95,Q本日は?A遊びに行ってきます!1
コガネちゃんがお出かけしてます。
今日は定休日だ。だからコガネちゃんが何をしていてもコガネちゃんの自由なんだけどさ。
どこ行ったのかなぁ……お昼ご飯食べてすぐにどこかに行ってしまわれた……
私はどうしようかな……
筆記の問題貰ったから、午前中はそれをやってたんだよね。
午後……何しよっかなぁ……やることないなぁ……
そんなわけでリビングでグダグダしていると、ヒエンさんが庭から入ってきた。
「アオイちゃん、暇そうね」
「うん。暇だよ」
お使いかな?と思って体を起こすと、ヒエンさんは微笑んで言う。
「なら、森に行ってみない?」
「森?」
「ええ。近くの森なんだけど、薬草やら毒消し草やらが自生してるの。アオイちゃんは薬の材料を取りに行ったことはなかったわよね?」
「ないよ~。というかそういうのって大体クエスト発注して済ませてるよね」
楽しそうだな。森か。
……でも、それってつまりガルダの外だよね?
私が行って大丈夫なのかな?
あ、ヒエンさんも一緒にってことなのかな?
「昨日、アオイちゃんが麻痺毒製作にいそしんでる時にレド君が来たのよ。その時にお願いしたの。アオイちゃんが暇だったらついて行くかもしれないとも言ってあるわ」
「なるほど、レド君が一緒なんだね」
レド君というのは、エキナセアの常連客である少年だ。
薬草採取のクエストをかなりの確率で受注している。
ちなみに強いらしい。
ギルド内でも中堅の扱いなんだとか。
「あと20分くらいで来るはずだから、準備しておいてね」
「準備って、何をすればいいの?」
「装飾品の装備とか?」
「何で疑問系なの?」
「さして必要ないのよね。準備。服装もそのままで大丈夫よ。今日は雨季には珍しい晴れだしね」
装飾品とは、私がいろんな人(保護者達)から与えられているものだ。
緊張をほぐす魔力が入ってるらしいイアリングとか、自己防衛用ブレスレットとか、結界張る用指輪とか、精霊の加護付きネックレスとか。
ネックレスは材料持ってって作ってもらったから与えられてはいないね。
「あ、何ならついでに薬草を少し持ってきてもらおうかしら」
ヒエンさんはそう言ってカゴを1つ渡してきた。
カゴには布が敷いてある。
「これに半々くらいで薬草と毒消し草と持ってきてくれる?」
「はーい」
そんな話をしている間に時間が経っていたらしく、店の方でチリリン♪と鈴の音がした。
店に行くヒエンさんについて行くと、そこにはレド君が立っていた。
まあ、ここでレド君以外が立ってたら怖いよね。
「こんちわー」
「やっほー、レド君」
「うっす!アオイさん久しぶり!」
「レド君、アオイちゃんも行くことになったからよろしくね」
「はい」
レド君はいつもと同じ服装……つまりはフル装備だった。
私はこんな軽装備でいいんだろうか?
これ以上装備品つけると動けなくなりそうだからアウトでもどうにもならないけど。
「じゃあ行こっか、アオイさん」
「はーい。行ってきます」
「行ってらっしゃい」
エキナセアを出て、レド君と並んで歩き出す。
今日はサクラとモエギもどこかに行っているのでお供はいない。
……なんだかんだ誰もついてこないのは初めてかもしれない。
「アオイさんって、魔物に狙われやすいらしいけど、普通の人とどれくらい差があるの?」
「普通の人が魔物に襲われる頻度が分からないけど、ケートスに行くまでに30回くらいは襲われたよ」
「多くね!?」
「あ、やっぱり?」
「俺が行くときは10回も戦えば多い方だよ」
「……私、数えるのが面倒なだけで下手したらもっと襲われてるんだよね……」
レド君が驚きのあまり黙ってしまった。
なんか申し訳ないな。
「よくそれで無事だよね……」
「コガネちゃんのおかげだね」
「あー……コガネさんすげぇ……」
そう、コガネちゃんはすごいのです。
と、なぜか私がドヤ顔をしておく。
「……というかレド君」
「ん?どした?」
「私、マジで狙われるけど大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。森に入れば」
「……森って平地よりヤバい印象があるんだけど……」
「俺といれば森の方が安全だよ」
レド君はそう言って笑う。
森……私の中だと、平地より強い魔物が出てきやすい場所。
平地で危なげのない戦いが出来るようになったら森でレベリングしてた。
懐かしいなぁ……
「……ん?レド君といれば?」
さらっと流しそうになったけど、それってつまりレド君は森と相性がいい種族って認識でいいのかな?
あとで聞いてみようかな。
「そうそう。俺、森の中で真価を発揮するタイプだから」
「へぇ~……種族的な意味で?」
「種族的な意味で」
「レド君の種族って……」
「あれ?話したことなかったっけ?」
「うん」
そんな会話をしている間に門に着いた。
流石に門の外でのんびり話すわけにもいかないので、森に着くまで少し集中。
「アオイさん、歩くの速いとかない?大丈夫?」
「大丈夫だよ。体力はあるから」
レド君に気を使われつつ移動していると、急に周囲の魔力が高まった。
……嫌な予感がする。
レド君が警戒態勢に入ってるし、なんか来たね、これ。
「アオイさん、離れないでね」
「分かった!」
というか、離れるという選択肢がない。
レド君の指示待ちだ。
まあ、とりあえず結界準備でもしておこうかな?
「アオイさん、結界張れるんだ?」
「うん。弱いし気配消したりは出来ないけど」
「十分。張ってくれる?その間に倒してくるから」
「はーい」
魔力は練り終わっているので、演唱に入る。
略式でもきちんと発動してくれるので、略式で唱えてしまおう。
私が結界を張るのと同時にレド君がどこかに移動した。
一瞬でいなくなったのでどの方向に行ったのかすら分からない。
少し待っていると、レド君が戻ってきた。
速い。すごい。
「お帰り~」
「ただいま。大丈夫だった?」
「うん。何にも来なかった」
そんな会話をして歩き出す。
森はそんなに遠くないらしく、その後2回ほど襲われるだけで着いた。
森の中に入り、レド君が笑いながら言う。
「ほんとに狙われまくりだね」
「そうなんだよ」
「まあ、森に入ったから大丈夫だよ」
「あ、そうだ。レド君の種族って」
レド君は、近くに泉があるから、と言って歩き出す。
ついて行くと、何やら神秘的な泉に着いた。
レド君は泉の近くに腰を下ろし、私にも座るように促してくる。
「アオイさん、植人種って知ってる?」
「……ドライアド的な……」
「まあ、そんな感じ。あんまり有名な種族じゃないんだよね」
レド君は言いながら地面に落ちた木の枝を手に取った。
それを左右に振りながら、楽しそうに話し始める。
「ドライアドは、魔物って言われてるけど、それは知能の低い奴らなんだ。知能も魔力も高い個体は、妖精とか精霊にもなれる。
俺は、妖精になれるほど魔力が高くなかったけど魔物になるほど知能も低くなかった個体。
割といるんだよ、俺みたいなの」
つまり、レド君は植人種だと。
え?それってとらえ方によってはレド君は精霊とか魔物とかと親戚ってことになるのでは?
レド君すげぇ……
「……あれ?レド君、ご両親は?」
「木だよ。魔力の高い木」
「……赤髪なのに……」
「それ関係ある?」
レド君は心底楽しそうに笑い、元の木が赤い花を咲かすのだ、と教えてくれた。
それから、自分より早く誕生した個体に妖精がいる、とも言っていた。
レド君マジで妖精と親戚なのか……
「小さい頃ってどうやって育ったの?」
「植人種はある程度の自我がある状態で生まれるんだ。森の中で生き延びる方法を身に着けて、近くの村に行ってみた」
「どうなったの?」
「みなしごだと思われて拾ってもらえたよ。今でも村に帰ると喜ばれる」
森の中に入ったら本当に魔物が襲ってこなくなり、しばらくレド君と話しつづけた。
レド君話すの上手だから楽しんだよね。
私はドライアドを妖精とか精霊扱いするのが好きな性格をしているので、今回もそのようにさせていただきました。
違和感のある方もいるでしょうが、かる~く流していただけると幸いです。