの頃はだいぶ晴れの日も多くなってきていた。

 そんな日に特別休暇を貰った私は、ヒエンさんの勧めで王宮図書館に行ってみることにした。

 王宮図書館、というなんかすごそうな名前に恐れをなしていると、ヒエンさんは笑って言う。


「大丈夫よ。そんなに厳しいところでもないから。ただ、騒ぎは起こさないこと。それと、利用規約を守りさえすればいいわ」

「利用規約って、どんな?」

「本を持ち出さない、図書館内で騒がない、図書館内で魔法を使用しない、とかそんな感じよ。詳しくは門番に聞けばいいわ」

「門番居るんだ……」

「まあ、王宮に入る第一の門の内側にあるからね。王宮図書館」

「それ、大丈夫なの……?」

「だから身分が保証できる人しか入れないのよ」


 なるほど。薬師免許中級はその身分証明に使えるレベルなのか。

 仮にも王宮に入れるってすごいな。薬師免許。

 貴族様とかは普通に入れるんだろうな。

 ……いや、貴族様は来ない、のかな?


「図書館が開くのは10時だから、もう少しゆっくりしてて大丈夫ね」

「やっぱり早く行った方が人居ないかな?」

「そうね……あ、本の内容を軽くメモするくらいなら許されてるから、メモ帳とかは持って行っても大丈夫よ」

「はーい」


 ヒエンさんの言葉を受けて、私は一旦部屋に戻ることにした。

 部屋の机の上には、昨日合格祝いだと言ってヒエンさんがくれたカバンが置いてある。

 このカバンはショルダーバッグにもウエストポーチにもなるという謎性能な一品だ。

 ウエストポーチとか結構好きなのでありがたい。


 カバンの中にメモ帳とペン、それからハンカチと財布……まあ、つまりいつもの物を入れる。

 懐中時計はポケットだな。

 後は装飾品類を身に着けて1階に降りる。


「主、道は分かる?」

「ヒエンさんに地図書いてもらったよ」

「そっか。気を付けてね」

「うん。行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 コガネちゃんは今日は留守番だ。

 私が出かけるから、コガネちゃんが居ないと店番いなくなっちゃうからね。

 ヒエンさんは今日も作業部屋に居るみたいだし。


 とはいえ、1人で出かけるのは不安だ。

 ……図書館、鳥の出入りは禁止かな?

 ダメだったら近くで待機してもらおうかな。


「モエギー」

「チュン」

「図書館行くの付き合ってもらえないかな?」

「チュン」

「ありがとう」


 モエギを肩に止まらせて街の中を歩く。

 やっぱり晴れてると賑やかだね。

 雨の日でもそれなりに人はいるけど、晴れの日に比べれば寂しいものだ。

 ヒエンさんの書いてくれた地図を片手に歩いていると、前から声をかけられた。


「ん?おお、アオイじゃねぇか」

「……あ、ツルバミさん」

「なんだ、1人か?」

「はい。今日は特別に休みを貰ったんです」

「ふーん……薬師試験受かったんだってな。おめっとさん」

「ありがとうございます」


 クリソベリルのメンバーの1人であるツルバミさんは、口は悪いが悪い人ではない。

 普通に助けてくれるし、魔法をちょこっと教わったときは厳しかったけど出来た時はすごく褒めてくれた。

 なんというか、親戚のちょっと悪めなお兄ちゃんって感じだ。


「どっか行くのか?」

「王宮図書館に行くんです」

「……途中まで案内してやろうか?お前地図だけじゃ迷うだろ」

「うぐぅ……」

「っふは。なんだよその顔。おら行くぞ」

「はーい」


 ツルバミさんは私の頭をわしゃわしゃと撫でて歩き出す。

 私は後ろについて行きながら手櫛で髪を整えた。

 この世界では何とも不思議なことに私は美少女らしいので、こんな風に頭を撫でられることもなければ、今のように若干雑に扱われることもほとんどない。


 別に雑に扱われたいわけではないが、ツルバミさんの私への扱いがちょっと嬉しかったりする。

 モクランさんもかなり扱い雑だけどね。

 モクランさんの扱い方も好きだけど、それとは少し違う雑さだ。


「それにしても、王宮図書館なぁ……この頃行ってねぇな」

「行ったことはあるんですか?」

「おう。あそこにゃ貴重な魔術の本とかもあるからな。一時期モクランが入り浸ってたぞ」

「へぇー……クリソベリルは王宮図書館入れるんですね」

「まあ、俺たちはギルド通して国に雇われてるようなもんだからな」


 その辺の仕組みは前にモクランさんに教えてもらった。

 国の安全のために、城の兵士とは別に冒険者とかをギルトから紹介することがあるのだとか。

 国から雇われるには、ギルドの最上位レベルに居ることが最低条件、みたいなこと言ってた気がする。

 つまり、クリソベリルは強いと。


「何なら王族に会ったこともあるぞ」

「へ!?」

「俺は1回だけだけどな。リーダーとムギさんは割と会ってるみてぇだぞ」

「クリソベリルすげぇ……」


 知ってたけど。

 すごいのは知ってたけど。

 ……とまあ、そんな話をしていたらいつの間にか王宮図書館入口に着いていた。


「おら、ここが王宮図書館だ」

「あ、ここなんですね。ありがとうございます」

「おう。じゃあな」

「はい。さよーなら」


 ツルバミさんと別れて王宮図書館の門(?)に向かう。

 ……ここでいいんだよな?人居るし、聞いてみればいいか。


「すいません、王宮図書館の入口ってここで合ってますか?」

「はい。ご利用は初めてですか?」

「はい」

「では、身分を証明する物の提示をお願いします」


 言われて、カバンから薬師免許を取り出す。

 門番は薬師免許を確認して利用規約を教えてくれた。

 図書館の中にも規約は書いてあるらしい。

 カバンの中身も検査され、入館が許される。

 ……あ、聞かなきゃいけないことがあるんだった。


「あの、鳥って入館禁止ですかね?」

「鳥……ですか?」

「はい……この子なんですけど」

「……契約獣ですか?」

「はい」

「……中で飛ばさせなければ、後は、あまり大きな音を立てなければ入館していただいて構いません」

「ありがとうございます!」


 門番は、私の肩に止まったモエギを見て少し考えていたようだが、モエギが鳴かずに大人しく私の肩に止まっているのを見て許可をくれた。

 やったぜ。モエギが空気を読んで大人しくしていてくれたおかげだね。

 元から大人しいけどね。


 モエギを肩に乗せたまま王宮図書館の中に入る。

 図書館の中はとても広く、迷子になりそうなほどだった。

 すごいな。この中から目的の本を探すのは結構大変な気がする。

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