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101,Q帰ってきましたか?A帰ってきましたね。

 珍しい。本当に珍しい。

 こんなことあるのか。

 そんなことを思いながら主を眺める。


 普段は起こしてもなかなか起きない主が、今日は自力で起きて1階に来たのだ。

 でも、リボン結べてないね。

 寝ぼけてるのかな。イスに座ろうとしてつまずいてるし。


「おはよう主」

「うん……」


 これは完全に眠いな。

 普段なら二度寝確定な奴だ。


「今日は早起きだね」

「……うん……サクラと……モエギの……気配が……」


 言いながら寝てしまいそうだ。

 まあ、つまり2羽の気配が近かったからお出迎えしたかったらしい。

 流石主。


「まだもう少しかかるだろうから、目を覚まそう?」

「うん……」


 アルハニティーをカップに淹れて差し出すと、眠そうだがしっかりと受け取ってくれた。

 そのまま両手で持って中身をゆっくりと飲みだす。

 ……こぼしそうで怖いな。

 魔力で支えておこう。


「……ん、大丈夫だよ……」

「いや、目が覚めるまで、ね?」


 モクランに魔法を習い始めてから、主は魔力を察知するのが上手くなった。

 元々才能はあったのだろう。

 その魔力が自然に発生したものかそうでないかも区別出来ているようだ。


「……あ、近い」

「そうだね」


 主の魔力波は、半径150メートルほどを境に精度がかなり変わる。

 2羽は今100メートル先くらいに居る。

 そこまで早く跳んでいるわけではないが、もうすぐ着くだろう。


「ピィ!」「チュン」

「おかえり~」

「おかえり」

「ピィッピィー」

「うん」

「チュン、チュンッチュン」


 主は楽しそうに旅の報告をしてくる2羽を撫でていたが、何かに気が付いたようで、こちらを見上げてきた。


「コガネちゃん、洗濯ってもうしたかな?」

「いや、まだだよ」

「じゃあ、このリボンも一緒に洗ってもらえる?結構汚れてきてる」

「……本当だ。洗わないと」


 サクラとモエギが着けている揃いのリボンは、だいぶ汚れてきていた。

 モエギに比べてサクラのリボンの方が圧倒的に汚れているが。

 雨の中飛んできたので濡れているし、さっさと洗濯してしまおう。





 コガネちゃんが2羽のリボンをほどいて洗濯に向かった。

 私はモエギが差し出してきた。

 どうやらレヨンさんからのお返事のようだ。


 手紙を読みながらアルハニティーをすすっているうちにだいぶ目も覚めてきた。

 時計を見ると8時になるところだった。

 そろそろ朝ご飯の時間だな。お腹空いた。


「主、ご飯出来たよ」

「早っ」

「挟むだけ簡単」


 コガネちゃんが出してきたのはサンドイッチ。

 コガネちゃん特性のパンに新鮮な葉野菜とタレに漬けた肉を焼いて挟んだ一品。

 めっちゃ美味しい。

 何でこんなにおいしい物を家で食べれてるんだろう?

 これは確実にお店の味だ。


「美味しい」

「良かった」

「このタレって売ってるの?」

「いや、作ったよ」

「コガネちゃんはどこを目指してるの……?」

「主の胃を掴んでおきたくて」

「もうとっくに捕獲されてるけどね」

「それは良かった」


 最早コガネ依存症に悩まされてるくらいだよ。

 コガネがいなくなったら結構真面目に生きていけなくなる気がする。

 私まだ1人で馬乗れないし。

 料理もほとんどできないし。


「コガネ依存症だわー」

「もっと依存してもいいんだぞ?」

「そこでコガネ君になるあたり悪意あるわー」


 一体誰に教わったんだそんなこと。

 こっそりレヨンさんと文通してたりするのか?

 それかヒエンさんから謎の入れ知恵をされてたりするのか?


「……さてと。私は開店準備してくるね」

「はーい」


 コガネちゃんは満足そうないい笑顔を私に向けながら店に行った。

 ……コガネは女の子の時と青年の時の差が激しいなー。




 さあ。9時です。開店です。

 コガネちゃんは食料なんかを買うために出かけています。

 ……暇だ!!


「あー暇だよー」


 机に突っ伏して呟いてみても反応する声はない。

 コガネちゃん、買い物時間かかるって言ってたしな~……

 何か暇をつぶせる物はないだろうか。


 そんなことを考えながら1人グダグダしていると、チリリン♪と音がして扉が開いた。

 マジか。ビックリしたー


「いらっしゃいませー」

「どうも」

「あ、モクランさん!」


 入ってきたのはモクランさんだった。

 さらに驚き。どうしたのかな?

 もし薬の注文だったら結構まずいんだよな。クリソベリルからの注文って、ヒエンさんじゃないと作れないものがほとんどだから。


「あ、ハーブさんいないのは知ってるから」

「そうなんですか」


 心読まれた。

 多分顔に書いてあったんだろう。


「……あれ?じゃあポーション系ですか?」

「いや、暇だから寄っただけ」

「珍しい……」

「普段はいつでもお客さんいるからね。ここ」

「いつでもってわけじゃないですけどね」

「俺らがはっきり分かるお客さんのいない時は雨季くらいなんだよ」


 ……つまりお客さんがいないのを見計らってきたと?なぜ?


「暇だからだって」

「……そんなに暇なんですか?」

「まあね。今来てる大きな依頼は別の奴らが行ってるから」


 クリソベリルが大きな依頼っていうとマジでヤバそうだな……


「どんな依頼ですか?」

「第2大陸とつながる関所に上位の魔獣が現れたから退治してくれって」

「ヤバいやつだぁぁ!!」

「そいつ魔法耐性強いから俺とツルバミは留守番」

「他の人は全員行ったんですか?」

「いや、半分くらい」


 クリソベリルが半分も行くって相当だな……

 どんな魔獣何だろう?


「世界とは何かの魔物・魔獣編に載ってるよ」

「持ってきます!」


 イスから降りてリビングに向かう。

 ……そういえば、モクランさんはいつイスに座ったんですかね?

 気付いたら座ってるんだよなぁ……モクランさんもアヤメさんも。


「持ってきました!」

「236ページ」

「えーっと……これか!」

「そう。それ」


 考えてもどうにもならないことを考えるのはやめて世界とは何かを開く。

 載っていたのは竜とか辰とか、そんな感じの見た目をした魔獣。

 ……イラストなのにすごい躍動感。

 これ、レヨンさんが書いたのかな?


「本来は人のいるところなんかに姿を現さない魔獣なんだけどね」

「……天変地異?」

「いや、そこまでは行かないかな。過去にも何回かあったみたいだし」

「でも、珍しいんですよね」

「そうだね」

「…………なんか、嫌だな……」


 ポツリと呟くと、頭を軽く撫でられた。

 ……聞こえない音量で言ったつもりだったんだけどな。

 ……あ、モクランさんハーフエルフだから耳良いんだった。


「君がそういうこと言うと本当に何かあるそうで怖いんだけど」

「モクランさんに怖いこととかあるんですか……」

「君は俺を何だと思ってるの?」

「……保護者?」


 頭を叩かれた。痛い……


「うおぉぉぉ……」

「自業自得。……ったく……」

「どうしました?」

「何でもないよ。……あ、そういえば前に渡した演唱、覚えた?」

「ふっふっふ……ちゃんと覚えました!」


 ドヤ顔をすると、気のない声ですごいすごいと言われた。

 全く心が籠ってなかった。

 ……別にいいけどね!




 その後モクランさんはコガネちゃんが帰ってくるまで店に居た。

 コガネちゃんが帰ってきたら帰って行った。

 マジの暇つぶしだったらしい。

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