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完全包囲だと?!

ジャック王ランタンとフォレストビッグフットの2体を始末した俺たちは治療班に《獅子皇帝》の連中の治療をさせながら移動を開始する。

この場に残っていれば、死臭の臭いに誘われて魔獣がやってきてしまう。

俺は最低限の収穫物を手にすると立ち上がった。


「君が派手にやったせいで死臭の拡散が早い。もう少しスマートに仕留められなかったのかい?」


「ごちゃごちゃうるせーな! 勝ったんだからいいだろう?!」


俺がフォレストビッグフットを粉々にしたことを≪雑魚狩り≫の奴が口うるさく指摘してきやがった。

こっちは不意を突いての最大攻撃で仕留める以外に手段がなかったんだよ。

下手に手加減して生き残られると厄介な相手だった。


ただ、そんな俺の理屈もコーフィ=チープに追随する超越者には理解できないらしい。

その証拠に、≪雑魚狩り≫が仕留めたジャック王ランタンの死体は急所を一突きで絶命させているので、死臭の臭いはまだほとんど拡散していない。

というか、俺には座して眠っているようにしか見えない。


呼吸音などがしないことから死亡しているのは確実だが、どうやったらこんなに綺麗な死体を作れるのか俺にはわからない。

これが急所を一撃で貫けば死ぬ類の魔獣ならばわからなくはないが、植物型の魔物であるジャック王ランタンには所謂、心臓と呼ばれる部位が存在しない。

動物ではなく植物に近い存在ゆえだろう。


(そんなのどうやって一撃で仕留めたんだ? 脳みそだってあるのかどうか怪しい連中だぞ。)


「どんな魔物でも生きている以上は魔力と気力を体内で動かしているものだよ。そして、それを効率的に動かすには核となる部分が必ずある。生物が血液を効率的に動かすために心臓を持つようにね。君だって気を動かすときには丹田に精神を集中するだろう?」


俺の心を読んだのか。隣からまるで解説するかのように≪雑魚狩り≫が言葉を紡ぐ。

こいつ。本当にむかつくな。


「別に聞いてないけど?」


「ああ、うん? 別に君に解説したわけじゃないよ?」


俺が不機嫌全開で文句を言うと、≪雑魚狩り≫はそう言って俺とは反対側の隣にルビーに解説を行っていた。

ルビーは明らかに「え?!私ですか?!」とでも言いそうな顔をしつつも≪雑魚狩り≫の説明を苦笑しながら聞いていた。

その後ろでは俺の仲間たちが「へ~」と馬鹿顔を晒して話を聞いている。


(でも、そうか。確かに気は丹田。魔力は魔力核があるとされる肺を意識して魔力を動かす。どんな魔獣や魔物もそれは同じなんだから心臓がなくても急所は存在する。魔力と気はあらゆる生物にとって生命力だ。この二つを失うことは体内から水と空気を失うことに等しい。)


その後、俺はブツブツと考えながら隣から聞こえてくる≪雑魚狩り≫の講習を聞いていた。

さすがは彼の《ゴコウテイ》の一角だ。

経験に基づく知識は半端じゃない。

というか、実際にさっきやったことを説明しているのでその理論は完璧だ。


最も、技術的にかなり難易度が高いから俺達には出来そうもない。

俺なら何度か試せばコツを掴めそうだが、あいつらにはまだ早いだろうな。


あいつらはその後も熱心にいろいろと聞いて勉強しているようだ。

よく見れば先ほど助けられた《獅子皇帝》の連中も耳を傾けている。

先ほど、助けられた時に見た圧倒的な実力を前にして≪雑魚狩り≫を格上と認めたのだろう。

遅いっつうの!

というか、お前らがこれから戦いに行く相手はそいつよりも格上だからな?!

わかってんのか!?


そんなことを思いつつ、歩いていると急に隣が静かになった。


「・・・まずい。囲まれてる。」


「は?!」


急に押し黙った≪雑魚狩り≫ の奴がつぶやいた言葉に俺は思わず声を張り上げた。

「周囲の警戒と間引きはお前の仕事だろ?!何やってんだよ!」と叫びたいが今はそんなことはどうでもいい。

問題は相手の数と包囲網がどの程度できているかだ。

できれば何の魔獣に囲まれているかも知りたいがそこまではさすがにわからないだろう。


「包囲されているって何を根拠にですか? 私の索敵魔法には何もかかっていませんよ?」


俺のパーティのボルフや《獅子皇帝》のところのデビットとかいう≪風魔≫使いがそう言った。

おそらく、あいつも探索の魔法で周囲を警戒していたのだろう。

だが、2人の索敵範囲は≪雑魚狩り≫より狭いのだろう。

ボルフの索敵範囲はせいぜい500mないぐらいだ。

デビットってやつの索敵範囲がどれくらいかは知らんが、魔の森初心者のこいつの索敵範囲がボルフを上回っているとは思えん。

≪風魔≫の力を借りても6~700mと見ていいだろう。


問題はあの《ゴコウテイ》たるこいつの索敵範囲だ。

俺は数キロ先もわかると言われても納得する自信があるが、実際にはどの程度見えてるんだ?

こればかりは本人にしかわからないので聞いてみるしかないのだが、そんな暇もないらしい。


「ヤバい。ヤバい。なんでこんなところに麒麟がいるんだ。おまけに数が尋常じゃない上に、こっちを完全に包囲しながら向かってくる。」


「「「「「「・・・!」」」」」」


≪雑魚狩り≫は頭を抱えてブツブツと言葉を口から紡いでいた。

想定外の事態に考えていることが口から出てしまっているのだろう。

だが、それよりも俺たちが驚いたのは奴が口にした『麒麟』の一言だ。

まさかまたあの龍種に会うことになるとは、それもそいつらが完全に俺たちを包囲しているだと?!

冗談じゃない。

あんなの一体相手にしても勝ち目がないんだぞ。

それが群れを成してきたとなれば逃走も難しい。


「ええい! こうなったら正面突破だ! 全員俺についてこい!」


俺は想定外の事態に混乱している≪雑魚狩り≫を放っておいて全員に指示を出す。

一番手薄なところを狙ったとことで敵は俺たちを少なくとも一キロ以上離れた範囲から包囲している。

移動している間にそこに敵が密集してくるのは目に見えている。

ならば、どこに突撃しても結果は変わらない。


玉砕覚悟でコーフィのいる方角を目指す。

戦闘が始まったら最大限に暴れまわって時間を稼ぐ。

そうすれば騒動を聞きつけてコーフィが来る可能性がある。

あいつが来れば、キリンが何体いようが関係ない。


『ゴコウテイ』最弱の≪雑魚狩り≫では麒麟の群れの相手は厳しいだろうが、コーフィ=チープにとって麒麟の群れはただの馬の群れに等しい。

現にあいつは想定外の事態に混乱している。

突如走り出した俺に追従するように俺の仲間たちが後に続く。

彼らは日ごろから俺の指示に素直に従うので俺の行動に追従することに疑いを持たない。


その後から頭を抱えた≪雑魚狩り≫とその一団が、そのさらに後ろから《獅子皇帝》の連中が事態を呑み込めていない様子だが、ついて来ているといった感じだ。


俺は走りながら≪シグムント≫を起動する。

こうなったら戦闘は避けられない。

相手が群れだというのなら、≪シグムント≫の全力開放で数体をひとまとめで攻撃できるかもしれない。

前回は一対一の勝負だったから避けられたが、相手が複数でこちらを包囲しているのならばおそらくは密集体制でいる可能性が高い。

そこに効率的に最大威力の一撃を噛ませば・・・


(勝機はある!)


俺は全力で魔力を開放し、今一度≪シグムント≫をたたき起こす。

すると、即座に≪シグムント≫は変形し本来の姿になった。

それを後方から確認していたルビーが即座に俺に治癒の呪文をかける。

ありがたい。

さすがに本日二発目の全力開放だ。

威力の大きい武器だけに反動も半端じゃない。

おまけに今回は相手が複数で、相手は麒麟だ。

ハッキリ言って勝機は薄い。


(それでも、俺は生き残る!)


「ドラグーンインパクト!」


俺は強い想いをを乗せて接敵した麒麟に向けて全力の一撃を振り下ろした。

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