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動きかけた不条理

「・・・」


ガイ・ドラグーンは無言のまま口元の血を拭うと思考を巡らせる。


登場から有無を言わぬ一撃を受けた。

理由はわからないが、きっとまた何かあらぬ方向に勘違いをしたのだろう。

超常の力を持つ人種の思考回路はブッ飛んでいることが多い。

今回もそういうことなのだろう。

だからって俺が殴られることには全く納得がいかない。


ゾワリ


だが、そんな文句を言える状況ではない。

コーフィが気を開放した。

しかもこの圧迫感からして全力開放だと思われる。


害意や敵意、殺意といったものを感じないからコーフィの全力の氣にも何とか耐えられる。

氣の量だけで、これほどの圧迫感を与えるとはさすがの存在感だ。

動くことどころか、呼吸することさえも厳しい。

運悪くとはいえ、殴り飛ばされたおかげで距離を取れた俺はともかく、距離を取ることさえできなかった仲間たちは・・・

見るも無残な姿であった。


声も出せず、逃げることも抗うことも許されず、ただただ目の前の圧倒的な存在に思考を放り出すか、ただただ恐怖するか、人生を放り出すかしか選択肢を与えられなかった。

周囲にいる麒麟たちも完全に動きを止めて状況を見守っている。

コーフィはただ全力で氣を開放した状態で止まっている。


先程、自分に向けた容赦ない一撃を他の人間に振り回そうとはしてない。

もし、あの一撃を俺以外にふるまえば確実に死ぬだろうことを理解しているからだ。

おまけに、殴ってからあいつは氣を開放している。

今の状態で放つ一撃は先ほどの一撃とは比べ物にならない。


正直言って現状、コーフィが動いた衝撃波だけで俺のパーティは吹き飛ぶ。

そのことに、おそらくコーフィは気づいたのだろう。

だが、全力開放した手前。どうすればいいのかわからない。

そんな感じなのかもしれない。


相変わらず、考えるよりも体が動いてるな・・・。


コーフィのいつも通りの平常運転と無用な殺しをしない優しい精神に感謝しつつも、この状況でどう動けばいいのかわからない。

否、動けない。

会話をすれば矛を収めさせる自信はある。

だが、この状況で会話を切り出すのは非常に難しい。

なにせ、コーフィの全力開放の氣に全身が委縮してしまっている。

正直言って気を抜けばいつ失禁してもおかしくない。


冒険者最強の漢がこのありさまだ。ガイの仲間や《獅子皇帝》の連中は動けない。

麒麟達も自分達の予測をはるかに上回る力を前にして茫然自失。

コーフィも氣を開放したのはいいが、その力を向けるほどの強者はいなかった。


そんな膠着状態の中で平然と歩みを進めて、均衡を破壊したのは≪雑魚狩り≫だった。


「やぁ、師匠。喫茶店出したんだって? 遊びに来たよ。」


そう言って≪雑魚狩り≫は平然と笑った。

いつの間にか、≪雑魚狩り≫の手には以前にコーフィが配っていた喫茶店のチラシがある。


「コーフィさん。お久しぶりです。」


その横からいつも≪雑魚狩り≫の隣にいる執事服の女がコーフィに話しかけた。

この氣の中で平然と動けるということはこの女も《ゴコウテイ》と同格なのだろうか?


「え? 2人ともうちの店に来てくれたの? なんだ~。それならそうと早くいってよ! てっきり営業妨害かと思って攻撃しちゃったよ♪」


こっちの話も聞かずに臨戦体制に入っておきながらコーフィは意気揚々とそう言うと氣の開放をやめた。

なんて身勝手な奴だ・・・

と思わなくもないが、ここは我慢だ。

余計な波風を立てると命が危ない。


「その2人だけじゃね~よ! ここにいる大半の奴はお前の客だ! いきなり殴りやがって!」


「ごめんよ~。ガイ。今度から気を付けるよ! みんなもいらっしゃい!」


俺が言葉だけの怒りで抗議の声を上げるとコーフィは普通に過ってきた。

それを見て皆、安堵の行きを漏らす。

よかった。

これで麒麟の群れは何とかなりそうだ。


「さ! そうと分かれば早速、行こうか! みんなついておいで!!」


コーフィはそう言って喜々とした表情で先頭を歩きだした。

その後に付き従う俺達・・・



と、麒麟達。

ちょっと待て! あいつらも客なのか?!

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