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09,Qこれは何の騒ぎですか?A分かりません。

 その日は、珍しく一度に大勢のお客さんが来た。

 まあ、買い物客ではなかったが。


「ヒエンさーん。クエスト受注者の方が来てるよ〜」

「はいはい。ちょっと待って」


 この間私が発注したクエストを受注した人たちが詳細を聞きに来たのだ。


「はいお待たせ。で、やっぱりあなたたちなのね」

「やっぱり?」

「私が発注するクエストの、難易度が高いやつはだいたいこのパーティーが受注するのよ」

「お前が無茶振りするおかげでギルドからの受注依頼の難易度が面白おかしいことになってるぞ」


 パーティーのリーダーさんがヒエンさんに白い目を向ける。

 ギルドからの受注依頼って何だっけ。

 ……あ、あれだ。「このクエスト、受けてくれません?他の方にはちょっと頼めない感じなんですよ〜お願いします。報告上乗せしますから〜」っていう、ギルドからのお願い。


「あら、いいじゃない。報酬高いし」

「そうじゃなきゃ割に合わない仕事ばっかだからな」


 ヒエンさんはリーダーさんの小言を華麗にスルーして詳細の書かれたメモを渡す。


「リーダー、何て書いてある?」


 リーダーさんに近づいてそう聞いた人に見覚えがあった。

 異世界生活2日目に来店した、私が初めて対応したお客さんだ。

 そう、あの私を子供扱いしたイケメンさん。……イケメン(笑)さんだ。


「おま、1ビンって……お前なぁ……!!」

「大丈夫よ〜毛取って帰ってくるだけじゃない」


 リーダーさんの様子からするとヒエンさんはまた何か無茶振りをしたらしい。


「まず月花羊どこにいるんだよ」

「はいこれ地図ね」

「何でそんなもん持ってんだよ…」

うちの店エキナセアに代々伝わってるのよ」


 ちょっとした口論を始めたリーダーさんとヒエンさんを横目に、他のメンバーさんがカウンター内側のイスに座った私に話しかけてきた。


「ポーション8つとハイポーション2つ貰える?」

「あ、はーい。……あれは大丈夫なんですか?」

「口喧嘩?大丈夫大丈夫。いつもだから」

「いつもなんですか」

「うんいつも。大丈夫だよ。なんだかんだ仲が良いからね。あの2人」


 そのメンバーさんは困ったように笑いながら、カウンターに手をついてリーダーさんとヒエンさんを眺めている。

 私は棚からポーションとハイポーションをそれぞれ指定された数取り出してカウンターに置いた。


「えっと、ポーション8つとハイポーション2つで合計140ヤルです」

「はい」

「……はい。ちょうどですね」


 こっちはもう用事が済んだようなのだが、口論は終わらない。


「……あれっていつまで続きますか?」

「日によって変わるかな。今回は長そうだな……」


 メンバーさんはポーションをカバンにしまいながら困ったように笑った。

 ……この人、普段からすごく苦労してるんだろうな。なんかそんな感じするわ。

 そんな失礼なことを考えていたら、チリリン♪と鈴を鳴らして扉が開いた。


「リーダー、まだ?」


 開口一番そう言ったことからすると、パーティーのメンバーさんのようだ。


「まだなんだよ。今回は長そうだ」

「えー。こっちは準備終わったわよ」

「言っても仕方ないよ」


 入ってきた人はなんと女の人だった。

 わあ。初めて見た。女冒険者。かっこいい。


「しょうがない。ここで待とうかしらね」


 その人はため息をついてカウンターに近づいてきた。


「……」

「……」


 目があって、2人して停止する。


「……ねえ」


 女冒険者の人は、カウンターに座る(いつ座ったんだろう?)、ポーションを買い出ししていた人に話しかける。


「どうしたの?」

「この子、もしかしなくても例のエキナセアの新しい店員さんよね……?」

「そうみたいだね」

「こんな可愛い子なんて聞いてない!!!」


 叫ぶが早いか、その人はカウンターに向かってすごい勢いで歩いてきた。(ちょっと恐い。)


「あなた、名前は?」

「へっ!?えっあ、アオイ……です」

「アオイちゃんね。可愛い。名前まで可愛い」

「あ、ありがとうございます……?」


 目を白黒させていると、買い出しをしていた男の人が笑いながら教えてくれる。


「ごめんね。アヤメは可愛い物に目がないんだよ」

「そっそうなのですか」

「あー可愛い。こんなに可愛い子がいるなら最初からこっちについて来てたのに」


 アヤメさんというらしい女冒険者の方は、私の正面のイスに座った。一瞬の出来事だった。


「なんだ。アヤメも来たの?」


 そう言いながら、もう1人カウンターに近づいてくる人がいた。例のイケメン(笑)さんだ。


「なによ。来ちゃ悪い?悪いって言われても帰らないけどね」

「そんな風にガン見されたらその子が困るだろ」


 同意を求められ、正直言って苦手なこの人にどう対応しようかと目を泳がせると、私より先にアヤメさんが反応した。


「あら、私よりコーラルの方が困らせてるじゃない。というかコーラルが話しかけた時点でちょっと嫌そうじゃなかった?……ハッまさかコーラル、この間エキナセアに来た時に何かしたんじゃないでしょうね!」


 しました。子供扱い。


「いやしてないから!してないって!アヤメ落ち着いて!……いや、ジェードも笑ってないで助けて?!」


 子供扱いはされたが、さすがにこれは止めないといけなそうだな。


「アヤメさん、アヤメさん。なんにもされてないですから。ちょっと子供扱いされただけですから」

「あらそう?ならいいわ。……ふふふ。名前呼ばれた」


 このタイミングで、リーダーさんとヒエンさんは話し合い(?)が終わったらしい。

 メンバーさんに声をかけて、帰っていった。


 ……それが、3日前の話。

 今、街の外は、なにやら大騒ぎになっていた。

 悲鳴も聞こえてくる。


「ヒエンさんヒエンさん。この騒ぎはなに?」

「……なにかしらね」


 ヒエンさんでも分からないらしい。


「とにかく、一度確かめた方がいいわね」

「りょ、了解です」


 ヒエンさんが店から出たのでついて行く。

 街の人々は、なにかから逃げるように一方向に向かって走っていた。

 そんな中から声が聞こえてくる。


「ドラゴンだ!ドラゴンが来るぞ〜!」


 ……えー。いきなり過ぎね?

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