100,Q客足はどうですか?A全然来ないですね☆
いつも通り、朝コガネちゃんに起こされてベットから降り、制服に着替えて1階に降りる。
今日も今日とてお客さんは来なさそうで、のんびり勉強だな。
そう思って部屋に持ち込んでいた勉強道具を持っていく。
ヒエンさんが居ないだけで、家の中はいつもよりかなり静かになる。
……やっぱりちょっと寂しいな。
「おはよー、コガネちゃん」
「おはよう、主」
「本当に今日だけ小雨だね」
「うん。昼間少しだけ晴れるから、その間に行ってもらおう」
ポケットから時計を取り出すと、コガネちゃんが横から11時くらいから、と教えてくれる。
今が8時30分なので、あと2時間30分くらいか。
まあ、その前に開店しないといけないんだけどね。
晴れ間にパラッとお客さん来そうかな。
「今日はお昼1人ずつ食べようか」
「分かった」
そんな話をしながら朝ご飯を食べ終え、開店準備に取り掛かる。
開店準備って言ってもやることなんてほとんどないんだけどね。
とりあえずポーションの在庫くらいは確認しようかな?
「……よし、ポーション系の数はオッケーだね」
「開けても大丈夫?」
「うん」
準備も終わり、店を開ける。
看板を出して扉にかけてある札をopenにする。
コガネちゃんはカウンターに座らず奥に行ってしまった。
……何かあるのかな?
少し待つと、マグカップ2つとポットを持って戻ってきた。
なるほど。今日は最初からのんびりするつもりなんだね。
「コガネちゃん、これ何ティー?」
「アルハニティー」
「やった」
「もう少し待ってね」
「うん」
アルハニティーは私が今一番気に入っているお茶だ。
甘めのさっぱりしたのが飲みたい、と言ったらヒエンさんが買ってきてくれた。
そんなに高価なわけでもないらしく、それ以降エキナセアにはアルハニティーが常備されている。
「主、それは?」
肩を叩かれ顔を上げると、コガネちゃんは私の右側(壁側)を見ていた。
コガネちゃんの目線を追うと、そこには紙の束が置いてある。
「あ、それは使い終わっちゃったやつだよ」
「主、こんなに勉強してたんだ……」
「そう、実はしてたんだよ」
ペンのインクを4回取り換えるくらいには勉強してるんだよ!
私だってやれば出来るんだよ!!
雨期に入ってからお客さんが来ないから暇を持て余してやってたんだよ!
一問一答はもう完璧だよ!
珍しく筆記も自信ありだよ!!
「今日はのんびりしてもいいかもね」
「本当?やった!」
コガネちゃんから許可が出た。
これで今日はグダグダしてても怒られないぞ。
「……サクラとモエギは今どこら辺に居るかな?」
「庭に居るみたいだよ」
「濡れないのかなぁ」
「濡れないようにしてるみたい」
器用だな。
庭で雨宿り出来る場所なんてほとんどないだろうに。
……あ、小鳥サイズなら結構あるのかな?
「主、アルハニティー飲む?」
「飲む!」
コガネちゃんが差し出したマグカップを受け取って口をつける。
あっつい。でも美味しい。
コガネちゃん淹れるの上手なんだよね。万能だなぁ……
そんなことを思いながらコガネちゃんとお喋りしているうちに雨はかなり小雨になった。
……もうそろそろ、行ってきてもらおうかな?
庭に居るって言ってたし、ここで呼んでも聞こえるでしょう。
……というか、契約獣は主が呼んでるの分かるんだっけね。
「モエギー、サクラ―」
呼んでみると、少しだけ開けられた窓から2羽が入ってきた。
本当に聞こえるんだね。すごい。
「ピィ!」「チュン?」
「ちょっと今からケートスに行ってきてもらえないかな?」
「ピィッ!?ピッピィッピィ!!」
「落ち着け?」
「チュン、チュンチュンッチュ?」
「そうそう。手紙を運んでもらいたいんだ」
説明しながら、コガネちゃんに防水加工してもらった手紙を出す。
魔法って便利だねぇ……
魔力と電力って似てる気がするんだよね。
どっちも動力源だし。
「……さて。手紙どっちが運ぶ?」
よく分からない方向に向かっていった思考を無理やり手紙のことに戻す。
「ピィッピ!」
「チュン」
「分かった。サクラ、足出して」
「ピィッ!」
サクラが「私が運ぶ!」と騒ぎ、モエギの許可も出たのでサクラの足に手紙をつける。
そんなことをしている間に雨は止み、久々に太陽が顔を出した。
「おー、久々」
「光合成、主、光合成しよう」
「落ち着けコガネちゃん。動物細胞には葉緑体がないんだ」
「なん……だと……」
「え、まさか白キツネには葉緑体が……」
「ないよ」
「ないのかよ」
コガネちゃんとくだらない会話をしている間に2羽は見えなくなっていた。飛ぶの速いなぁ……
コガネちゃんはその後マジで外に出て、魔法で地面を乾かして寝っ転がってた。
光合成してるのかな?
何となくだけど、この晴れ間に3,4人はお客さん来そうだな。
雨だと外出たくないもんね。
晴れ間に買い物終わらせたい気持ちはよく分かるよ。
コガネちゃんは気持ちよさそうに寝てるから起こさないでおこう。
可愛いし。1人でも大丈夫だし。可愛いし。
そんなことを思いながらコガネちゃんを眺めていると、早速チリリン♪と音がして扉が開いた。
「いらっしゃいませ~」
「こんにちは」
入ってきたのはギルドの方。
もしや大量注文か?私じゃ作れないものとかだとヒエンさん帰還まで待ってもらわないといけないんだけど……
「こんにちは~。大量注文な感じですか?」
「いえ、化膿止めを5つです。大丈夫そうですか?」
「それなら大丈夫です」
お互いに良かった~という雰囲気を醸し出しつつ、棚から化膿止めを取り出す。
これはそんなに消費速度が速いわけじゃないから、ギルド内で使う分の補給な感じかな?
「もしかして、今ハーブさんいないんですか?」
「そうなんですよー。また唐突にお出かけしてます」
「相変わらず……アオイさんも大変ですね」
「私は……コガネちゃんも居るのでそんなに大変でもない、ですね」
「なるほど」
のんびり会話をしつつ化膿止めを袋に入れ、代金を受け取る。
お客さんも一気には来ないからのんびりお茶してコガネちゃん眺めてようかな。