表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/148

102,Q来ましたね。A来ちゃいましたね。

 サクラとモエギの帰還から時は流れて、ヒエンさんが帰ってきてから1週間が経過した。

 ヒエンさん、帰ってきたとき謎の大荷物だったんだよね。

 何に使うのか分からない木材とかあったり。


「ヒエンさーん。あの木材って結局何なの?」

「ふふふ。あとで作業部屋に来てくれれば使ってるところ見せてあげられるわよ」

「わーい」


 帰宅直後に聞いてみたら、後で、と言われて今日までずっと気になっていたのだ。

 作業部屋っていうことは薬作りに使うのかな?

 イツァムナーまで行って薬作りの道具を貰ってきたの……?


「開店準備終わったよ」

「はーい」


 店からコガネちゃんが顔を出した。

 時計を見るとちょうど9時になった所だった。


「じゃあ、アオイちゃん。9時半くらいに作業部屋に来てちょうだい」

「はーい」


 ヒエンさんはそう言って作業部屋に入って行った。

 私はコガネちゃんと一緒に店番だ。

 雨期は本当に暇だな……

 お客さんも全く来ないわけじゃないんだけどね。


「こんなに暇だと売上とか心配になるよね」

「雨期以外の売り上げが結構あるから大丈夫……なのかな?」

「……あ、そういえばヒエンさんたまに夜中に店にいるよね」

「ああ、人外の注文か」


 コガネちゃんと顔を見合わせる。

 雨期は夜が長いから、昼間に店に来れない人外さんたちは雨季に店に来ることが多いのか。

 なるほど。昼間こんなに暇でも大丈夫なはずだ。


「でも、雨期だからってこんなに暇なのはエキナセアくらいだよ」

「そうなの?」

「うん。他の店は雨季でももっとお客さんいるよ」


 私は引きこもってたから分からないが、買い物に出かけていたコガネちゃんは他の店の状況も知っているのだ。

 ……エキナセアだけなのか……


「奥まったところにあるから、かな?」

「まあ、迷いやすいしね」


 雨期に迷子は勘弁してほしい、と思うと相当な常連さん以外はエキナセアには来ないだろう。

 私も最初迷子になって大変だったのだ。

 気持ちはよく分かる。


 人外さんたちは雨とか気にしないのかな?

 バンパイアとかは濡れなそうっていう勝手なイメージがあるけど。

 ……濡れるよな?普通に。



 そのあと9時半になるまでコガネちゃんとグダグダ話していたのはいつも通り。

 9時半になって作業部屋に行くと、ヒエンさんが鍋の前に居た。


「ヒエンさーん」

「タイミングばっちりよ、アオイちゃん」

「そうなの?」

「ええ」


 ヒエンさんは言いながら例の木材を取り出した。

 どうするのかと思って見ていると、木材が開いた。

 真ん中から、開いた。


「……ふぁ!?」

「ふふふ。中を見てごらんなさいな」


 言われて木材の内側を覗くと、規則的に丸い窪みがある。

 反対側も同様だ。


「これは丸薬を作るための道具なのよ」

「丸薬……ああ!」


 そういえば、店の棚にもビンに入れられた丸薬が数種類あった気がする。

 あれの形を取るための道具ってことかな?


「この木枠にナベの中身を入れて乾燥させて形を揃えるの」

「へぇ……」


 ヒエンさんは相変わらずの手際の良さでナベの中のペースト状のものを木枠に流し込んでいく。

 見惚れるほどの手際の良さ。

 髪を結って普段見えないうなじが見えているところとか、ヒエンさんの謎の色気とかと合わさって薬を作っているということを忘れてしまいそうだ。






 とか、そんなことをのんびり考えていた日から約40日が経過しました。

 いやあ、時が経つのは早いねぇ……

 もう雨期も終わりが近いよ。


「主、現実逃避終わり」

「ううう……」


 コガネちゃんに肩を叩かれて現実に引き戻される。

 何を隠そう、今日は世界統一薬師試験の中級試験日なのだ。

 現実逃避を許してくれない鬼畜なコガネちゃんは、私の前にパンとアルハニティーを置いて向かい側に座る。


「今回は自信あるんでしょ?」

「ある……けど、それと緊張は別なんだよぉ……」


 弱音を吐いている間にも時間は過ぎていく。

 いい加減朝食を食べないといけない時間になった。

 正直食欲は欠片もないが、食べなければ頭が働かない。


「……美味しい」


 食欲はないが美味しいものはおいしいのだ。

 ちまちまとパンを食べながらお茶を飲んでいる間に行かなければいけない時間になった。

 準備をしていたヒエンさんに声をかけられ試験会場に向かう。



 試験は大体今まで通りだった。

 ただ1つ違ったことは、筆記の時に


「すべての問題を解き終わりましたら、部屋の外に出てください。1度部屋から出ると再度の入室は出来ません。何か質問はありますか?」


 と言われたことだった。

 初級、下級は時間制限があったが、今回はなしらしい。

 つまり終わった順に出られると。


 ……見直しくらいはした方がいいよね。

 再度の入室が出来ないってことは、忘れ物は出来ないな。

 特に物を置くつもりはないから大丈夫だけど。


「大丈夫です」


 ここまで案内してくれた、なんかもう私の中では「いつもの人」認定されている無口無表情な男の人にそう答えて部屋に入る。

 部屋の中には机が1つと、イスが1つ。

 机の上には問題とペンが置かれていた。



 筆記の問題を解き終え、見直しもして席を立つ。

 軽く机の周りも見渡して何も落としていないことを確認して部屋の扉を開ける。

 部屋の外には試験官と思われる女の人がイスに座っていて、受験票を返却される。


「試験結果は1時間後に発表となります。1時間後に受験票を持ってもう1度お越しください」


 と言われた。

 帰り道の案内はいつもの男の人だった。

 外に出ると、外は相変わらずの雨だった。


 ヒエンさんはいない……かな?コガネちゃんを呼ぼうかな?

 なんて考えていたら、横から声をかけられた。


「終わった?」

「……あ、モクランさん」

「ハーブさんから君の回収と結果の回収を頼まれた。とりあえず昼食食べるよ」


 モクランさんは言いながら傘を開いて私を振り返る。

 ……あ、入ればいいのかな?

 私が傘に入ると、モクランさんが歩き出した。とりあえずついて行く。


「お店忙しいんですかね?」

「いや、ハーブさんが薬作っててコガネが店番」

「なるほど」


 ……それにしても、ヒエンさんはモクランさんに私の保護者を頼みすぎな気がする。

 私はお喋り出来て嬉しいが、モクランさんからしたら迷惑なのではないだろうか?


「なんか食べたいものとかある?」

「うーん……糖分が欲しいです」

「じゃあデザートもあるようなところに入ろうか」


 ……今は考えなくていいか。

 ちょっとした疑問より食欲の方が大事だ。


 そんなわけでモクランさんと昼食を取り、デザートも食べて時間をつぶして1時間経過。

 試験結果を受け取りに行く。


 外を移動するときはモクランさんの傘に入っているのでモクランさんがかなり近い位置にいる。

 それで気付いたのだが、モクランさん、身長伸びてる。

 初めて会ったときはそんなになかった身長差がなんかすごく開いてる。


 なにこれ悲しい。

 モクランさんまで私から離れていくのか!目線的な意味で!!

 とか、くだらないことを考えているうちに試験会場についていた。


 受け取った袋は分厚く、それだけで結果は分かってしまう。

 袋の中には中級薬師免許が入っていた。

 中級も無事合格できたようだ。

今回は時系列(?)が少しややこしいですね。

詠み辛かったらすみません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ