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96,Q本日は?A遊びに行ってきます!2

 レド君と植人種の話で盛り上がっていると、泉の中心が揺らぎ始めた。

 え、なにこれ。


「アオイさん、怖がらなくて大丈夫だよ」

「害はないと」

「うん」


 レド君は落ち着いて泉を眺めており、そんな姿を見ていると大丈夫な気がしてきた。

 まあ、ヤバい奴ならレド君が反応するよね。

 つまり大丈夫。ちょっと怖いけど。


「レド君、あれは?」

「ここの守り神みたいなものだよ」

「守り神……土地神みたいな?」

「いや、土地神ほどの力は持ってないんだ。この泉の近くを浄化してるだけ」


 それでもすごいよね?

 土地の浄化ってごく一部の神聖な魔力を用いないと出来ないってコガネちゃんが言ってたし。

 泉の女神……?女神かどうかは分からないけど、泉っていったら女神のイメージあるよね。

 斧とか落としたら女神様出てきそう。


「……お久しぶりです」

『久しいですね、森の子』

「森の子?」

「俺の呼び名。植人種だからね」

「なるほど」


 ……驚きのあまり流してしまったが、泉から人が現れた。

 性別は……分からない。

 中性的な美しい人だった。


『森の子よ、その子は?精霊の気を纏っているようですが』

「アオイさんといいます。精霊の気に付いては……俺にも」

「え?精霊?」

「このように本人に自覚がありませんので」


 精霊の気ってなんぞ?

 私から精霊の気配がするの?

 私が普段一緒にいるのは白キツネと小鳥なんだけど……


「え?え?」

『自覚がないのですか』

「……え?」


 混乱だよ。大混乱だよ。

 そりゃ混乱するっしょ。

 だっていきなり精霊の気を纏ってるって言われたんだよ?


「それはともあれ、あなたが人前に姿を現すのは珍しいですね」

『精霊の気が気になったのです』


 そう言って、その人は私の方を向いた。

 ……人じゃないな。その方?

 ……神様?女神様?あれ?そもそも神なのかな?

 混乱した頭でそんなことを考えていると、レド君に肩を叩かれた。


「アオイさん、落ち着いて」

「……無理だよ!?」


 私の返事にレド君は困ったような楽しそうな、よく分からない表情をした。

 そして、少し考えながら話し始めた。


「アオイさん、精霊に会った事とかってない?」

「ないよ?……あ、でも精霊花なら持ってる」

「精霊花?」

「うん。これ」


 言いながら、服の下のネックレスを引っ張り出す。

 レド君はそれを見て納得の声を上げた。

 ……これが精霊の気の正体なのかな?


「精霊花が手元にあるくらい好かれてるなら気配も感じるわけだ」

「……え?」

「アオイさん、精霊花って精霊に好かれた者しか持てないんだよ」

「そうなの?」

「うん。精霊に好かれてないと精霊花を持っててもすぐに枯れるんだ」

「……加工したからじゃないの?」

「それは関係ないよ」


 そうなんだ……

 私、精霊に好かれてたのか。

 まあ、精霊も光側だもんね。オリジナルスキルの範囲内なのかな?


『精霊花、ですか。人の子よ、それはどこで手に入れたのですか?』

「朝起きたら服の上に乗っかっていたんです」

『そうですか……寝ている間に……』


 ……私、なんか変なこと言ったかな?

 考え込んでしまった泉の方(呼び方が分からない。困った)を眺めながらそんなことを考えた。

 レド君は何故か後ろを気にしている。

 なんだろう……怖いな……


「……精霊がいますね」

『ええ。こちらが気になる様ですね』


 女神様(仮)とレド君の会話を聞いて後ろを振り返ると、何かが小さく光った気がした。

 ……うん?何だろう?

 もしやあれが精霊なのかな?


「シルフィード、ですね」

「シルフィード……風の精霊?」

「うん」


 頷いたレド君は立ち上がって精霊の所に歩いていった。

 泉の女神様はそれを見て、ふわりと微笑むと泉の中に帰っていった。

 することが無くなったのでレド君と精霊の会話に耳をすませる。


 といっても、若干遠くてあまりよく聞こえないのだが。

 なんか話してるなーということは分かるのだが、内容は分からない。

 そんなわけでぼーっとしていると、レド君が戻ってきた。


「……レド君、肩の上の方は……」

「精霊だよ。この辺りによく来るんだ」


 精霊が笑って、初めまして♪というのが分かった。

 なんというか、頭の中に言葉が直接流れ込んでくる感じ。

 言葉というか、意識?言いたいことが流れ込んでくるって言えば伝わるだろうか?


「初めまして」

「アオイさん、聞こえるんだ」

「え?」

「精霊の声は、聞こえる人あんまり多くないんだよ」

「そうなんだ……」


 精霊は、そんな私たちの会話をまるっと無視して私のネックレスを眺めていた。

 そして、嬉しい♪まだ持っててくれたんだ、と言う。

 ……どういうことだろうか?


「……もしかして、アオイさんに精霊花を渡したのはシルフィードなの?」

「え、そうなの?」


 そうよ♪と言って、シルフィードは楽しそうに飛び回る。

 なんで私に精霊花をくれたのだろうか?

 疑問に思って尋ねれば、貴女の契約獣とはお友達なの♪と返される。


「契約獣って、コガネちゃん?」


 シルフィードは頷いて私の周りをクルクル回る。

 そして、また遊びに行くわ♪と言って去っていった。


「……いや、花くれた理由になってないよね!?」


 コガネちゃんが私の契約獣だからと言って、花をくれる理由にはならない。

 その事に気付いたのはシルフィードが去っていった後だった。


「いや、理由になるかもよ」

「そうなの?」

「うん。コガネさんとシルフィードが仲良しなら、コガネさんが慕ってるアオイさんに加護を与えようって考えもおかしくないでしょ?」

「……なるほど」


 コガネちゃんが好きだから、私を助けてくれるのか。

 というか、コガネちゃん精霊と友達だったのか。

 なんとまあ。……でも、白キツネだもんね。神獣と精霊が仲良くてもおかしくないか。


「……そういえばだけど、精霊と妖精の違いって?」

「精霊の方が位が上だよ」

「……精霊の方が偉い?」

「というより、魔力が強い」


 レド君は持って来ていた水筒を取り出して、喉を潤してから話し始めた。


「精霊には、それぞれ属性ごとに名前が付いてる。ウィンディーネとか、シルフィードとか。妖精にはそれがなくて、水の妖精とか風の妖精って呼ばれる。


 妖精から精霊に進化したりもするけど、精霊になるには妖精の倍以上の魔力と、妖精の時にはぼんやりしてる自我が必要なんだ。


 ちなみに、精霊になると精霊界に自由に出入り出来るようになるらしいよ」


 ウィンディーネは知ってるぞ。シルフィードと一緒にゲームにも出てくるからね!

 恐らく他の精霊も私の知ってる名前だろう。

 それより……


「精霊界?」

「時空の狭間にある、精霊の集う場所だって。妖精が精霊に進化するのもそこらしいよ」

「へぇ〜……ちなみに、精霊って妖精から進化する以外に誕生するの?」

「精霊が死ぬと、精霊の魂は精霊界に帰る。精霊界に帰った魂は、別の精霊として生まれ変わるんだって」


 ほう……輪廻転生的な感じなのかな?

 それにしても、時空の狭間ってなんだろう?

 なんか凄そうだな。


「その話って有名なの?」

「いや、そんなに有名じゃないと思うよ」

「そうなんだ……」

「精霊に興味が無ければどうでもいい話だからね」

「あー……なるほど」


 私は興味津々だが、普通に生活していれば精霊なんて気にならないだろう。


「……あ、でも魔法使いとかは知ってるのかな?」

「精霊に関係する魔法を使う人は知ってるだろうけど……でも精霊関係の魔法ってほとんど使える人いないよね」

「確かに……」


 魔法使いでも関係ある人はほとんどいないのか。

 ……そういえばユリシアちゃんは精霊系の魔法使ってたよな。

 大いなる大地の精霊よってやつ。

 ユリシアちゃん、やっぱりすごい子だったんだね……


「……さて、アオイさん」

「はーい?」

「そろそろ薬草集め始めようか」

「……あ、忘れてた」


 そういえばそんなことも言われてたね。

 私が手を叩くと、レド君は面白そうに笑う。


「薬草と毒消し草と取ったら帰ろうか」

「はーい」


 時計を見れば、もう夕方が近いようだった。

 この季節の日暮れは速い。

 流石レド君。時間計算もばっちりなようだ。

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